NAKAMURA & PARTNERS
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【商標法★】図形部分と文字部分から成る結合商標について,分離・要部観察,商標の類否判断において考慮し得る一般的,恒常的な取引の実情,特定小売等役務の類否の観点から商標法4条1項11号に該当する,と判断して,特許庁の拒絶審決を維持した事例

2022年08月04日

<本願商標>

<引用商標>

KANGOL(標準文字)

 

知財高判令和3年6月16日(令和2年(行ケ)第10148号)(鶴岡稔彦裁判長)

 

◆判決本文

 

【判決要旨】

1.商標の類否について

(1)商標の類否判断の一般論について

商標の類否は,対比される商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に,その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかも,その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最判昭和43年2月27日)。

(2)結合商標の分離・要部観察の許否の判断基準について

複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していると認められる場合においては,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して類否を判断することは,原則として許されないが,その場合であっても,商標の構成部分の一部が取引者又は需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じない場合などには,商標の構成部分の一部だけを取り出して,他人の商標と比較し,その類否を判断することが許されるものと解される(最判昭和38年12月5日,最判平成5年9月10日,最判平成20年9月8日

(3)本件商標の分離・要部観察の許否について

本願商標の図形部分及び欧文字部分には観念上のつながりがあるとはいえないところ,本願商標全体の構成からすると,同各部分は,視覚上分離して看取されるものであって,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえないから,それぞれが要部として認識されるものといえる。そして,上記の欧文字部分についてみるに,同部分からは「KANGOL」の欧文字に相応して「カンゴール」の称呼が生じるが,特定の観念は生じないといえる。

(4)本件商標と引用商標の類否について

本願商標の要部である「KANGOL」の欧文字部分と引用商標とを比較すると,両者は,外観が極めて類似し,称呼も共通にする。よって,本願商標及び引用商標は,商標が類似するものと認められる。

(5)商標の類否判断において考慮し得る取引の実情について

本件契約それ自体は,原告とカンゴール社との間における個別の合意にすぎないから,同契約を締結した事実や,同契約に基づいて原告が本願商標を継続的に使用している事実は,商標の類否判断において考慮し得る一般的,恒常的な取引の実情(最判昭和49年4月25日) には当たらないというべきである。

 

2.指定役務の類否について

(1)指定役務の類否判断の一般論について

指定役務が類似のものであるかどうかは,それらの役務が通常同一営業主により提供されている等の事情により,それらの役務に同一又は類似の商標を使用する場合には,同一営業主の提供に係る役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるか否かによって判断するのが相当である(最判昭和36年6月27日)。

(2)本願指定役務及び引用指定役務の類否について

本願指定役務及び引用指定役務は,いずれも衣類を中心とするファッション商品を取扱商品とする点において共通するほか,役務を提供する手段,目的及び業種が共通する。また,両役務は,役務を提供する場所が共通する場合があるほか,需要者の範囲が一致する。これらの事情を考慮すると,本願指定役務及び引用指定役務については,これらの役務に同一又は類似の商標を使用する場合には,同一営業主の提供に係る役務と誤認されるおそれがあると認められる関係がある。以上より,本願指定役務と引用指定役務は,役務が類似するものと認められる。

 

【コメント】

1.結合商標の分離・要部観察の許否の判断基準について,最判昭和38年12月5日〔リラタカラヅカ事件〕では,「簡易,迅速をたっとぶ取引の実際においては,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は,常に必らずしもその構成部分全体の名称によって称呼,観念されず,しばしば,その一部だけによって簡略に称呼,観念され,一個の商標から二個以上の称呼,観念の生ずることがあるのは,経験則の教えるところである」として,要部抽出を認めてきた。

その後,最判平成20年9月8日〔つつみのおひなっこや事件〕にて,「商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである」として,従来の審査運用よりも,要部抽出できる場合を限定するかのような判断が出された。
判決要旨1.(2)及び(3)においては,「視覚上分離して看取されるものであって,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえない」という理由により,カンガルーをモチーフとしたと思われる図形部分と「KANGOL」の欧文字部分の各部分それぞれが要部として認識されるとの判断がなされており,これは,知財高判平成28年1月20日〔REEBOK ROYAL FLAG事件〕等を踏襲して、最判平成20年9月8日〔つつみのおひなっこや事件〕後もなお,最判昭和38年12月5日〔リラタカラヅカ事件〕の判断基準が併存・両立して適用され得ることを示したものである。

 

2. 商標の類否判断における「出所の混同」については,一般的な取引から想定される抽象的な混同を基準とする見解(「抽象的混同説」)と具体的な取引状況の下で生じる具体的な混同を基準とする見解(「具体的混同説」)とが対立し,いずれの「混同」を問題とすべきかの議論がなされてきた。この点,最判昭和43年2月27日〔氷山印事件〕は,「取引の実情を明らかにしうるかぎり,その具体的な取引状況に基づいて判断する」と判示しており,この部分だけをみれば,「具体的混同説」を採っているかのようにも思われなくもないが,原審が類似性を肯定するために参酌した事情が「局所的あるいは浮動的な現象と認めるに足り」ないと判示して原審の判断を支持しており,「局所的,浮動的な事情」は参酌しないことを明らかにしている。また,最判昭和49年4月25日〔保土ヶ谷化学工業社標事件〕においては,「商標の類否判断に当たり考慮することのできる取引の実情とは,その指定商品全般についての一般的,恒常的なそれを指すものであって,単に該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的,限定的なそれを指すものではない」旨が判示されている。もっとも,その後の下級審裁判例においては,如何なる事情が「一般的,恒常的な」ものとして考慮され,「局所的あるいは浮動的」ないし「特殊的,限定的な」なものとして考慮されないかは,必ずしも一義的に明らかではなく,かなり具体的・時限的な事情を考慮するものも少なくなかった。

このような状況の下で,判決要旨1.(5)は,改めて,最判昭和49年4月25日〔保土ヶ谷化学工業社標事件〕を引用しつつ,当事者間で契約を締結した事実や,同契約に基づいて原告が本願商標を継続的に使用している事実は,商標の類否判断において考慮し得る一般的,恒常的な取引の実情には当たらないと判示したものである。

 

3.判決要旨2は,最判昭和36年6月27日〔橘政宗事件〕を引用して,本願指定役務と引用指定役務の類似を認定判断したものである。

 

【判決の抜粋】

1.商標の類否について

(1)商標の類否判断の一般論について

「商標の類否は,対比される商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に,その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかも,その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(前掲最高裁昭和43年2月27日判決参照)。」

(2)結合商標の分離・要部観察の許否の判断基準について

「複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していると認められる場合においては,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して類否を判断することは,原則として許されないが,その場合であっても,商標の構成部分の一部が取引者又は需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じない場合などには,商標の構成部分の一部だけを取り出して,他人の商標と比較し,その類否を判断することが許されるものと解される(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。」

(3)本件商標の分離・要部観察の許否について

(本願商標)「の図形は,その形状からすれば,カンガルーをモチーフとした図形であると認識され得るものといえるが,やや抽象化された図形であることからすれば,同図形部分から特定の称呼や観念が生じるものとまではいえない。また,上記の欧文字は,一般的な辞書等に掲載されている語ではなく,特段の図案化もされていないことからすれば,同欧文字部分から特定の観念が生じるものとはいえない。

そうすると,上記の図形部分及び欧文字部分には観念上のつながりがあるとはいえないところ,本願商標全体の構成からすると,同各部分は,視覚上分離して看取されるものであって,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえないから,それぞれが要部として認識されるものといえる。

そして,上記の欧文字部分についてみるに,同部分からは『KANGOL』の欧文字に相応して『カンゴール』の称呼が生じるが,特定の観念は生じないといえる。」

(4)本件商標と引用商標の類否について

「本願商標の要部である『KANGOL』の欧文字部分と引用商標とを比較すると,両者は,観念を比較することはできないものの,欧文字のつづりが同じである上,本願商標の欧文字部分について特段の図案化はされていないから,外観が極めて類似するものといえる。また,両者からはいずれも『カンゴール』の称呼が生じるから,両者は称呼を共通にするものといえる。

以上の事情を総合して全体的に考察すれば,本願商標の要部である『KANGOL』の欧文字部分及び引用商標については,これらが同一又は類似の商品又は役務に使用された場合には,その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるといえる。」

(5)商標の類否判断において考慮し得る取引の実情について

「本件契約それ自体は,原告とカンゴール社との間における個別の合意にすぎないから,同契約を締結した事実や,同契約に基づいて原告が本願商標を継続的に使用している事実は,商標の類否判断において考慮し得る一般的,恒常的な取引の実情(最高裁昭和47年(行ツ)第33号同49年4月25日第一小法廷判決・審決取消訴訟判決集昭和49年443頁参照)には当たらないというべきである。」

 

2.指定役務の類否について

「指定役務が類似のものであるかどうかは,それらの役務が通常同一営業主により提供されている等の事情により,それらの役務に同一又は類似の商標を使用する場合には,同一営業主の提供に係る役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるか否かによって判断するのが相当である(最高裁昭和33年(オ)第1104号同36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁参照)。」

「本願指定役務及び引用指定役務は,具体的な取扱商品は異なるものの,いずれも衣類を中心とするファッション商品を取扱商品とする点において共通するほか,役務を提供する手段,目的及び業種が共通するものといえる。また,両役務は,役務を提供する場所が共通する場合があるほか,需要者の範囲が一致するものといえる。

これらの事情を考慮すると,本願指定役務及び引用指定役務については,これらの役務に同一又は類似の商標を使用する場合には,同一営業主の提供に係る役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるといえる。」

【Keywords】商標法4条1項11号,商標の類否,分離観察,要部観察,一般的・恒常的な取引の実情,商品と役務の類否,KANGOL,カンゴール

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。

 

執筆:弁理士 竹下 薫(日本弁理士会)

監修:弁護士・弁理士 飯田 圭(第二東京弁護士会)

本件に関するお問い合わせ先:k_iida☆nakapat.gr.jp (☆を@に読み換えてください。)

 
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