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【特許★★】特許権侵害訴訟の控訴審において、控訴理由書で新たな無効理由を主張したが、原審で主張できたことを理由として、時機後れと判断された事例 -知財高判令和6年(ネ)第10010号【女性用衣料】事件<中平裁判長>- (第一審・東京地判令和3年(ワ)第18262号<國分裁判長>)

2026年01月19日

 

◆判決本文

 

【本判決の要旨、若干の考察】

1.特許請求の範囲(請求項1)

A 少なくとも女性のバスト部を覆う女性用衣料において、
B 前記少なくとも女性のバスト部を覆うカップ部材と、
C 前記カップ部材と分離した状態で当該カップ部材の表面側に配置され、
前記バスト部の左右の各脇部からバストの側部を覆った状態でバスト下部の中央部にかけて設けられる左右の前身頃部材と、
D 前記左右の前身頃部材をバスト下部の中央部近傍で互いに連結するとともに、当該左右の前身頃部材の連結幅を調節可能に設けられた複数の連結部材とを備えた
E ことを特徴とする女性用衣料。

 

2.充足論(一審判決/東京地判令和3年(ワ)第18262号【女性用衣料】<國分裁判長>)

広辞苑第6版には、「ともに」という用語の意味は、①「ひとつになって。いっしょに。相連れて。同じく。」と、②「同時に。」の二つが記載されている。
被告(被疑侵害者)は、広辞苑に2つの意味が記載されているときは先に記載されている意味がより一般的であると主張したが、認められなかった。

東京地裁は、「広辞苑第6版において、広く一般に用いられる意味から記載するとの編纂方針が採用されていることを認めるに足りる証拠はない。また、…明細書において『連結部材』として具体的例示されているものは…被告…解釈とは相容れない…。」本件特許発明の「ともに」は、②「同時に。」という意味であるとクレーム文言解釈し、充足を認めた。(特許権者勝訴)

 

(判旨抜粋/一審判決)

被告は、構成要件Dの「ともに」について、辞書を編纂するに際し、各語句の意味は、広く一般に用いられるものから記載されるから、広辞苑第6版において最初に記載されている「ひとつになって。いっしょに。相連れて。同じく。」の意味であ…るべきと主張する。しかし、語句の意味をどのようなものから優先的に記述するかは、各辞書の編纂方針によると考えられるところ、…広辞苑第6版において、広く一般に用いられる意味から記載するとの編纂方針が採用されていることを認めるに足りる証拠はない。また、…本件明細書において「連結部材」として具体的例示されているものは、いずれも連結部材同士の連結を解除しなければ、その連結幅を調節できないものであるから、被告が主張する「ともに」との解釈とは相容れない…。

 

3.無効論(時機後れとされたが、一応検討された。)

控訴人が原審で主張していた無効理由

  • 乙8文献を主引用例とする新規性欠如・進歩性欠如
  • 乙9、乙10文献を副引用例とする進歩性欠如

控訴人が控訴審で初めて主張した無効理由

  • 乙31~33文献(米国特許)に基づく新規性欠如・進歩性欠如

 

知財高裁が「時機に後れた」と判断した理由等

1.原審で主張すべき時期があった

  •    令和4年8月31日の手続期日で侵害論について心証開示がされた
  •    この時点までに新たな無効理由を主張することが可能だった

2.原審では一切提出・主張されなかった

  •   「控訴人からは、最後まで乙31ないし33の提出すらなされず」
  •   「またそれらに基づく無効論の主張等も一切なされていなかった」

3.主張が困難だった事情がない

  •   「乙31ないし33の文献に基づく無効の抗弁を主張することが困難であったことをうかがわせる事情は存在しない」

4.控訴審での提出は訴訟遅延を招く

  •   審級が変わったことや代理人が変更されたことは理由にならない
  • 5.結論

原審で主張できたのに、しなかったことが「時機に後れた」とされた。

6.「訴訟の完結を遅延させることになるとまではいえない」

無効理由についての反論がされており、再反論なく口頭弁論終結に至ったことから、訴訟の完結を遅延させることになるとまではいえないとして、無効論について判断した。

 

(判旨抜粋/控訴審判決(本判決))

そこで、まず時機に後れた攻撃防御方法に当たるかについて検討すると、控訴人による当審における新たな無効理由の主張は、令和6年2月6日付け控訴理由書においてなされたものであるところ、特許権侵害訴訟において、無効の抗弁は、特許権の侵害に係る紛争をできる限り特許権侵害訴訟の手続内で迅速に解決するため、特許無効審判手続による無効審決の確定を待つことなく主張することができるものとされており、特許無効審判とは別の手続である民事訴訟手続内でのものであるから、審理の経過に鑑みて、審理を不当に遅延させるものであるときは、時機に後れた攻撃防御方法に当たるものとして却下されるべきである。

  これを基に原審における審理経過についてみると、一審被告である控訴人は、原審において、令和3年10月27日提出の同月22日付け答弁書において、被控訴人製品の本件発明の構成要件該当性を否認するとともに、乙8文献を主引用例とし、これと周知技術との組み合わせないし乙9文献を副引用例とする進歩性欠如の無効理由を主張した。これに対する一審原告である被控訴人の反論等を受け、令和4年3月18日付け準備書面⑶において、乙8文献による新規性欠如の無効理由を追加し、これに対する被控訴人の更なる反論を受けて、令和4年5月27日付け準備書面⑷において、更に乙8文献を主引用例とし、乙10文献を副引用例とする進歩性欠如の無効理由を追加した。これについての被控訴人の反論に対しては、更に令和4年8月29日付け準備書面⑸において反論をした。

  そして、侵害論について当事者が主張立証を尽くしたことを前提とし、令和4年8月31日に行われたウェブ会議の方法による書面準備手続において、裁判所から損害論に審理を進める旨の心証開示を受けて(令和4年8月31日の書面準備手続の経過表には、協議の結果欄に、「当事者双方 侵害論についての主張立証は尽くした。」「裁判長 今後、損害論についての審理を進める。」との記載がある。)、損害論の審理が進められ、令和5年9月22日に行われた口頭弁論期日において、控訴人は他に主張立証することはない旨を陳述し、原審口頭弁論が終結されて原判決が言い渡されたものである。

  こうした原審での審理経過に鑑みると、当審における新たな無効理由の主張は、時機に後れて提出された攻撃防御方法に当たり、その提出が後れたことについて控訴人には重過失があるから、本来であれば却下は免れないが、被控訴人から、予備的にではあるものの、当審において提出された無効理由についての反論がされており、これに対する控訴人の再反論の主張はなく当審の口頭弁論終結に至っていることから、この限度では訴訟の完結を遅延させることになるとまではいえないため、以下、判断を加えることとする。・・・

 

4.若干の考察

原審の主張・立証の経緯は、通常の特許権侵害訴訟における進行であったから、本判決の論理で「控訴理由書においてなされた」新たな無効理由が時機後れと判断されるならば、実質的に、控訴審から新たな主張を成しえないことになりかねない。

一太郎事件(後記)では、一審が短かったこと、新たな主引例が外国語文献であったことを理由として、控訴審から新たな無効理由を主張することが許された。しかし、本事案では、英語文献である乙31発明を主引例とする新たな無効理由を主張することが本来的に時機後れとされた。

本判決のように「最後まで乙31ないし33の提出すらなされず」と判示されてしまうならば、一審の心証開示後でも提出し、主張しておけばよいかというと、別の知財高判では、一審で時機後れ却下されたことを理由に時機後れとしているから、逃れる術がない。

時機後れと別に、本判決のように「訴訟の完結を遅延させることになるとまではいえない」と控訴審で判断されるためには、控訴理由書で主張を尽くした後、被控訴人からの反論に対し再反論しないという方針がありうる。本件ではそのように進行したため、「訴訟の完結を遅延させることになるとまではいえない」として無効論が判断された。

そうであるならば、被控訴人としては、控訴理由書で新たな無効理由が主張された場合、それに対し内容を反論せず、時機後れのみを主張するという方針がありうる。もっとも、その時点で控訴審が弁論終結され、無効の抗弁が成立して特許権者逆転敗訴と判断されることは、通常は考え難いとしても、反論しないという方針はリスクを伴うため、念のため反論しておくという方針を採ることが多いであろう。

控訴審で開始した主張と時機後れについては、過去の知財高判では控訴理由書において主張すれば時機後れとされず、控訴理由書より後の準備書面で主張すると時機後れとされた判決が多かったが、本判決は非常に厳しい。他の各知財高判では、控訴審から新たな無効理由を主張しても時機後れとされなかった事案もあることを念頭に置きつつ、総合的に戦略を練るべきであろう。

 例えば、平成28年(ネ)第10100号【魚釣用電動リール】<高部裁判長>は、原審で特許無効の心証開示後に訂正の再抗弁を主張して時機後れ却下されていたが、控訴理由書において、原審で却下された訂正の再抗弁を主張したところ、時機後れ却下されなかった。

同判決は、「原審及び当審における審理の経過に照らすと,より早期に訂正の対抗主張を行うことが望ましかったということはできるものの,控訴人が原判決や審決の予告がされたのを受けて,控訴理由書において訂正の対抗主張を詳細に記載し,当審において速やかに上記主張を提出していることに照らすと,控訴人による訂正の対抗主張の提出が,時機に後れたものであるとまでいうことはできない。」と判示しており、実務的感覚に近い。一審判決が意外な判断であり、それを踏まえた主張を控訴審においてなしうるということは、控訴審の初動である控訴理由書で主張する限り、許されるべきではないだろうか。

 

 

【関連裁判例(控訴審で始めた新しい主張が時機後れ却下された事例)】

1.控訴審の初動(控訴理由書)で主張したが、時機後れ却下された裁判例

知財高判令和6年(ネ)第10010号【女性用衣料】<中平裁判長>(本判決)

*控訴理由書で主張した新たな無効の抗弁が時機後れとされた。(これでは、控訴審から何も新たに主張できない…)

「控訴人による当審における新たな無効理由の主張は…控訴理由書においてなされた…。

…裁判所から損害論に審理を進める旨の心証開示を受けて…損害論の審理が進められ、…口頭弁論期日において、控訴人は他に主張立証することはない旨を陳述し、原審口頭弁論が終結されて原判決が言い渡されたものである。…こうした原審での審理経過に鑑みると、当審における新たな無効理由の主張は、時機に後れて提出された攻撃防御方法に当たり、その提出が後れたことについて控訴人には重過失があるから、本来であれば却下は免れないが、被控訴人から、予備的にではあるものの、当審において提出された無効理由についての反論がされており、これに対する控訴人の再反論の主張はなく当審の口頭弁論終結に至っていることから、この限度では訴訟の完結を遅延させることになるとまではいえないため、以下、判断を加えることとする。…進歩性を欠く旨の主張には理由がない。」

 

 知財高判平成29年(ネ)第10055号【連続貝係止具】<森裁判長>

*時機後れであるが、次回期日が指定され訴訟の完結を遅延させない。⇒却下せず。⇒新規性×

「控訴人らは,無効理由3(新規性欠如)に係る抗弁を,遅くとも平成29年1月26日までに提出することは可能であったといえるから,これは「時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法」(民訴法157条1項)に該当することが認められる。

しかし,控訴人らは,本件の控訴審の第1回口頭弁論期日…において,控訴人シンワは,本件特許が出願されたとみなされる日より前に,本件各発明の構成要件を充足する製品を販売したので,本件特許は新規性を欠く旨の主張をしたものであって,上記期日において,次回期日が指定され,更なる主張,立証が予定されたことからすると,この時点における上記主張により,訴訟の完結を遅延させることとなると認めるに足りる事情があったとは認められない。」(※平成29年1月26日は、原審の口頭弁論終結日)

 

 知財高判令和5年(ネ)第10071号【チップ型ヒューズ】<宮坂裁判長>

*原審で時機後れ却下された別の請求項の主張が、控訴審でも時機後れ却下された。

「本件請求原因の追加に至るまでの原審における手続等の経緯として、別紙「本件請求原因の追加に至る経緯」記載の事実が認められる。すなわち、被控訴人は、答弁書(令和4年2月28日付け)の段階で、乙1公報及び乙3公報等の公知文献を具体的に示して、均等論の第4要件の充足を争う詳細な主張を提出した。その後、控訴人と被控訴人は、同年11月までに、当該争点に関する議論を含む主張書面を2往復させ主張立証を尽くしてきた。この間の書面準備手続調書には、被控訴人の 「均等論の第4要件を中心に反論書面を提出する」との進行意見が記載されるなど、均等論の第4要件の充足性は、少なくとも本件の中心的な争点の一つと認識されていた。そうして、侵害論に関する主張立証が一応の区切りとなった同月28日のウェブ会議による協議(書面による弁論準備手続に係るもの。以下同じ。)において、裁判所から双方当事者に被控訴人製品は本件発明1の技術的範囲に属さないとの心証開示があり、双方は和解を検討することとなった。その後間もなく和解交渉は不調に終わったところ、令和5年1月27日の協議において、控訴人は、消弧作用についての再反論(注・均等論の第2要件関係)及びこれまでの主張の補充等を記載した準備書面を提出すると述べた。ところが、控訴人は、同年2月27日付け準備書面をもって、本件請求原因の追加の主張をするに至った。これに対し、被控訴人は、同年4月13日付け準備書面をもって、時機に後れた攻撃方法としての却下又は著しく訴訟手続を遅延させる訴えの変更としての不許決定を求める申立てをした。

…以上に基づいて、まず、本件請求原因の追加が「時機に後れた」ものといえるかどうかを検討するに、本件において、控訴人が本件請求原因の追加を求めた理由は、請求項1に係る本件発明1の技術的範囲の属否を問題とする限り、被控訴人が提出した公知文献…との関係で均等論の第4要件(公知技術等の非該当)は満たさないと判断される可能性が高いことを踏まえ、本件付加構成を備える請求項3に係る本件発明2を議論の俎上に載せることで、均等論の第4要件をクリアしようとしたものと理解される。しかし、…均等論の第4要件を争う被控訴人の主張は、既に答弁書の段階で詳細かつ具体的に提出されており、これに対する対抗手段として、本件請求原因の追加を検討することは可能であったものである。その後、約9か月にわたり双方が主張書面を2往復させてこの点の主張立証を尽くしていたところ、その後に裁判所からの心証開示を受けた後に、しかも、控訴人自ら、補充的な書面提出のみを予定する旨の進行意見を述べていたにもかかわらず、突然、本件請求原因の追加を行ったものであって、これが時機に後れた攻撃方法の提出に当たることは明らかである。」

 

知財高判平成29年(ネ)第10072号【人脈関係登録システム】<鶴岡裁判長>

*控訴審の初回期日で行った均等論の主張が、時機後れとして却下された。

Cf.平成29年(ネ)10029、平成27年(ネ)10076は、却下しなかった。

「当裁判所は,当審の第1回口頭弁論期日において,…均等侵害の主張を時機に後れた攻撃防御方法に当たるものとして却下した。その理由は次のとおりである。…に関するクレーム解釈や被控訴人サーバの内部処理の態様如何によって構成要件充足,非充足の結論が変わり得ることは,控訴人としても当初から当然予想できたというべきであり,そうである以上,控訴人は,原審の争点整理段階で予備的にでも均等侵害の主張をするかどうか検討し,必要に応じてその主張を行うことは十分可能であったといえる(特許権侵害訴訟において計画審理が実施されている実情を踏まえれば,そのように考えるのが相当であるし,少なくとも控訴人についてその主張の妨げとなるような客観的事情があったとは認められない。)。ところが,控訴人は,原審の争点整理段階でその主張をせず,…「侵害論については他に主張・立証なし」と陳述し,そのまま争点整理手続を終了させたものである。しかるところ,控訴人が,上記のとおり当審に至り均等侵害の主張を追加することは,たとえ第1回口頭弁論期日前であっても,時機に後れていることは明らかであるし,そのことに関し控訴人に故意又は重大な過失が認められる…。」

 

Cf.知財高判平成27年(ネ)10076号【円テーブル】<高部裁判長>

*控訴審の初回期日で行った均等論の主張が、時機後れとして却下されなかった(第1回で控訴棄却=特許権者負けだから)

「控訴人の前記主張は,控訴理由を記載した…準備書面に記載されており,被控訴人も認否反論を行い,既に提出済みの証拠に基づいて判断可能なものであった。そして,当裁判所は…当審第1回口頭弁論期日において口頭弁論を終結した。以上によれば,控訴人の前記主張が,『訴訟の完結を遅延させる』(民訴法157条1項)ものとまでは認められず,したがって,時機に後れたものとして却下すべきものとはいえない。」

 

Cf.知財高判平成26年(ネ)第10111号【粉粒体の混合及び微粉除去方法】<高部裁判長>

*控訴審の初回期日で行った均等論の主張が時機後れとされたが、判断した。

「第1審における争点は,専ら構成要件2E及び1Bの充足性であったこと,控訴状には控訴理由の記載がなく,控訴理由書に…均等侵害に係る主張を記載せず,主張の予告もなかったこと,控訴人の第1準備書面が提出されたのは…当審第1回口頭弁論期日のわずか5日前であったことなど,本件審理の経過に照らせば,控訴人の均等侵害に係る主張は,時機に後れたものといわざるを得ない。しかしながら,被控訴人も上記主張に対する認否,反論をしたことに鑑み,均等侵害の成否について以下において判断する。」

 

Cf.知財高判令和4年(ネ)第10078号【片手支持可能な表示装置】<菅野裁判長>

 *原審で訂正の再抗弁を3回主張した⇒控訴理由書で4回目の訂正の再抗弁を主張したが、審理経過に鑑みると、本来であれば時機後れ却下であるとされた。ただ、反論されていることから、判断した。

「原審における審理経過についてみると、控訴人は、原審において、第1回弁論準備手続期日(令和元年11月18日)における本件特許が新規性及び進歩性を欠く旨の無効の抗弁の主張(被告第1準備書面)を受けて、第3回弁論準備手続期日(令和2年7月27日)までに、第2次訂正に係る訂正の再抗弁に係る原告第2準備書面を提出したが、本件無効審判の手続における訂正請求に合わせて、第3次訂正に係る訂正の再抗弁を記載した令和3年3月3日付け原告第5準備書面及び同年5月27日 付け原告第6準備書面を提出した(これらの準備書面は、第4回弁論準備手続期日(令和3年12月16日)において、訂正書面を含めて陳述された。)。原判決は、第2次訂正及び第3次訂正に係る訂正の再抗弁はいずれも訂正要件を充足せず、本件特許は特許無効審判により無効とすべきものと判断したところ、控訴人は、控訴理由書で、第4次訂正に係る訂正の再抗弁の主張を追加したものである。こうした原審での審理経過に鑑みると、第4次訂正は、時機に後れて提出された攻撃防御方法に当たり、その提出が後れたことについて控訴人には重過失があるから、本来であれば却下は免れないが、被控訴人から第4次訂正については訂正要件を充足しないこと等を含め、第4次訂正に係る訂正の再抗弁についての反論がされており、この限度では訴訟の完結を遅延させることになるとまではいえないため、以下、判断を加えることとする。」

 

2.控訴審で時機後れとされなかった裁判例。(無効審決が出たこと等を理由とした。⇒審決予告まで行っていれば同様の効果が期待できる。)

 知財高判平成30年(ネ)第10033号【スプレー缶製品】<大鷹裁判長>

*原審で却下された無効理由と同じだが控訴理由書で主張。⇒却下せず

「…原審の受命裁判官は,被控訴人の上記申立てを容れて,控訴人の上記無効の抗弁に係る主張及び証拠を却下した。特許庁は,…サポート要件違反…及び本件無効の抗弁に係る無効理由が存在するとして,上記特許を無効とする別件審決をした。…

控訴人の当審における本件無効の抗弁の主張は,原審において侵害論の審理を終了し,損害論の審理に入った段階で提出されたため,時機に後れた攻撃防御方法として却下された主張と同旨のものであるが,控訴人は,原審口頭弁論終結前に本件無効の抗弁に係る無効理由の存在等を認めて本件特許を無効とする旨の別件審決がされたのを受けて,当審において再度提出したものであること,控訴人は,控訴理由書に本件無効の抗弁を記載し,当審の審理の当初から本件無効の抗弁を主張していたことが認められるから,当審における控訴人による本件無効の抗弁の主張の提出が時機に後れたものということはできない。また,当審の審理の経過に照らすと,控訴人による本件無効の抗弁の主張の提出により,訴訟の完結を遅延させることとなるとは認められない。したがって,…時機に後れた攻撃防御方法として却下することはしない。」

 

 知財高判令和1年(ネ)第10066号【情報管理プログラム】<森裁判長>

*原審で却下された無効理由と同じ。⇒却下せず

原審において、乙14発明に基づく新規性欠如の無効の抗弁が時機に後れたとして却下されていた。

⇒一審被告は、控訴審においては、乙14発明を主引例とする新規性欠如の無効の抗弁について、時機に後れたとの主張せず。

⇒新規性欠如で、特許権者逆転負け。(★3か月前に同じ知財高裁2部で審決取消訴訟の判決<令和1年(行ケ)10109>があり、新規性欠如の無効審決が維持されていた。)

 

3.その他

知財高判平成28年(ネ)第10100号【魚釣用電動リール】<高部裁判長>

*原審で特許無効の心証開示後に訂正の再抗弁を主張して時機後れ却下されていた。

⇒控訴理由書において、原審で却下された訂正の再抗弁を主張したところ、時機後れ却下されなかった。

「控訴人は,原審において,弁論準備手続が終結されるまでの間,訂正の対抗主張を提出することはなかったが,弁論準備手続終結後に提出された準備書面において初めてこれを主張するに至ったため,原審裁判所により時機に後れたものとして却下された(なお,原審において主張した訂正の内容は,「片手で」との文言の有無の点を除き,当審における訂正の内容と同一である。)。控訴人は,平成28年9月8日に原判決が言い渡されると,同月21日控訴を提起した。他方,同月30日には,本件特許1ないし3に係る各特許無効審判において,審決の予告がされた。そこで,控訴人は,同年11月10日提出に係る控訴理由書において,訂正の対抗主張を記載した。上記の原審及び当審における審理の経過に照らすと,より早期に訂正の対抗主張を行うことが望ましかったということはできるものの,控訴人が原判決や審決の予告がされたのを受けて,控訴理由書において訂正の対抗主張を詳細に記載し,当審において速やかに上記主張を提出していることに照らすと,控訴人による訂正の対抗主張の提出が,時機に後れたものであるとまでいうことはできない。また,本件における訂正の対抗主張の内容に照らすと,訂正の対抗主張の提出により訴訟の完結を遅延させることになるとも認められない。よって,控訴人の訂正の対抗主張を時機に後れたものとして却下することはしない。」

 

知財高判(大合議)平成17年(ネ)10040【一太郎事件】

「攻撃防御方法の提出が時機に後れたものとして民事訴訟法157条により却下すべきであるか否かは,当該訴訟の具体的な進行状況に応じて,その提出時期よりも早く提出すべきことを期待できる客観的な事情があったか否かにより判断すべきものであるところ,控訴人が主張する前記事情は,いずれも,被控訴人の請求に係る本件訴訟の具体的な進行状況とは関係のない事情をいうものにすぎない。

原審においては,第1回口頭弁論期日が開かれてから第3回口頭弁論期日において口頭弁論が終結されるまで2か月余り,訴えの提起から起算しても4か月足らずの期間である。このように,原審の審理は極めて短期間に迅速に行われたものであって,控訴人の当審における新たな構成要件充足性及び本件特許の無効理由についての主張・立証は,若干の補 充部分を除けば,基本的に,当審の第1回口頭弁論期日において控訴理由書の陳述と共に行われたものであり,当審の審理の当初において提出されたものである。そして,前記の追加主張・立証の内容についてみると,まず,構成要件充足性に関する部分は,原審において既に控訴人が主張していた構成要件充足性(「アイコン」の意義)に関する主張を,若干角度を変えて補充するものにすぎないということができる。また,本件特許の無効理由に関する部分は,新たに追加された文献に基づくものではあるが,これらはいずれも外国において頒布された英語の文献であり,しかも,本件訴えの提起より15年近くも前の本件特許出願時より前に頒布されたものであるから,このような公知文献を調査検索するためにそれなりの時間を要することはやむを得ないことというべきである。 以上の事情を総合考慮すれば,控訴人が当審において新たに提出した構成要件充足性及び本件特許の無効理由についての追加的な主張・立証が時機に後れたものであるとまではいうことができない。」

 

知財高判平成30年(ネ)第10044号【光学情報読取装置】<大鷹裁判長>

*控訴審の第1回期日4日前の訂正の再抗弁が時機後れ却下された

「無効の抗弁に対する訂正の再抗弁の主張は,本来,原審において適時に行うべきものであり,しかも,控訴人は,当審において,遅くとも控訴理由書の提出期限までに訂正の再抗弁の主張をすることができたにもかかわらず,これを行わず,第1回口頭弁論期日の4日前になって初めて,本件訂正の再抗弁の主張を記載した準備書面を提出したのであるから,本件訂正の再抗弁の主張は,控訴人の少なくとも重大な過失により時機に後れて提出された攻撃防御方法であるものというべきである。」

 

知財高判平成30年(ネ)第10031号【下肢用衣料】<高部裁判長>

*控訴審の控訴理由書提出期限を経過した後の無効の抗弁が、時機後れ却下された。

「…1審被告らは,…控訴理由書提出期限…を1か月以上経過した後で…「控訴理由書⑶」を提出した。…無効の抗弁及び公知技術の抗弁の主張の追加については,民訴法157条1項に基づき時機に後れた攻撃防御方法として却下すべきである。…

上記事情に加え,…当審において追加しようとする無効理由は,…少なくとも6項目に及ぶ。控訴審におけるこれほど多数の無効理由による無効の抗弁の追加は,審理を不当に遅延させることを目的として提出されたものといわざるを得ない。したがって,無効の抗弁の追加主張については,特許法104条の3第2項によっても,却下されるべきものである。」

 

知財高判令和3年(ネ)第10084号【印刷された再帰反射シート】<宮坂裁判長>

*控訴審の初回期日で新たな無効の抗弁が時機後れ却下された。

※判決文から、控訴理由書で主張したか不明。

控訴審から開始した進歩性欠如の主張①②が、時機後れ却下された!!

  • 原審で主張した主引例+他の副引例
  • 原審で主張した主引例の解釈(主引用発明の認定)を変更する主張

 

知財高判令和4年(ネ)第10008号【情報提供装置】<大鷹裁判長>

*控訴審において書面による準備手続終結後に訂正の再抗弁主張⇒時機後れ却下

原審で新規性欠如であったが、特許庁無効審判で維持審決だったため、特許権者は控訴審の最初から訂正の再抗弁を主張せず、控訴審の争点整理手続においても、書面による準備手続が終結するまで訂正の再抗弁を主張しないでいたが、書面による準備手続終結後に訂正の再抗弁を主張した。⇒時機後れ却下<維持審決後に原判決という時系列である以上、予備的に、訂正の再抗弁を主張しておけばよかった。>維持審決が維持と判断した決定的な相違点について、被疑侵害者側がそれをカバーするように主引例との対比の主張を変えて、原判決で新規性欠如と判断された状況であった。

 

知財高判令和3年(ネ)第10094号【…作業用手袋】<菅野裁判長>

*原審で特許無効の心証開示後に訂正の再抗弁を主張して時機後れ却下されていた。⇒控訴理由書において、原審で却下された訂正の再抗弁を主張したが、時機後れ却下された。

「控訴人は、控訴理由書で、本件発明について訂正する(訂正の再抗弁)旨主張するが、当裁判所は、これを時機に後れた攻撃防御方法に当たるものとして却下した。その理由は、一件記録によると、当該訂正の再抗弁は、原審裁判所が本件特許は無効であるとの心証開示をした後にされたものであるため、 原審で時機に後れた攻撃防御方法に当たるものとして却下されたものであるところ、適宜の時機に原審で主張することができなかった事情は見当たらないから、当審における上記主張は、明らかに時機に後れたものであって、そのことについて控訴人には少なくとも重過失があり、また、この攻撃防御方法の主張を許せば、本件訴訟の完結が著しく遅れることは明らかであるためである。」

 

知財高判令和2年(ネ)第10044号【流体供給装置及び…プログラム】<鶴岡裁判長>

*無効主張が原審の心証開示後であったが、原審の主張整理に問題があった(自白の成否)

⇒充足論と無効論は切り離して考えることはできない。~却下せず

「「時機に後れた攻撃防御方法」該当性について 無効主張A,B,Dは,原審における侵害論の心証開示後に主張されたものであり,そのため,原審においては時機に後れたものとして取り扱われたわけであるが,既に充足論に関する項で指摘したとおり,構成要件1C1充足性(非侵害論主張④)及び構成要件1A,1C,1F3,1F4充足性(非侵害論主張⑤)に関する原審の主張整理には,本来は,争いがあるものとして扱うべき論点を争いのないものとして扱ったという不備があったといわざるを得ない。そして,無効論に関する主張の要否や主張の時期等は,充足論における主張立証の推移と切り離して考えることができないのであるから,充足論について,本来更に主張立証が尽くされるべきであったと考えられる本件においては,無効主張が原審による心証開示後にされたという一事をもって,時機に後れたものと評価するのは相当ではない。また,上記無効事由に関する当審における無効主張は,控訴後速やかに行われたといえる。以上によると,一審被告による上記無効主張は,原審及び当審の手続を全体的に見た観点からも,また,当審における手続に着目した観点からも,時機に後れたものと評価することはできない。」

 

以 上

 

(控訴人)株式会社FLORe

(被控訴人)株式会社MIC

 

執筆:高石秀樹(弁護士・弁理士)(特許ニュース令和7年12月8日の原稿を追記・修正したものです。)

監修:吉田和彦(弁護士・弁理士)

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。

 

本件に関するお問い合わせ先: h_takaishi@nakapat.gr.jp

 

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