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【商標法★】「Scrum Master」の標準文字を横書きしてなる登録商標について,第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,教育訓練研修,資格検定試験の企画・運営又は実施,セミナーの企画・運営又は開催」等の指定役務の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり,取引者・需要者によって当該指定役務に使用された場合に役務の質を表示したものと一般に認識されるものであるから,商標法3条1項3号に該当する,と判断して,無効審判における一部維持審決を一部取り消した事例

2022年07月04日

知財高判令和4年5月19日(令和3年(行ケ)第10100号)(大鷹裁判長)

 

◆判決本文
 

【判決要旨】

1.商標法3条1項3号の趣旨及び判断基準について

商標法3条1項3号の趣旨は,同号所定の商標が,指定商品・役務の特性を表示記述し,取引に際し必要適切な表示として何人も使用を欲するため,独占適応性を欠くとともに,一般的に使用され,多くの場合自他商品・役務の識別力を欠くことにある。そうすると,同号に該当するためには,商標が指定商品・役務の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり,取引者・需要者によって当該商品・役務に使用された場合に,将来を含め,商品・役務の質を表示したものと一般に認識されれば足り,必ずしも当該商標が現実に当該商品・役務に使用されていることを要しない。

 

2.本件商標による商標法3条1項3号該当性について

本件商標の登録査定時に,「Scrum」及び「Scrum Master」の各語は,コンピュータ,IT関連の分野にて,アジャイルソフトウェア開発の手法のーつを表すもの及びかかる「Scrum」での役割のーつを表すものとして認識されていたものと認められる。また,「マスター」(master)の語の一般的な意味からすると,「Scrum Master」の語から,アジャイルソフトウェア開発の手法のーつである「Scrum」を修得した者などの観念をも生ずるものと認められる。そうすると,本件商標は,教育訓練,研修会及びセミナー等に使用された場合,取引者,需要者にて,当該教育訓練等がアジャイルソフトウェア開発の手法の一つである「Scrum」を修得することや「Scrum」における特定の役割に関する教育訓練等であることを示したものと理解されるものであるから,かかる役務の質(内容)を表示したものとして一般に認識されるものと認められる。そして,本件商標は,標準文字で構成され,「Scrum Master」の文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから,商標法3条1項3号に該当するものと認められる。

これに対し,本件審決は,「Scrum Master」が商品の品質及び役務の質等を直接的に表すものとして一般に使用されておらず,また,取引者,需要者が「Scrum Master」を商品の品質及び役務の質等として認識するとみるべき特段の事情もないとして,商標法3条1項3号に該当しないと判断したが,かかる本件審決の判断はその前提において誤りがある。

 

【コメント】

1.判決要旨1は,商標法3条1項3号の趣旨及び判断基準について,従前の判例(最判昭54・4・10民集126号507号〔ワイキキ事件〕)及びこれに基づく多数の下級審裁判例(知財高判平26・5・14(平25(行ケ)10341号)〔オタク婚活事件〕,知財高判平26・8・6(平26(行ケ)10056号)〔ネットワークおまかせサポート事件〕,知財高判平27・9・16(平27(行ケ)10061号)〔納棺士事件〕,知財高判平27・9・16(平27(行ケ)10062号)〔湯灌士事件〕,知財高判平27・11・30(平27(行ケ)10152号)〔肉ソムリエ事件〕,知財高判令4・1・25(令3(行ケ)10113号)〔睡眠コンサルタント事件〕等)と同様に判示しつつ,特に本件審決による商標法3条1項3号不該当との判断との関係において、必ずしも当該商標が現実に当該商品・役務に使用されていることを要しないと判示したものである。

 

2.判決要旨2は,判決要旨1を本件にあてはめて,本件商標が商標法3条1項3号に該当する,と認定判断した一方,本件商標が商品の品質及び役務の質等を直接的に表すものとして一般的に使用されているかどうか等それ自体を問題として同号不該当と判断した本件審決は判決要旨1に照らしてその前提において誤りがあるとしたものである。

 

3.なお,近年,下表の通り,本件以外にも,被告株式会社アークによる同様の標章及び指定商品・役務に関する同様の多数の商標登録又はその出願に対し,同様に商標法3条1項3号等を理由に多数の拒絶・無効又は取消との判断が下されている。
 

標章 査定・審決・決定 拒絶・無効・取消理由
AgileScrum(標準文字) 令和1年8月15日拒絶査定 商標法3条1項3号等
AgileScrumFoundation(標準文字) 令和1年8月15日拒絶査定 商標法3条1項3号等
AgileFoundation(標準文字) 令和1年8月27日拒絶査定 商標法3条1項3号等
ScrumCoach(標準文字) 令和1年8月29日拒絶査定 商標法3条1項3号等
ScrumProductOwner(標準文字) 令和1年8月29日拒絶査定 商標法3条1項3号等
ScrumFoundation(標準文字) 令和1年8月30日拒絶査定 商標法3条1項3号等
Sprint Master(標準文字) 令和1年8月30日拒絶査定 商標法3条1項3号等
AgileCoach(標準文字) 令和1年9月11日拒絶査定 商標法3条1項3号等
Python Foundation(標準文字) 令和2年5月29日拒絶査定 商標法3条1項3号等
Python Master(標準文字) 令和2年5月29日拒絶査定 商標法3条1項3号等
Python Expert(標準文字) 令和2年5月29日拒絶査定 商標法3条1項3号等
Scrum(標準文字) 令和3年7月21日一部無効審決 商標法3条1項3号等
Scrum Master(標準文字) 令和3年7月21日一部無効審決(本件審決) 商標法3条1項3号等
Agile(標準文字) 令和3年10月4日一部取消決定 商標法3条1項3号
Python(標準文字) 令和4年4月12日取消審決 商標法50条

 

【判決の抜粋】

1.商標法3条1項3号の趣旨及び判断基準について

「商標法3条1項3号が、『その役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標』について商標登録の要件を欠くと規定しているのは、このような商標は、指定役務との関係で、その役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他役務の識別力を欠くものであることによるものと解される。

そうすると、商標が、指定役務について役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというためには、商標が指定役務との関係で役務の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、当該商標が当該指定役務に使用された場合に、取引者、需要者によって、将来を含め、役務の質を表示したものとして一般に認識されるものであれば足りるものであって、必ずしも当該商標が現実に当該指定役務に使用されていることを要しないと解される。」

 

2.本件商標による商標法3条1項3号該当性について

(1)「本件商標の登録査定時において、『Scrum』の語は、コンピュータ、IT関連の分野において、アジャイルソフトウェア開発の手法のーつを表すものとして認識され、また、『Scrum Master』の語は、同分野において、アジャイルソフトウェア開発の手法のーつである『Scrum』における役割のーつを表すものとして認識されていたものと認められる。

 また、『マスター』(master)の語は、一般に、『あるじ。長。支配者』、『修得すること。熟達すること』等…の意味を有することからすると、『Scrum Master』の語からは、アジャイルソフトウェア開発の手法のーつである『Scrum』を修得した者、『Scrum』に熟達した者などの観念をも生ずるものと認められる。

 そうすると、本件商標が本件指定役務に含まれる『教育訓練、研修会及びセミナー等』に使用された場合には、取引者、需要者は、当該教育訓練等がアジャイルソフトウェア開発の手法の一つである『Scrum』を修得することや、『Scrum』における特定の役割に関する教育訓練等であることを示したものと理解するものといえるから、本件商標は、かかる役務の質(内容)を表示したものとして一般に認識されるものと認めるのが相当である。

 そして、本件商標は、標準文字で構成されており、『Scrum Master』の文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるといえるから、本件商標は、本件指定役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(商標法3条1項3号)に該当するものと認められる。」

(2)これに対し、「本件審決は、『Scrum Master(スクラムマスター)』に特化した研修やセミナー等に関する証拠は限定的である上、その具体的な内容についての説明や当該研修やセミナー等の開催規模や開催頻度等の具体的な証拠はなく、また、『Scrum Master(スクラムマスター)』の認定制度の有資格者数もさほど多いとはいえないから、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第41類の教育訓練、研修会及びセミナー等に関する役務との関係においては、『Scrum Master(スクラムマスター)』を内容とする役務であることを理解させるものとはいい難いと述べた上で、本件商標である『Scrum Master』の文字が、商品の品質及び役務の質等を直接的に表すものとして一般に使用されているとまではいえず、また、本件商標に接する取引者、需要者が、本件商標を商品の品質及び役務の質等として認識するとみるべき特段の事情も見いだせないとして、本件商標は、本件指定役務を含む本件商品・役務以外の指定商品及び指定役務について商標法3条1項3号に該当しない旨判断した。

 しかしながら、前記①で説示したとおり、本件商標が、本件指定役務について役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというためには、本件商標が本件指定役務との関係で役務の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本件商標が本件指定役務に使用された場合に、本件商標の取引者、需要者によって、将来を含め、役務の質を表示したものとして一般に認識されるものであれば足りるものであつて、必ずしも本件商標が現実に本件指定役務に使用されていることを要しないと解されるから、本件審決の上記判断は、その前提において誤りがある。」

 

【Keywords】商標法3条1項3号,独占適応性,自他商品・役務識別力,取引の実情,アジャイルソフトウェア開発手法,Scrum,スクラム,Scrum Master,スクラムマスター,株式会社アーク
 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
 

文責:弁護士・弁理士 飯田 圭(第二東京弁護士会)

本件に関するお問い合わせ先:k_iida☆nakapat.gr.jp (☆を@に読み換えてください。)

 
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