NAKAMURA & PARTNERS
アクセス
  • MESSAGE
  • 事務所紹介
  • 業務内容
  • 弁護士・弁理士
  • 執筆・講演情報
  • 法情報提供
  • 採用情報
  • ご挨拶
  • 事務所紹介
  • 業務内容
  • 弁護士・弁理士
  • 執筆・講演情報
  • 法情報提供
  • 採用情報

法情報提供

  • 全カテゴリ
  • 特許
  • 特許 (Links)
  • 商標
  • 商標 (Links)
  • 意匠
  • 意匠 (Links)
  • 著作権
  • 著作権 (Links)
  • 知財一般
  • 知財一般 (Links)
  • 法律
  • 法律 (Links)
■

【特許★★】国外に所在するサーバから日本のユーザにプログラムを送信する行為が、日本国内の行為と評価された事例。逆転充足で特許権者逆転勝ち。

2023年02月17日

-知財高判平成30年(ネ)第10077号<本多裁判長>ドワンゴv.FC2(先行訴訟)-

(後行訴訟は、東京地判令和元年(ワ)第25152号<國分裁判長>)

 

◆判決本文

 

【本判決の要旨、若干の考察】

1.特許請求の範囲、発明の詳細な説明及び図面(JP4734471/侵害が認められた特許)

(1)請求項1

 ・・・

1-1E 前記第2の表示欄のうち,一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており,他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり,

1-1F 前記コメント表示部は,前記読み出したコメントの少なくとも一部を,前記第2の表示欄のうち,前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する

1-1G ことを特徴とする表示装置。

 

(2)請求項9

 ・・・

1-9E 当該読み出されたコメントの一部を,前記コメントを表示する領域であって一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており他の領域が前記第1の表示欄の外側にある第2の表示欄のうち,前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示するコメント表示手段,

1-9F として機能させるプログラム。

 

(3)発明の詳細な説明及び図面

 段落【0019】  

「・・・表示欄105は、表示欄104よりも大きいサイズに設定されており、オーバーレイ表示されたコメント等が、動画の画面の外側でトリミングするようになっており、コメントそのものが動画に含まれているものではなく、動画に対してユーザによって書き込まれたものであることが把握可能となっている。」


 

段落【0034】  

「・・・コメント付与時間が9秒のコメントである「おいしそう~!」が、画面左側に移動しており、表示欄104の外側であって表示欄105 の内側にトリミングされた状態で「そう~!」の部分だけ表示されている(符号200)。」


(余談:画面は「おいしそう~!」であるが、右欄の文字一覧では「14 F 9 おいしそ~」となっている。)

 

2.充足論

(1)一審判決(東京地判平成28年(ワ)第38565号)⇒非充足

⇒プログラム上、「動画表示可能領域(第1の表示欄)」と「コメント表示可能領域(第2の表示欄)」は同一のサイズである。

『ア 「第1の表示欄」及び「第2の表示欄」の意義について

…本件発明1は,コメントについて動画に含まれているものではなく,ユーザによって書き込まれたものであることを把握することができるようにするとともに,コメントの読みにくさを低減させるために,一部重なり合うものとして設定される,コメント表示領域である「第2の表示欄」及び動画表示領域である「第1の表示欄」について,あらかじめ,「第2の表示欄」を「第1の表示欄」よりも大きいサイズのものと設定して,コメントの少なくとも一部を「第2の表示欄」の内側ではあるものの「第1の表示欄」の外側に表示するというものである。そうすると,上記の作用効果を実現するためには,コメントは,動画の大小やアスペクト比に関わらず,「第1の表示欄」の外側に表示され得る必要があるから,「第1の表示欄」は動画を表示するために確保された領域(動画表示可能領域),「第2の表示欄」はコメントを表示するために確保された領域(コメント表示可能領域)であり,「第2の表示欄」は「第1の表示欄」よりも大きいサイズのものであり,そうであれば,「第1の表示欄」及び「第2の表示欄」のいずれも固定された領域であるものと解するのが相当である。』

 

(2)控訴審判決<本件判決>⇒充足(逆転)

⇒全画面表示のときなど、各表示欄がずれることがある。(「…適宜の方法を選択すると、動画が再生される領域の内側と外側にまたがってコメントが表示されることがある」)

⇒先行特許1の請求項1(表示「装置」の発明)~間接侵害(特許法101①)成立。

『(1)「第1の表示欄」及び「第2の表示欄」の意義について

 …本件発明1は、動画と共にコメントを表示する表示装置等に関するものであって、動画上に多数のコメントが書き込まれた場合であっても、コメントの読みにくさを低減させるため、動画を第1の表示欄において再生した上、コメントの少なくとも一部を第2の表示欄の内側であり、かつ、第1の表示欄の外側に表示するようにし、これにより、ユーザにおいて、コメントが動画に含まれるものではなく、ユーザが動画に書き込んだものであることを把握できるようにするものである。そして、動画が実際に再生される際の動画が再生されている領域とコメントが表示されている領域について、コメントの少なくとも一部が後者の内側であって、かつ、前者の外側に表示されるのであれば、ユーザは、コメントが動画に含まれるものではなく、他のユーザが書き込んだものであると把握することができるのであるから、本件発明1の上記作用効果を奏するといえる。そうすると、本件発明1にいう「第1の表示欄」及び「第2の表示欄」に該当するか否かは、動画が実際に表示される位置・領域及びコメントが実際に表示される位置・領域を基準にして判断するのが相当である。』

 

(3)充足論についての若干の考察

 進歩性判断をする際には、発明は技術思想であることを念頭において、従来技術から構成自体が容易想到であるかどうかに加え、本件(本願)発明の課題を解決し、その構成に想到することの容易想到性を問題とする裁判例が多い。

 その是非は措くとして、そのように発明の技術思想を重視するならば、充足論においても、本件では、プログラムとして「コメントは,動画の大小やアスペクト比に関わらず,「第1の表示欄」の外側に表示され得る」という技術思想を体現していなければならないとする一審判決の考え方も一理ある。

 控訴審判決<本件判決>が、「動画が実際に表示される位置・領域及びコメントが実際に表示される位置・領域を基準にして判断する」としたことは一審判決とも整合しており、合理的であるが、控訴審判決<本件判決>は、当てはめにおいては、一審判決と異なり、「実際に表示される」とは、「適宜の方法を選択すると、動画が再生される領域の内側と外側にまたがってコメントが表示されることがある」ことをもって充足とした、すなわち、「動画の大小やアスペクト比」により「第1の表示欄」の外側に表示され得るか否かが変わっても充足とした点において一審判決よりも発明を広く解釈したものである。

 このような控訴審判決の充足論の是非はまた措くとして、仮にこのような(視聴者が適宜の方法を選択すると、「動画の大小やアスペクト比」によっては「第1の表示欄」の外側にコメントが表示され得る)プログラムが従来技術であったとした場合、新規性欠如と判断されるのであろうか?

 おそらく、近時の裁判例の主流によれば、この点は相違点として把握され、「コメントそのものが動画に含まれているものではなく、動画に対してユーザによって書き込まれたものであることが把握可能」にするという本件発明の課題を解決するために、コメントが「第1の表示欄」の外側に表示され得るという技術思想に想到することの容易想到性が問題とされ、進歩性が肯定される可能性もある。そうすると、進歩性判断時には、本件発明の技術思想、課題、効果の容易想到性が問題とされるのに、充足論においては構成が同一であれば本件発明の技術思想、課題、効果を奏するとしてこれらを問題としない現在の実務は、進歩性を否定する方が充足論よりもハードルが高いという、(プロパテント傾向の)ダブルスタンダードが存在すると理解することも可能かもしれない。この点は、多くの事案では判断時の違いにより整合的に説明できるといわれる。すなわち、進歩性の判断時は出願日(優先日)であり、出願時に発明の課題を認識できたか否かが問題となるのに対し、充足性の判断時は(差止請求であれば)口頭弁論終結時であるところ、その時点では当業者は課題を認識して実施しているという説明である。しかし、そのような一般論が妥当する場合が多いとしても、全事例ではないはずであるし、本件事案におけるプログラムにそれが妥当するかは別論として検討する必要があるかもしれない。

 

3.属地論~国内ユーザへのプログラム配信

(1)本件判決

請求項9、10(プログラムの発明)について、米国FC2が米国に所有するサーバーから、日本国内に所在するユーザに向けて「プログラム」を配信していた行為が、日本国特許法にいう「提供」に該当するか」という論点に関して、本判決は、以下のとおり判示して、日本国特許法にいう(国内の)「提供」に該当すると判断した。

『…ネットワークを通じて送信され得る発明につき特許権侵害が成立するために、 …形式的にも全て日本国の領域内で完結することが必要であるとすると、…サーバ等の一部の設備を国外に移転するなどして容易に特許権侵害の責任を免れることとなってしまうところ、…かかる潜脱的な行為を許容することは著しく正義に反する…。…

①当該提供が日本国の領域外で行われる部分と領域内で行われる部分とに明確かつ容易に区別できるか、

②当該提供の制御が日本国の領域内で行われているか、

③当該提供が日本国の領域内に所在する顧客等に向けられたものか、

④当該提供によって得られる特許発明の効果が日本国の領域内において発現しているかなどの諸事情を考慮し、

当該提供が実質的かつ全体的にみて、日本国の領域内で行われたものと評価し得るときは、日本国特許法にいう「提供」に該当すると解するのが相当である。』

『…本件配信は、日本国の領域内に所在するユーザが被控訴人ら各サービスに係るウェブサイトにアクセスすることにより開始され、完結されるものであって… 、

①本件配信につき日本国の領域外で行われる部分と日本国の領域内で行われる部分とを明確かつ容易に区別することは困難であるし、

②本件配信の制御は、日本国の領域内に所在するユーザによって行われるものであり、また、

③本件配信は、動画の視聴を欲する日本国の領域内に所在するユーザに向けられたものである。さらに、

④本件配信によって初めて、日本国の領域内に所在するユーザは、コメントを付すなどした…動画を視聴することができるのであって、本件配信により得られる本件発明1-9及び10の効果は、日本国の領域内において発現している。

これらの事情に照らすと、本件配信は、その一部に日本国の領域外で行われる部分があるとしても、これを実質的かつ全体的に考察すれば、日本国の領域内で行われたものと評価するのが相当である。』

 

(2)若干の考察~プログラムの「提供」と有体物の「譲渡」とは、パラレルであるか?

 この点については、以下のスライド資料に整理されているため、引用する。

プログラムの配信は、プログラムをユーザのPCにインストールする場合は「譲渡」と、SAASでクラウド上の提供は「貸渡し」とパラレルに考えられる。本判決は、「インストール」と認定しているから、本判決の判示は、有体物の「譲渡」とパラレルに考えられる可能性がある。

この点については、筆者が講演会で示したPDF資料が纏まっているため、以下に引用する。


 


 


 



 



 


 


 

4.規範的侵害主体論の否定

(著作権の「カラオケ法理」は特許侵害主体論に適用されない。もっとも、最判令和4年10月24日・令和3年(受)第1112号【音楽教室における著作物使用に関わる請求権不存在 確認請求事件】により、「カラオケ法理」は終焉したとまでは言えなくとも、極めて限られた場面のみに妥当する事例判決であることが明らかとなったから、著作権の「カラオケ法理」に例えることは適切でないかもしれない。)

「 エ 被控訴人ら各装置の使用

…被控訴人ら各プログラムは、ユーザが被控訴人ら各サービスのウェブサイトにアクセスすることにより、ユーザの端末装置にインストールされるものであるし、被控訴人ら各装置を本件発明1の作用効果を奏する態様で用いるのは、動画やコメントを視聴するユーザであるから、被控訴人ら各装置の使用の主体は、ユーザであると認めるのが相当である。控訴人が主張するように被控訴人ら各装置の使用の主体が被控訴人らであると認めることはできない。


 オ 被控訴人ら各プログラムの生産(端末装置における複製)

 控訴人は、本件配信によりユーザの端末装置上に被控訴人ら各プログラムが複製され、これをもって、被控訴人らは被控訴人ら各プログラムを生産していると主張する。しかしながら、…、被控訴人ら各プログラムは、ユーザが被控訴人ら各サービスのウェブサイトにアクセスすることにより、ユーザの端末装置にインストールされるものであるから、ユーザの端末装置上において被控訴人ら各プログラムを複製している主体は、ユーザであると認めるのが相当である。控訴人の上記主張は、採用することができない。」

 

【関連裁判例の紹介(後行訴訟(システム特許/ JP6526304)~複数主体)】

「(2)被告FC2による被告システムの『生産』の有無について

・・・属地主義の原則・・・『生産』は、日本国内におけるものに限定される・・・。・・・上記の「生産」に当たるためには、特許発明の構成要件の全てを満たす物が、日本国内において新たに作り出されることが必要であると解すべきである。・・・

 ・・・被告FC2が管理する・・・動画配信用サーバ及びコメント配信用サーバは、・・・令和元年5月17日以降の時期において、いずれも米国内に存在しており、日本国内に存在しているものとは認められない。そうすると、被告サービス1により日本国内のユーザ端末へのコメント付き動画を表示させる場合、・・・それは、米国内に存在する動画配信用サーバ及びコメント配信用サーバと日本国内に存在するユーザ端末とを構成要素とするコメント配信システム(被告システム1)が作り出されるものである。
 したがって、完成した被告システム1のうち日本国内の構成要素であるユーザ端末のみでは本件発明1の全ての構成要件を充足しないことになるから、直ちには、本件発明1の対象となる『物』である『コメント配信システム』が日本国内において『生産』されていると認めることができない。」

⇒「有体物」,「システム」,「プログラム」でも同じかが問題となる。

 

【先行訴訟(平成30年(ネ)10077)と後行訴訟(令和元年(ワ)25152)との整合的理解】

先行訴訟では、FC2のプログラムが、先行特許1(JP4734471)請求項9,10の要件を全て充足していた。

⇒イ号が日米間に跨らない。「提供」場所の評価のみが問題となった。

(※プログラムの「提供」場所は、日米間に跨らず、日本国内であると評価された。)

 

後行訴訟では、FC2のシステムが、後行特許(JP6526304)の請求項1の全てを充足していなかった。

⇒イ号システムが日米間に跨っていることから、「生産」場所の評価は、 「特許発明の構成要件の全てを満たす物が、日本国内において新たに作り出されることが必要」という、(先行訴訟では生じなかった)要件が問題となり、これが否定された。

 

 先行訴訟と後行訴訟は別ツリー中の分割出願であり、以下のとおりである。


 

 

(原告)株式会社ドワンゴ

(被告)FC2,INC.

 

執筆:高石秀樹(弁護士・弁理士)(特許ニュース令和5年2月6日の原稿を追記・修正したものです。)

監修:吉田和彦(弁護士・弁理士)

 

〒100-8355 東京都千代田区丸の内3-3-1新東京ビル6階

中村合同特許法律事務所


 

 
<< Prev    Next >>

  • サイトマップ
  • 利用規約
  • 免責事項
  • 個人情報保護方針
  • 事業主行動計画

Copyright © 2023 Nakamura & Partners All Rights Reserved.

  1. サイトマップ
  2. 利用規約
  3. 免責事項
  1. 個人情報保護方針
  2. 事業主行動計画

Copyright © 2023 Nakamura & Partners All Rights Reserved.