NAKAMURA & PARTNERS
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【商標法★】位置商標である本願商標は,指定商品の需要者として想定される一般消費者の注意力に照らして,その機能的な構成自体が識別力を備えたものとはいえないから,商標法3条1項6号に該当する一方,同条2項所定の使用により識別力を獲得したものにも該当しないとされて,拒絶審決が維持された事例

2020年12月16日

知財高判令和2年8月27日(令和元年(行ケ)第10143号)(鶴岡裁判長)

 

◆判決本文

 

【判決要旨】

1.本願商標の構成の識別力について(商標法3条1項6号該当性)

位置商標の識別力は,位置商標を構成する標章とその標章が付される位置とを総合して,商標全体として考察すべきものと解される。

そして,本願商標の識別力の有無を判断するに当たっては,指定商品である第21類「毛髪カット用くし」の需要者として,一般消費者を想定するのが相当である。

また,カットコームの背面部の貫通孔は,一般的には,機能向上のための工夫として認識されるのが通常であり,自他商品の識別標識としての特徴であると理解されるものではない。このことは本願商標に係る貫通孔が設けられたカットコームについても同様である。

以上によれば,本願商標の下記構成は,指定商品の需要者として想定される一般消費者の注意力に照らしてみたとき,構成自体として,識別力を備えたものとはいえない。

① 本願商標

 

② 本願商標の詳細な説明

商標登録を受けようとする商標は,標章を付する位置が特定された位置商標であり,複数本の櫛歯を有するくし本体の長辺方向の中央を除いた左右部分に,それぞれ一定間隔で横並びに配された楕円型にくりぬかれた貫通孔を組み合わせた図形からなる。なお,破線は,商品のくしの形状の一例を示したものであり,商標を構成する要素ではない。

 

2.本願商標の使用による識別力について(商標法3条2項の適用の有無)

原告提出の各証拠によれば,原告が販売する櫛は,美容師・理容師等の間では有名であること,及び,これらの美容師・理容師等の中には,「穴のあいた櫛」であることを原告の商品であることを識別する標識として掲げている者が多いことが認められる。

しかしながら,上記各証拠によれば,原告が販売している櫛には,本願商標の構成とは異なる数の貫通孔を空けた物(請求人類似商品)も少なからず存在することが認められるところ,上記のとおり,美容師・理容師が識別標識としているのは「穴のあいた櫛」であることであって,本願商標の構成である中央部を除いた左右に7つずつ空けられた貫通孔ではないのであるから,これによって,本願商標の構成そのものが自他商品の識別標識となっていると断定できるかどうかには疑問がある。さらに,本願商標を付した商品の需要者・取引者としては一般消費者を想定すべきことに照らして,これらの証拠によっては,本願商標が需要者・取引者一般に対して識別力を獲得するに至っていると認定することはできない。

 

【コメント】

1.判決要旨1は,指定商品の需要者を一般消費者と想定したうえで,その注意力に照らして機能的な本願位置商標の構成自体の本来的な識別力を否定したものである。

 

2.判決要旨2は,美容師・理容師等の認識理解,特に穴のあいた櫛一般に係る不特定な構成に関する原告提出の各証拠が,特に指定商品の需要者が一般消費者と想定されることに照らして,機能的な本願位置商標の特定の構成に関する使用による識別力の獲得を示すのに十分ではないと判断したものである。

 

3.位置商標は,2015年4月1日より登録可能とされた新しいタイプの商標の一つであって,図形等を商品等に付す位置が特定される商標をいい,その登録事例としては,例えば,以下のものがある。

登録番号 商標権者 位置商標及び商標の詳細な説明(一部抜粋)
第5804314号 株式会社ドクターシーラボ

商品の包装用容器の本体側面の上半部に付された赤色の図形からなる。

第5805761号 株式会社セコマ

広告物としての店舗におけるガラス窓や壁面の上部に付された図形からなる。商標は、上から順に白色、オレンジ色、白色の帯状の図形に複数の丸い図形を組み合わせたもの、及び、上から順に白色、赤色、白色の帯状の図形に複数の丸い図形を組み合わせたものからなる。図中の黒い破線で囲んだ場所は、位置商標の位置を示している。

第5807881号

 

 

株式会社エドウイン

ズボンの後ろポケットの左上方に付され、「EDWIN」の欧文字が表された赤い長方形のタブ図形からなる。

第5858802号 株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント

ゲームプログラムの操作用コントローラーの右上部に付されたボタン部分の立体的形状からなる。

第5873740号 亀田製菓株式会社

米菓又は豆菓子の包装用容器の左上部分に付された図形からなる。そして、前記図形については、青色の縦長略リボン形状及びその左右両辺に接する部分を白色とし、該縦長略リボン形状内に赤い太線の横長六角形とその内部に赤い細線の横長六角形を配してなるところ、両横長六角形の輪郭に接する外側部分並びに赤い細線の細長六角形の内側部分を白色とする構成からなるものである。

第5874850号 株式会社 資生堂

化粧用綿の包装用袋に描かれた正面中央部の上半部に付された図形からなる。

第5918807号 京セラ株式会社

包丁(ナイフ)の刃の形状、包丁(ナイフ)の刃の全面に付された色彩、包丁(ナイフ)の刃の向かって左上に付された図形及び「KYOCERA」の欧文字からなる。

第5960200号 キユーピー株式会社

赤い太線からなる網の目状の図形を配した構成からなるものであり、商品包装の前面の上部約5分の2の部分に位置します。

第6015898号 ヤマハ株式会社

電気バイオリンの向かって右側のみに存在するフレーム部分の立体的形状からなる。

第6028117号 フレッドペリー(ホールディングス)リミテッド

ポロシャツの左胸に月桂冠の図形と襟の端の周りと両袖の袖口部分の周縁に二重の線からなる図形を付したものよりなる。

第6034112号 日清食品ホールディングス株式会社

商品包装の上方部の周縁に付された図形と、商品包装の下方部の周縁に付された図形とを組み合わせた図形からなる。

第6044632号 株式会社エスエスケイ

靴の左側面に付された図形からなる。

第6103554号 伊藤忠商事株式会社

履物の側面の後方に付され、「CONVERSE」、「Chuck Taylor」、「ALL STAR」の欧文字、星形の図形及び「R」の欧文字を円で囲んだ図形が表された円形の図形からなる。

第6125626号 株式会社サクラクレパス

油性マーキングペンの本体における筆記部側部分の周縁に付された縞模様の図形からなる。

第6183484号 プーマ エスイー

商品「履物及び運動用特殊靴」の側面に付された図形からなる。

 

【判決の抜粋】

1.本願商標の構成の識別力について(商標法3条1項6号該当性)

「⑴ 商標が備えるべき識別力の程度

商標の持つべき本質的機能は,商品又は役務の出所識別標識として機能すること(以下,この機能を「識別力」という。)であるから,需要者に対し,当該商品が何人かの業務に係るものであることを認識させるものであることを要し,かつ,それで足りるものと解される。

また,位置商標の識別力は,位置商標を構成する標章とその標章が付される位置とを総合して,商標全体として考察すべきものと解される。

⑵ 本願商標の需要者

カットコームは,理美容師が毛髪等をカットするために用いる櫛を意味するから,その製造販売等に関与する取引者が需要者として想定するのは,主として理美容師などの職業的専門家であると推認される。しかしながら,カットコームの流通においては,その購入に一定の資格を有するなど特に業務専用品としての制限があるわけではないし,証拠(乙31~37)によれば,カットコームが家庭での調髪などの用途のために一般消費者向けにも販売されており,美容用品としての櫛と一般用の櫛とが混在してインターネット等を通じ広く流通している事実も認められる。したがって,職業としてヘアカットを行う理美容師だけではなく,一般消費者が子供その他の家族の散髪などを目的としてカットコームを購入することも,十分想定される。したがって,本願商標の識別力の有無を判断するに当たっては,指定商品の需要者として,一般消費者を想定するのが相当である。

⑶ 本願商標の識別力

整髪又は調髪に用いる櫛は,理美容道具としての性格上,その機能性が重視されるものと考えられるところ,取引の実情においても,櫛の背骨部の位置に一定間隔で模様,窪み又は貫通孔等を設けることにより,それらを目盛り代わりに用いる,指のすべり止めとしての機能を果たさせる,しなりを生み出し,使いやすさを向上させるなどといった,機能向上のための工夫がされ,それらの工夫が宣伝されている実情があることが認められる(乙5~17)。したがって,カットコームの背面部の貫通孔も,一般的には,機能向上のための工夫として認識されるのが通常であり,自他商品の識別標識としての特徴であると理解されるものではないといえる。

また,このことは本願商標に係る貫通孔が設けられたカットコームについても同様であり,商品の紹介で強調されているのは,「硬さとしなやかさを両立するための『エアーサスペンション機能(1センチ間隔で空いた背面の穴)』」などといった機能面での工夫であって,貫通孔に自他商品識別標識としての機能があることは,何ら言及されていない(乙23~25)。そうすると,これらの記述に接した需要者は,一般的には,上記貫通孔は,機能向上のための工夫として設けられているものと認識するのが通常であって,これを自他商品の識別標識と認識するとは考え難いところである。

⑷ 以上に検討したところによれば,本願商標の構成は,指定商品の需要者として想定される一般消費者の注意力に照らしてみたとき,構成自体として,識別力を備えたものとはいえない。」

 

2.本願商標の使用による識別力について(商標法3条2項の適用の有無)

「⑴ この点につき,審決は,審判手続で提出された証拠に基づいては,本願商標がその使用を通じて原告が製造販売する商品としての識別力を獲得するに至っているとは認められない旨判断しているところ,その認定判断に特段の誤りはない。

⑵ 原告は,本願商標は,それが使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているとして,商品のカタログ等(甲3~48,73,103,172~183,185~194,197~300)や,美容師,理容師,理美容師養成学校関係者に対するアンケート結果や陳述書(甲77,87,333(枝番を含む。)。もっとも,甲333は,定型の文言が記載された用紙に各人の署名捺印がされているだけなので,その信用性はやや低いものと考えざるを得ない。)を提出しているところ,たしかに,これらの各証拠等によれば,原告が販売する櫛は,プロである美容師や理容師等の間では有名であること,及び,これらの美容師,理容師等の中には,「穴のあいた櫛」であることを原告の商品であることを識別する標識として掲げている者が多いことが認められる。

しかしながら,上記各証拠によれば,原告が販売している櫛には,本願商標の構成とは異なる数の貫通孔を空けたもの(請求人類似商品)も少なからず存在することが認められるところ,上記のとおり,理容師,美容師等が識別標識としているのは「穴のあいた櫛」であることであって,本願商標の構成である中央部を除いた左右に7つずつ空けられた貫通孔ではないのであるから,これによって,本願商標の構成そのものが自他商品の識別標識となっていると断定できるかどうかには疑問がある。さらに,上記アンケート結果等は理容師,美容師及び理美容師養成学校の関係者を対象とするものであるから,本願商標を付した商品の需要者・取引者としては一般消費者を想定すべきこと(上記2⑵)に照らして,これらの証拠によっては,本願商標が需要者・取引者一般に対して識別力を獲得するに至っていると認定することはできない。

したがって,原告の上記主張は採用することができない。」

 

 

【Keywords】位置商標,商標法3条1項6号,本来的識別力,一般消費者,機能,商標法3条2項,使用による識別力の獲得

 

 

※本稿の内容は、一般的な情報を提供するものであり、法律上の助言を含みません。

 

文責:弁護士・弁理士 飯田 圭(第二東京弁護士会)

本件に関するお問い合わせ先:k_iida@nakapat.gr.jp

 

 

 
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