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【商標法★】「農口」の標準文字からなる登録商標の商標権者である農口酒造株式会社(旧商号山本酒造本店株式会社)が草書体又は楷書体で「農口」の文字を縦書きしてなる商標を指定商品「日本酒」に使用した事案において,日本酒愛好家間で知名度が高い杜氏であり,従前同社の杜氏であった原告農口尚彦の請求に係る,楷書体で「農口尚彦研究所」の文字を縦書きしてなる引用商標に基づく,取消審判における棄却審決について,商標権者が故意に出所の混同又は品質の誤認を生ずる登録商標と類似する商標の使用をした場合に当該商標登録を取り消す旨を規定する商標法51条1項該当性を否定して,維持した事例

2021年06月16日

知財高判令和2年12月23日(令和2年(行ケ)第10050号)(大鷹裁判長)

 

◆判決本文

 

【判決要旨】

1.楷書体で「農口尚彦研究所」の文字を縦書きしてなる引用商標の周知性について

引用商標の周知性は,商品「日本酒」の需要者である一般消費者間で認められる必要があるところ,本件審決時に,酒蔵「農口尚彦研究所」及び「農口尚彦研究所」の日本酒は,日本酒愛好家間では相当程度認識されていたものと認められるものの,一般消費者間で広く認識されていたものとは認められず,ましてや引用商標が一般消費者間で原告の業務に係る商品「日本酒」を表示するものとして広く認識されていたものとは認められない。

【引用商標の使用例:判決書別紙2より引用】

 

2.商標権者使用の草書体又は楷書体で「農口」の文字を縦書きしてなる商標(本件使用商標1又は2)と引用商標との類否について

本件使用商標1及び2は,外観及び称呼が異なり,観念も相違するから,「日本酒」に使用された場合,引用商標に類似するものとは認められない。
 

     

 

      

【本件使用商標1の使用例1:判決書別紙1より引用】

 

【本件使用商標2の使用例2:判決書別紙1より引用】

 
3.出所の混同について

被告が本件使用商標1及び2を商品「日本酒」に使用した場合に原告及び「農口尚彦研究所」と組織的又は経済的な関係を有する者の業務に係る商品と混同を生じさせるおそれがあるから,商標法51条1項に該当するとの原告の主張は,引用商標が一般消費者間で原告の業務に係る商品「日本酒」を表示するものとして広く認識されていたものとは認められず,本件使用商標1及び2が引用商標に類似するものとは認められないことから,その前提において,採用することができない。

 

4.品質の誤認について

商品「日本酒」につき商標法51条1項にいう「品質」は特定の杜氏が関与して製造されたことをも含むものの,本件使用商標1及び2からは原告の観念が生じないため,本件使用商標1及び2を付した日本酒は原告が杜氏として製造したものであるとの誤認を生じさせるものとは認められない。

 

【コメント】

1.商標法51条1項は,商標権者が故意に出所の混同又は品質の誤認を生ずる登録商標と類似する商標の使用をした場合に当該商標登録を取り消す旨を規定するところ,かかる出所の混同の前提として,裁判例(知財高判平成22年1月13日判時2095号120頁,知財高判平成21年12月10日判時2089号134頁等)及び学説(田村善之「商標法〔第2版〕」397頁,工藤莞司「商標法の解説と裁判例」336頁等)上,その相手方の業務に係る商標の周知著名性の有無・程度が重視される。この点,判決要旨1は, 原告(取消審判請求人)により特定・主張された引用商標の周知性をその商品(日本酒)の需要者である一般消費者との関係で否定したものである。

 

2.上記出所の混同の前提として,裁判例(知財高判平成24年12月26日判時2191号126頁,知財高判平成21年12月10日判時2089号134頁,知財高判平成21年2月24日判時2043号127頁等)上,その相手方の業務に係る商標と商標権者使用商標との類似性が必要とされる。この点,判決要旨2は,原告(取消審判請求人)により特定・主張された引用商標と被告(商標権者)により使用された本件使用商標1及び2との類似性を否定したものである。

 

3.判決要旨3は,判決要旨1及び2により,上記出所の混同の前提を欠くと判断したものである。

 

4.判決要旨4は,本件使用商標1及び2それ自体は,原告の観念を生じないため,日本酒に原告が杜氏として製造したものとの品質の誤認を生じさせないと認定判断したものである。もっとも,本判決は,さらに,被告の日本酒の瓶に貼付されたラベルの左側における「杜氏 農口尚彦」の表示に接した需要者は,原告が杜氏として酒造りをした日本酒であると認識する旨を判示しており,かかる判示によれば,原告が杜氏として酒造りをしていない被告の日本酒の瓶に貼付されたラベルの左側に「杜氏 農口尚彦」の表示が行われる場合には,不正競争防止法2条1項20号所定の品質誤認惹起行為への該当性が問題になり得るものと考えられる。

 

【判決の抜粋】

1.引用商標の周知性について

(1)「商品『日本酒』は,嗜好品であり,その需要者は,一般消費者であるから,引用商標が周知であるというためには,需要者である一般消費者の間で,引用商標が原告の業務に係る「日本酒」を表示するものとして広く認識されている必要がある。」

(2)「雑誌,新聞,ウェブサイト等の掲載状況から,本件審決時において,酒蔵『農口尚彦研究所』及び『農口尚彦研究所』の日本酒は,日本酒の銘柄等に関心の高い日本酒愛好家の間では,相当程度認識されていたものと認められるものの,一般消費者の間で広く認識されていたものと認めることはできず,ましてや,引用商標が原告の業務に係る商品『日本酒』を表示するものとして,広く認識されていたものと認めることはできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。」

 

2.本件使用商標1及び2と引用商標との類否について

(1)「本件使用商標1及び2と引用商標は,外観及び称呼が異なり,観念においても相違することからすると,本件使用商標1及び2と引用商標が本件商標の指定商品中の『日本酒』に使用された場合,その出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものと認められないから,本件使用商標1及び2が引用商標に類似する商標であると認められない。」

(2)「本件使用商標1及び2の『農口』の文字は,別紙1記載の使用例1及び2のとおり,ラベルの中央に大きく表示され,他の文字部分等から明確に分離して観察することができ,独立した商品の出所識別標識として認識することができること(前記ア(ア)a)に照らすと,本件使用商標1及び2と引用商標の類否を判断するに当たり,引用商標を付した商品のラベル全体と本件使用商標1及び2のラベル全体を対比すべき理由はない。」

 

3.出所の混同について

「原告は,引用商標は,周知又は著名な商標であり,本件使用商標1及び2は引用商標と類似の商標であって,被告が本件使用商標1及び2を本件商標の指定商品の『日本酒』に使用した場合,原告及び『農口尚彦研究所』と組織的又は経済的な関係を有する者の業務に係る商品と混同を生じさせるおそれがあるばかりでなく,現実に原告及び『農口尚彦研究所』の業務に係る商品と混同を生じているから,被告による本件使用商標1及び2の使用は,商標法51条1項に該当し,これと異なる本件審決の判断は誤りである旨主張する。

しかしながら,引用商標は,本件審決時において,原告の業務に係る商品『日本酒』を表示するものとして,需要者の間で広く認識されていたものと認められないこと,本件使用商標1及び2と引用商標が類似するものと認められないことは,前記(1)及び(2)のとおりであるから,原告の上記主張は,その前提において,採用することができない。」

 

4.品質の誤認について

(1)「商標法51条1項にいう『商品の品質』には,商品が日本酒(清酒)の場合,原料,製造方法等の違いによって分類される特定名称や特定の杜氏が関与して製造された商品であることをも含むものと解される。」

(2)「しかるところ,前記1(2)ア(ア)bのとおり,本件使用商標1及び2から,特定の観念を生じるものではなく,原告の観念を生じるものでもないから,本件使用商標1及び2を付した日本酒を原告が杜氏として製造した日本酒であるとの誤認を生じさせるものと認めることはできない。」

(3)「もっとも,被告の日本酒の瓶に貼付されたラベルには,別紙1記載の使用例1及び2のとおり,本件使用商標1又は2の左側に『杜氏 X』の表示があること(前記1(2)ア(ア)a)に鑑みると,上記ラベルに接した需要者は,『杜氏X』の表示から原告が杜氏として酒造りをした日本酒であると認識するものと認められるが,そのことは,『杜氏 X』の表示から生じる認識であって,本件使用商標1及び2自体から生じた認識あるいは誤認であるということはできない。」

 

【Keywords】商標法51条1項,商標登録取消審判,商標の周知性,商標の類否,出所の混同,品質の誤認,日本酒,山廃仕込み,杜氏,農口尚彦,見砂酒造株式会社,株式会社農口尚彦研究所,山本酒造本店株式会社,農口酒造株式会社

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。

 

文責:弁護士・弁理士 飯田 圭(第二東京弁護士会)

本件に関するお問い合わせ先:k_iida@nakapat.gr.jp

 

 
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