◆判決本文
1.本件商標の商標法4条1項7号該当性について
本件商標の登録出願は,フランチャイズ契約解除4日後に元フランチャイジーが従前の名称の継続使用でフランチャイザーの顧客吸引力を継続利用すべく行ったものであり,信義誠実の原則に大きく反する。のみならず,フランチャイザーの商標未登録を奇貨として,フランチャイズ事業を妨害する目的又はフランチャイザーに本件商標を高額で買い取らせる不当な目的で行われたものである。
かかる登録出願の目的や経緯等に鑑み,本件商標の出願登録は,先願主義を悪用し,著しく社会的相当性を欠くものであり,これを許せば,商標を保護することにより商標の使用する者の業務上の信用を図り,もって産業の発達に寄与し,あわせて需要者の利益を保護することを目的とする商標法の目的に反しかねない。したがって,本件商標は,公の秩序に反するものであり,商標法4条1項7号に該当する。
1.いわゆる悪意の出願ないし剽窃的な出願に対する「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」を不登録事由と規定する商標法4条1項7号の適否について,従前の同号の適用拡大の実務傾向に対し,近年,裁判例(知財高判平20・6・26〔コンマー/CONMAR事件〕等)及び学説(麻生典「判批」特許研究62号46頁等)上,適用を制限する見解が有力になっている。かかる状況の下で,判決要旨1は,なお,同号の適用を肯定した裁判例(知財高判平27・8・30〔のらや事件〕及び知財高判令元・10・23〔仙三七事件〕)と同様の事案において,同様に同号の適用を肯定したものである。
1.本件商標の商標法4条1項7号該当性について
「本件商標の登録出願は、元フランチャイジーである原告が、被告から本件解除をされたわずか4日後に行ったものであり、これまでと同様の名称を使用することにより被告の顧客吸引力を利用し続けようとしたものと評価せざるを得ず、元フランチャイジーとして遵守すべき信義誠実の原則に大きく反するものであるのみならず、『スマホ修理王』の名称でフランチャイズ事業を営んでいる被告がその名称に係る商標登録を経ていないことを奇貨として、被告によるフランチャイズ事業を妨害する加害目的又は本件商標を高額で被告に買い取らせる不当な目的で行われたものというべきである。
このような本件商標の登録出願の目的や経緯等に鑑みれば、本件商標の出願登録は、商標制度における先願主義を悪用するものであり、社会通念に照らして著しく社会的相当性を欠く事情があるというべきであって、こうした商標の登録出願及び設定登録を許せば、商標を保護することにより商標の使用する者の業務上の信用を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする商標法の目的に反することになりかねないから、本件商標は、公の秩序に反するものであるというべきであって、商標法4条1項7号に該当する。」
【Keywords】悪意の出願,剽窃的な出願,商標法4条1項7号,公序良俗,社会的相当性,スマホ修理王
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文責:弁護士・弁理士 飯田 圭(第二東京弁護士会)
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