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【特許★★】「立坑構築機」事件-①主・副引用発明の目的が異なるから、組合せに目的の相違に対応する主引例の構成を変更する必要がある<阻害要因あり>。②引用発明の構成の一部を独立して抽出できない(上位概念化の限界)。⇒進歩性〇

2021年01月07日

-令和元年(行ケ)第10102号「立坑構築機」事件<高部裁判長>-

 

◆判決本文

 

【本判決の要旨、考察】

1.特許請求の範囲

【請求項1】「ベースフレームに昇降且つ回動可能に支持され,円筒状部材の外周部に着脱される把持機構と,この把持機構を駆動する回転駆動装置とを備えた立坑構築機において,/前記ベースフレームは組立可能に複数に分割された分割フレームを備え,前記把持機構は,それぞれの両端部を各々接続して環状の歯車付ベアリングを構成する複数に分割された円弧状ベアリング片を備えていることを特徴とする立坑構築機。」

 

2.組合せの動機付け・阻害要因(進歩性〇、特許法29条2項)

⇒主・副引用発明の目的が異なる。

⇒組合せに主引例の目的の相違に対応する構成を変更する必要がある。

⇒阻害要因あり

(本判決の判旨抜粋)≪引用発明1+2の文脈≫『引用発明1では,小さく分割することでその輸送を容易にしながら,ケーシングドライバの大型化を図ることのできる構造の,昇降フレームを提供することを目的とするのに対し,引用発明2’では,種々のケーシングチユーブに適用し, 掘削排土及びケーシングチユーブの回転の両操作を同時に行うことのできる回転式 ボーリングマシンを提供することを目的とするので,両発明の目的は異なる。…直ちに動機付け があると評価することはできない。…

上記の目的の相違に対応して,引用発明1の「昇降フレーム4」は,旋回ベアリング6を取り付ける「取付座4a」を分断するように分割する構成を有し,その「取付座4a」のサイズは一定であり,種々の径の旋回ベアリング6を固定できるよう拡大や縮小が可能なものではないのに対し,引用発明2’の割ライナー4及び割クランプ3は,種々の径のケーシングチユーブをクランプするために締付拡大可能なものであり,回転駆動される割ライナー4,及び割ライナー4を回転可能に 支承する側の割クランプ3の両者が,締付ジヤツキ5の動作によってその径を変更することのできるものである。このような引用発明2’の割ライナー4及び割クランプ3を,旋回ベアリング6の径の変更に対応するための構成を有しない引用発明1の「昇降フレーム4」上の「取付座4a」にそのまま取り付けることはできないから,引用発明1に引用発明2’を組み合わせるためには,分割可能な「昇降フレーム4」及び「取付座4a」という引用発明1の構成自体を変更する必要が生じる。そうすると,引用発明1に引用発明2’を組み合わせることについては,これを阻害する要因があるというべきである。』

 

3.引用発明の認定~上位概念化の限界(進歩性〇、特許法29条2項)

⇒引用発明の構成の一部を独立して抽出できなかった(上位概念化×)

(本判決の判旨抜粋)≪引用発明1+3の文脈≫『原告らは,引用例3に記載された発明においても,本件発明と同様の「内輪,外輪,転動体」の一体構造が開示されているから,本件発明は特別に何ら技術的意義を有しないと主張し,また,引用例3から前記第3の2〔原告らの主張〕⑴のとおりの発明が認定されるべきであると主張する。しかしながら,引用例3から前記第3の2〔原告らの主張〕⑴のとおりの発明を認定することは,旋回座軸受の一部のみに着目することになるが,これだけでは旋回座軸受が一体として機能することがないから,引用例3から原告らの主張するように発明を認定することは相当でない。』

 

【関連裁判例の紹介(※引用発明の認定~上位概念化の限界が争われた裁判例)】

1.特許権者・出願人勝訴事例(引用発明の構成の一部を独立して抽出できなかった事例)
 
①知財高判平成22年(行ケ)第10162号「球技用ボール」事件

(判旨抜粋)『縫いボールにおいて,「折り曲げ」は,縫うことによって必然的に生じるものであり,両者は一体不可分の構成ということができる。したがって,折り曲げ部を有する縫いボールが周知であるとしても,このうち折り曲げる構成のみに着目し,これを縫いボールから分離することが従来から知られていたとは認められず,これが容易であったということもできない。』
 
②知財高判平成19年(行ケ)第10065号「連結部材…」事件

(判旨抜粋)『引用例2に記載された連結部材は,「周方向に各々空間33により離間されて,環状列に配置された複数の弓形突出部32」を具えることにより,公知の連結部材に比べて,より柔軟な連結部を構成することを目的とするものと認められる。このような目的に照らせば,引用例2に記載された連結部材は,「周方向に各々空間33により離間されて環状列に配置された複数の弓形突出部32」に「フック部34」を形成したものとして開示されており,「周方向に空間33により離間されたフック部34」単独からなる構成が開示されているとは認められない。』
 
③知財高判平成18年(行ケ)第10138号「…反射偏光子」事件

(判旨抜粋)『…引用例1には,液晶表示素子,光源,表示モジュール,反射型直線偏光素子の各構成要素が記載されていると認められる。しかし,引用例1の液晶表示素子においては,反射型偏光子とミラーとの間に位相差板を配置することが,必須の構成であり,位相差板とミラーを有しない反射型偏光子単独では,「反射型偏光子」を用いる技術的意味を有しないものとなってしまう…。したがって,引用例1に審決のいう引用発明を構成する各構成要素が記載されていても,反射型偏光子を含む液晶表示素子の発明を,ひとまとまりの構成ないし技術的思想として把握することはできない…』
 
④知財高判平成22年(行ケ)第10056号「液体収納容器,該容器を備える液体供給システム」事件

(判旨抜粋)『…④の周知技術の認定で審決が説示する「液体インク収納容器からの色情報」が単に液体インク収納容器のインク色に関する情報でありさえすればよいとすると,前記周知技術は,液体インク収納容器と記録装置側とが発光部と受光部との間の光による情報のやり取りを通じて当該液体インク収納容器のインク色に関する情報を記録装置側が取得することを意味するものにすぎない。このような一般的抽象的な周知技術を根拠の一つとして,相違点に関する容易想到性判断に至ったのは,本件発明3の技術的課題と動機付け,そして引用発明との間の相違点1ないし3で表される本件発明3の構成の特徴について触れることなく,甲第3号証等に記載された事項を過度に抽象化した事項を引用発明に適用して具体的な本件発明3の構成に想到しようとするものであって相当でない。』
 
⑤知財高判平成23年(行ケ)第10100号「高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板」事件

(判旨抜粋)『…引用例の【表1】には,独立した5種の鋼が例示され,鋼1ないし鋼5には,含有されている元素の含有量が示されている。ところで,合金においては,それぞれの合金ごとに,その組成成分の一つでも含有量等が異なれば,全体の特性が異なることが通常であって,所定の含有量を有する合金元素の組合せの全体が一体のものとして技術的に評価される…。…

本件全証拠によっても,「個々の合金を構成する元素が他の元素の影響を受けることなく,常に固有の作用を有する」,すなわち「個々の元素における含有量等が,独立して,特定の技術的意義を有する」と認めることはできない。したがって,引用例に,複数の鋼(鋼1ないし鋼5)が実施例として示されている場合に,それぞれの成分ごとに,複数の鋼のうち,別個の鋼における元素の含有量を適宜選択して,その最大含有量と最小含有量の範囲の元素を含有する鋼も,同様の作用効果を有するものとして開示がされているかのような前提に立って,引用発明の内容を認定した審決の手法は,技術的観点に照らして適切とはいえない。

…引用例記載の発明の課題は,鋼の特性を利用して解決されるものであるところ,引用例には,1つの鋼を組成する成分の組合せ及び含有量が,一体として,鋼の特性を決定する上で重要な技術的意義を有することが示されているから,各成分の組合せや含有量を「一体として」の技術的意義を問題とすることなく,記載された含有量の個々の数値範囲の記載を組み合わせて発明の内容を理解することは,適切を欠く。

以上のとおり,審決は,引用発明の認定に誤りがある。』
 
⑥知財高判平成23年(行ケ)第10385号「炉内ヒータを備えた熱処理炉」事件

(判旨抜粋)『引用発明は,従来技術である第3図,第4図に記載の焼成炉の問題を解決するため,ファン28を炉内に設けた構成が特徴点となっているのであり,その特徴点をないものとして引用発明を認定することは,引用例に記載されたひとまとまりの技術的思想を構成する要素のうち技術的に最も重要な部分を無視して発明を認定するものであり,許されないというべきである。
引用発明においては,炉体の外部に配置された駆動モータにより駆動されるとともに一つの炉壁に支持されているファン28によって,ヒータの熱で高温になった雰囲気ガスを強制的に攪拌することで炉内温度を均一にするものであるから,ヒータ33は,ファン28と被焼成物が収容されている匣組み22との間に位置することが合理的であり,発熱体が炉側壁に沿って並列する構成は想定できないというべきである。』
 
⑦知財高判平成23年(行ケ)第10284号「オープン式発酵処理装置」事件

(判旨抜粋)『…引用発明においては,撹拌機の構成と移動通路とは機能的に結び付いているものである。
そうすると,引用発明の発酵処理装置の構成から移動通路(15)を省略し,かつ奥行き方向に往復して撹拌する撹拌機の構成を長尺方向にのみ往復移動しながら撹拌動作する…周知技術に係る撹拌機の構成に改め,同時に概念的,論理的に複数に区切られた発酵槽内の領域を,発酵槽開口部の所望の個所から被処理物の投入・堆積・取出しを行うことができるようにするべく,領域ごとに被処理物の滞留日数及び撹拌頻度を管理することができるようにすることは,…が当業者に周知のものであるとしても,本件出願当時,当業者において容易ではあったと認めることはできない。』
 
⑧知財高判平成29年(行ケ)第10119号、第10120号「空気入りタイヤ」事件

(判旨抜粋)『本件審決は,甲4に甲4技術が記載されていると認定した。しかし,…甲4には,特許請求の範囲にも,発明の詳細な説明にも,一貫して,ブロックパターンであることを前提とした課題や解決手段が記載されている。また,…甲4には,前記イ①ないし③の技術的事項,すなわち,溝面積比率,独立カーフ,タイヤ幅方向全投影長さとタイヤ周方向全投影長さの比に関する甲4技術Aが記載されている。そこで,これらの記載に鑑みると,上記イ①ないし③の技術的事項は,甲4に記載された課題を解決するための構成として不可分のものであり,これらの構成全てを備えることにより,耐摩耗性能を向上せしめるとともに,乾燥路走行性能,湿潤路走行性能及び乗心地性能をも向上せしめた乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供するという,甲4記載の発明の課題を解決したものと理解することが自然である。したがって,甲4技術Aから,ブロックパターンを前提とした技術であることを捨象し,さらに,溝面積比率に係る技術的事項のみを抜き出して,甲4に甲4技術が開示されていると認めることはできない。よって,本件審決における甲4記載の技術的事項の認定には,上記の点において問題がある。…』

⑨知財高判令和1年(行ケ)第10102号「立坑構築機」事件

(判旨抜粋)『原告らは,引用例3に記載された発明においても,本件発明と同様の「内輪,外輪,転動体」の一体構造が開示されているから,本件発明は特別に何ら技術的意義を有しないと主張し,また,引用例3から前記第3の2〔原告らの主張〕⑴のとおりの発明が認定されるべきであると主張する。しかしながら,引用例3から前記第3の2〔原告らの主張〕⑴のとおりの発明を認定することは,旋回座軸受の一部のみに着目することになるが,これだけでは旋回座軸受が一体として機能することがないから,引用例3から原告らの主張するように発明を認定することは相当でない。』
 
⑩知財高判平成30年(行ケ)第10175号「アクセスポート」事件

(判旨抜粋)『…「刊行物に記載された発明」(特許法29条1項3号)の認定に当たり,特定の刊行物の記載事項とこれとは別個独立の刊行物の記載事項を組み合わせて認定することは,新規性の判断に進歩性の判断を持ち込むことに等しく,新規性と進歩性とを分けて判断する構造を採用している特許法の趣旨に反し,原則として許されないというべきである。

よって,東レポートを用いた耐圧性能に関する実験結果を記載した論文である引用例1と,これと作成者も作成年月日も異なる,東レポートの仕様や使用条件を記載した添付文書である引用例2の記載から,甲9発明を認定することはできない。

そして,引用例1には,東レポートの具体的な構成についての記載はなく,東レポートの具体的な構成が本件出願の優先日時点において技術常識であったとまでは認められないから,甲9発明が,引用例1に実質的に開示されているということもで きない。』
 

2.特許権者・出願人敗訴事例(引用発明の構成の一部を独立して抽出できた事例)
 
①知財高判平成15年(行ケ)第348号「べら針」事件

(判旨抜粋)『甲5公報及び甲6公報…に接した当業者は,半抜き加工により被加工材を塑性変形させて凹部を形成する際,当該凹部の溝底の形状を平坦にするという技術手段を理解するに当たって,原告主張に係る甲5公報及び甲6公報記載の発明の目的や他の構成要素を,本件技術手段と一体不可分なものとして理解しなければならない理由はないから,当業者は,本件技術手段を,一般の金属板半抜き加工技術として,任意に転用可能な技術手段であると理解するというべきである。』
 
②知財高判平成17年(行ケ)第10024号「フェンダーライナ」事件

(判旨抜粋)『原告は,引用例1の実施例1によると,吸音材の厚さは30mmであり,この厚さから密度を計算すると,密度は約0.03g/cm3となり,硬質繊維板どころか,JISに定義されている中質繊維板の密度よりもはるかに小さい旨主張する。しかし,審決が引用発明としているのは,数値による定量的な事項を捨象した「PET繊維を熱可塑性樹脂バインダー(バインダー繊維)で融着結合してなるPET不織布をコールドプレスし,所定形状に賦形した自動車のエンジンルーム内に適用される防音材」という発明である。そして,引用発明を,実施例1に記載されている定量的な事項によって限定されなければならないような事情は見当たらない。』
 
③知財高判平成17年(行ケ)第10672号「高周波ボルトヒータ」事件

(判旨抜粋)『…引用発明の認定においては,引用発明に含まれるひとまとまりの構成及び技術的思想を抽出することができるのであって,その際引用刊行物に記載された具体的な実施例の記載に限定されると解すべき理由はない。
…甲1自体には実現できるように記載されてない高周波誘導加熱の具体的な構成そのものは,…本件特許出願当時,…技術常識であったのであるから,当業者は,甲1の「…高周波加熱トーチ」の高周波誘導加熱に上記技術常識であった誘導加熱体の具体的な構成を参酌し,高周波誘導加熱を実現することができるものとして,甲1発明を把握することができたものと認められる。』
 
④知財高判平成16年(行ケ)第159号「遊技機における制御回路基板の収納ケース」事件

(判旨抜粋)『本件決定が刊行物2,3を引用したのは,遊技機の制御回路基板の収納ケースにおいて,該収納ケースの底板部に基板固定ピンを突設し,該基板固定ピンにより前記収納ケースの底板部に制御回路基板を固定させることが本件特許出願時に周知であったことを明らかにするためである。そして,制御回路基板を同基板の収納ケースの底板部に固定する技術と制御回路基板の収納ケースに静電気(電磁波)対策を施す技術とは技術的に関連性がないことは刊行物2,3の記載及び技術常識に照らして明らかであり,刊行物2,3の上記技術事項を刊行物1発明に適用する際に,静電気対策上悪影響があるか否かの問題は生じない…。』
 
⑤知財高判平成24年(行ケ)第10204号「封水蒸発防止剤」事件

(判旨抜粋)『引用発明2は,…粘着剤層(2a)が担う軽剥離が可能とするとの機能は,粘着剤層(2b)とは独立した機能の併存によって達成されるものであるから,粘着剤層(2b)が存在することによって影響を受けるものではなく,粘着剤層(2a)のみによって独自に発揮されるものということができる。そうであるから,…当業者は,引用発明2の構成に係る粘着力が相対的に弱い粘着剤層(2a)と粘着力が相対的に強い粘着剤層(2b)とをそれぞれ別個の構成のものとして認識することができ,それぞれが有する技術的意義も個別に認識することができるから,粘着剤層(2a)について,チップ状ワークを粘着剤層から剥離する時の軽剥離性に着目し,この粘着力が相対的に弱いものとして,独立して抽出することができるものということができる。』
 
⑥知財高判平成22年(行ケ)第10220号「携帯型家庭用発電機」事件

(判旨抜粋)『なるほど,引用発明は,引用例記載の「携帯用扇風機」における,太陽光発電及び充電時の一態様であって,一義的には当該扇風機の駆動に供するものであるといえる。しかし,引用発明が開示する太陽光発電,充電時の開示された構造及びその機序は扇風機の駆動と直接関係しているものではなく,それ自体が技術的に独立し,技術的に扇風機の駆動と分離して論ずることができる…。したがって,引用例におけるこのような記載事項に接した当業者は,引用例に記載された事項を総合的にみて,独立した技術思想として,多目的活用可能な太陽電池である引用発明を読み取ることができる…』

 
 
——————————————————————————

【判示事項(抜粋)~「引用発明の認定~上位概念化の限界」に関する判示部分】

第3.当事者の主張

・・・

2 取消事由2(引用発明1及び同3に基づく進歩性判断の誤り)について

〔原告らの主張〕

⑴ 引用発明3の認定の誤り

引用例3は,ベアリングの技術を開示するものであり,旋回座軸受を構成する複数の内輪が結合されるときの位相のことを問題としていない。本件審決は,組み立て後の完成品である旋回座軸受の一つの構造である位相が90度ずれていることに着目し,実施例に基づいて過度に限定的に発明を認定しているが,そのように認定することは妥当でない。

引用例3からは,次のア及びイの発明を認定すべきである。

ア 引用発明3’の1(従来技術)

内輪(第2内輪部102b),外輪(第2外輪部104b),内輪(第2内輪部102b)と外輪(第2外輪部104b)の間に配置されるスラストころ112及びラジアルころ116を備え,内輪(第2内輪部102b)と外輪(第2外輪部104b)とが互いに回転可能に支持されるベアリング(軸を支持する部品)であり,/内輪(第2内輪部102b)は,軸を含む平面で2つの弧状の軌道部材102b-1及び軌道部材102b-2に分割され(図11参照),歯車を形成する凹凸21a及び21bを有しており,それぞれの両端部を各々接続して構成されており,/外輪(第2外輪部104b)は,上記軸を含む平面で2つの弧状の軌道部材104b-1及び軌道部材104b-2に分割され(図12参照),それぞれの両端部を各々接続して構成されている,/ベアリング(軸を支持する部品)。

イ 引用発明3’の2(実施例として)

外輪,内輪,及び,内輪と外輪の間に存在するスラストころ14又はラジアルころ18により構成されるベアリング(軸を支持する部品)であり,/外輪は,外周に外歯歯車1cを有する略半円弧状の軌道部材1と,軌道部材1と対をなし,外周に外歯歯車2cを有する略半円弧状の軌道部材2とが,軌道部材1と2の端面間に配置され,軌道部材1,2と共に一つの真円をなす板状のスペーサ3,4を介してそれぞれの両端部を各々接続して環状に構成されており,/内輪は,略半円弧状の軌道部材41と略半円弧状の軌道部材42とが,軌道部材41,42の端面間のスペーサ43を介して,それぞれの両端部を各々接続して環状に構成されている(図3及び図8参照),/ベアリング(軸を支持する部品)。

・・・

第4 当裁判所の判断

・・・

3 取消事由2(引用発明1及び同3に基づく進歩性判断の誤り)について

・・・

⑶ 原告らの主張について

ア 原告らは,引用例3に記載された発明においても,本件発明と同様の「内輪,外輪,転動体」の一体構造が開示されているから,本件発明は特別に何ら技術的意義を有しないと主張し,また,引用例3から前記第3の2〔原告らの主張〕⑴のとおりの発明が認定されるべきであると主張する。

しかしながら,引用例3から前記第3の2〔原告らの主張〕⑴のとおりの発明を認定することは,旋回座軸受の一部のみに着目することになるが,これだけでは旋回座軸受が一体として機能することがないから,引用例3から原告らの主張するように発明を認定することは相当でない。

イ また,本件発明の「環状の歯車付ベアリング」は,本件明細書の【0007】ないし【0009】,【0011】,【0020】及び【0026】において,一貫して「ボールベアベアリング」に関して記載されていることから明らかなように,内輪,外輪及びそれらの間に配置されたボール状の転動体からなるものである。

そして,本件発明の「円弧状ベアリング片」は,本件明細書の図4,【0026】に記載のとおり,「環状の歯車付ベアリング」を内輪,外輪同じ位置で半円形となるように分割しただけのものであることからすれば,「内輪,外輪,転動体」が一体となったものであることも明らかというべきである。

ウ なお,原告らが提出する甲第7号証(特開平2-304216号公報)には,以下の記載がある(図は別紙6記載のもの)。

(ア) 産業上の利用分野

この発明は,トンネル掘削機のカッタヘッド等を回転自在に支持する大型転がり軸受の軸受セグメントに関するものである。

(イ) 実施例

第1図は,大形の転がり軸受を示す。この転がり軸受1は複数の軸受セグメント2から形成されている。

第2図以下は,上記軸受セグメント2を示す。この軸受セグメント2は,内輪セグメント3と外輪セグメント4とを有し,内輪セグメント3の外周面おける中央部にはフランジ5が設けられている。

‥上記大形転がり軸受を用いて,例えば,トンネル掘削機のカッタヘッドを支持するには,内輪セグメント3及び外輪セグメント4に形成された取付孔29,30を利用して,内輪を形成する内輪セグメント3をカッタヘッドにねじ止めし,外輪を形成する外輪セグメント4をハウジングにボルト止めする。

ここで,転がり軸受は,内輪セグメント3及び外輪セグメント4の取付けによって組立てるようにする。すなわち,軸受セグメント2の内輪セグメント3及び外輪セグメント4をねじ止めする工程と,次の軸受セグメント2を先に取付けられた軸受セグメント2の突き合わせ面23,26に突き合わせ,かつ突部24,27を凹部25,28に係合してその軸受セグメント2を取付ける工程とを順次行なって複数の軸受セグメント2を円形に組立て,その後,連結ボルト22を取外して内輪セグメント3と外輪セグメント4の連結を解除する。

しかし,甲第7号証を参酌することによって上記の判断が左右されることもない。

エ したがって,原告らの主張は理由がない。

 

執筆:高石秀樹(弁護士・弁理士)(特許ニュース令和2年12月14日の原稿を追記・修正したものです。)

監修:吉田和彦(弁護士・弁理士)

 

本件に関するお問い合わせ先: h_takaishi@nakapat.gr.jp

 

〒100-8355 東京都千代田区丸の内3-3-1新東京ビル6階

中村合同特許法律事務所

 

 

 
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