【論稿】商標権の権利濫用の抗弁-家元制度下の組織及びのれん分けの内紛について-(石井美緒、知的財産法政策学研究 Vol.67(202
1. 家元は、一人だけ。統率権限、代表権を有する法律上の地位
⇒後継者を指名せずに逝去した場合は、間接事実だけで後継者は認定されていない。真磨琴会事件でも、何れの養子も後継者と認められなかった。
(その場合、一方が商標権を取得しても、他方に対する権利行使は権利濫用になる。)
2. のれん分け
⇒(家元制度の後継者指名と異なり、)使用許諾は黙示でも認められる。のれん分け先の一人が商標権を取得しても、他の(正当な)のれん分け先に対する権利行使は権利濫用になることが多い。
(ただし、守半事件控訴審判決では、被告が『守半総本舗』という標章を使い始めたところ、長年使ってきた「守半」と社会通念上同一でないとして、『守半総本舗』については権利濫用の抗弁を認めなかった。その意味で、商標権を先に取ってしまうことに一定の意義はある。)
3. 長期間権利行使しなくても、原則として失効しないが、以下の2類型では権利濫用となりうる。
①被告標章が著名になった
②原告・被告間が特別な関係
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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