◆判決本文
1.本願商標「TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.」(標準文字)は,「TAKAHIROMIYASHITA」部分と「TheSoloist.」部分との結合商標と容易に認識され,「TAKAHIROMIYASHITA」部分が「ミヤシタ(氏)タカヒロ(名)」を読みとする人の氏名として客観的に把握されることから,人の氏名を含む商標と認められる。
2.上記氏名の自然人が現存し,原告とは他人であり,その承諾を得ていないことから,本願商標は,商標法4条1項8号所定の「他人の氏名・・・を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」に該当する。人格的利益の保護という同号の趣旨並びに「氏名」及び「名称」には「雅号」,「芸名」,「筆名」及び「略称」と異なり「著名な」との限定が付されていない同号の規定文言から,同号所定の「他人の氏名」とは,その著名性や希少性等を要件としないものと解される。
1.商標法4条1項8号は,商標登録を受けることができない商標として「・・・他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号,芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」を規定するところ,判決要旨1は,本願商標を結合商標と認定し,その前半部分を人の氏名と把握し,これにより本願商標を人の氏名を含む商標と認定判断したものである。
2.判決要旨2は,上記氏名の自然人が現存し,原告とは他人であり,その承諾を得ていないことから,本願商標は,商標法4条1項8号所定の「他人の氏名・・・を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」に該当すると認定判断しつつ,同号所定の「他人の氏名」とは,同号の趣旨及び文理から,その著名性や希少性等を要件とするものではないと解したものである。かかる解釈は,反対説(網野誠「商標[第6版〕」(平14,有斐閣)338頁)もあるものの,従前の裁判例(知財高判平20・9・17(平20(行ケ)10142号)裁判所ウェブサイト〔霊友会事件〕等)に合致するものである。
1.本願商標が人の氏名を含む態様のものであるか否かについて
「本願商標については,ローマ字表記による『TAKAHIROMIYASHITA』の文字部分(前半部分)がその余の部分と結合された構成を有していると容易に認識し得るものであるといえる。
・・・本願商標の構成のうち『TAKAHIROMIYASHITA』の文字部分は,『ミヤシタ(氏)タカヒロ(名)』を読みとする人の氏名として客観的に把握されるものであり,本願商標は『人の氏名』を含む商標であると認められる。」
2.商標法4条1項8号該当性について
【Keywords】結合商標,商標法4条1項8号、他人の氏名、著名性、希少性、人格的利益
※本稿の内容は、一般的な情報を提供するものであり、法律上の助言を含みません。
文責:弁護士・弁理士 飯田 圭(第二東京弁護士会)
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