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【商標法★★】「マツモトキヨシ」の歌詞を含む音商標が商標法4条1項8号の「他人の氏名」を含む商標に当たらないと判断され,これに当たると判断した特許庁の拒絶審決が取り消された事例

2021年09月27日

知財高判令和3年8月30日(令和2年(行ケ)第10126号)(大鷹一郎裁判長)

 

◆判決本文

 

【判決要旨】

1.商標法4条1項8号の「他人の氏名」の意義について

音商標を構成する音と同一の称呼の氏名の者が存在するとしても,取引の実情に照らし,商標登録出願時において,音商標に接した者が,普通は,音商標を構成する音から人の氏名を連想,想起するものと認められないときは,当該音は一般に人の氏名を指し示すものとして認識されるものといえないから,当該音商標は,商標法4条1項8号の「他人の氏名」を含む商標に当たるものと認めることはできない。

 
2.あてはめ

本願商標は,下記のとおり,五線譜に表された音楽的要素及び「マツモトキヨシ」の片仮名で記載され,「マツモトキヨシ」と称呼される歌詞の言語的要素からなる音商標である。

【判決書別紙より引用】

 
そして,「マツモトキヨシ」の表示は,本願商標の登録出願当時(2017年1月30日),ドラッグストア「マツモトキヨシ」の店名や株式会社マツモトキヨシ,原告又は原告のグループ会社を示すものとして全国的に著名であったこと,「マツモトキヨシ」という言語的要素を含む本願商標と同一又は類似の音は,テレビコマーシャル及びドラッグストア「マツモトキヨシ」の各小売店の店舗内において使用された結果,ドラッグストア「マツモトキヨシ」の広告宣伝(CMソングのフレーズ)として広く知られていたことが認められる。

かかる取引の実情の下においては,本願商標の登録出願当時,本願商標に接した者が,本願商標の構成中の「マツモトキヨシ」という言語的要素からなる音から,通常,容易に連想,想起するのは,ドラッグストアの店名としての「マツモトキヨシ」,企業名としての株式会社マツモトキヨシ,原告又は原告のグループ会社であって,普通は,「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」,「松本潔」,「松本清司」等の人の氏名を連想,想起するものと認められないから,当該音は一般に人の氏名を指し示すものとして認識されるものとはいえない。

したがって,本願商標は,商標法4条1項8号の「他人の氏名」を含む商標に当たるものと認めることはできない。

 

【コメント】

1.近年,審査実務及び裁判例(知財高判令和元年8月7日平成31年(行ケ)第10037号〔KENKIKUCHI事件〕,知財高判令和2年7月29日令和2年(行ケ)第10006号〔TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.事件〕等)上,特にデザイナー個人の氏名をブランドとすることが多いファッション関連分野において,自己氏名商標が,その構成態様を工夫(西村雅子「ファッション分野での知財マネジメントに関する一考察」パテント67巻15号55頁参照)しても,著名性等を要件・要素としない商標法4条1項8号の「他人の氏名」を含む商標に当たるものとして,出願拒絶されることが多く,学説(渕麻依子「他人の氏名を含む商標について商標登録が認められなかった事例」特許研究71号66頁,中川隆太郎「自己氏名商標における『他人の氏名』の再検討-氏名権の保護とブランド名選択の自由の適正なバランス」IPジャーナル16号21頁等)上,「氏名」に関する「他人」の人格的利益の保護(最判平成16年6月8日〔LEONARD KAMHOUT事件及び最判平成17年7月22日〔国際自由学園事件〕参照)のみを偏重するものとして,批判的に検討されていた。

かかる状況の下で,判決要旨1は,商標法4条1項8号の「他人の氏名」を含む商標に当たるか否かは,商標の物理的な構成態様それ自体のみではなく,商標に接する者の認識によって判断すべきとする通説的見解(金井重彦ほか編「商標法コンメンタール」103頁〔茶園成樹〕)によりつつ,特に音商標について,構成音と同一の称呼の氏名の者が存在しても,音商標に接した者が,普通は,構成音から人の氏名を連想,想起しないときは,構成音は一般に人の氏名を指し示すものと認識されないから,音商標は,同号の「他人の氏名」を含む商標に当たらない旨を判示したものであり,その直接の射程範囲は兎も角,その趣旨は,音商標以外の商標にも,妥当し得るものと考えられる。
 

2.判決要旨2は,判決要旨1を前提に,あてはめとして,本件の取引の実情の下,登録出願当時,音商標である本願商標に接した者は,「マツモトキヨシ」の構成音から,通常,ドラッグストアの店名としての「マツモトキヨシ」,企業名としての株式会社マツモトキヨシ等を連想,想起し,普通は,人の氏名を連想,想起しないため,本願商標は,商標法4条1項8号の「他人の氏名」を含む商標に当たらないと判断したものであり,個別具体的な事例判断として,上記問題状況を類型的かつ抜本的には解決し難いものの,なお相応の意義を有するものと考えられる。

 

【判決の抜粋】

1.商標法4条1項8号の「他人の氏名」の意義について

「商標法4条1項8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標は,その承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人は,自らの承諾なしに,その氏名,名称等を商標に使われることがないという人格的利益を保護することにあるものと解される(最高裁平成15年(行ヒ)第265号同16年6月8日第三小法廷判決・裁判集民事214号373頁,最高裁平成16年(行ヒ)第343号同17年7月22日第二小法廷判決・裁判集民事217号595頁参照)。

このような同号の趣旨に照らせば,音商標を構成する音が,一般に人の氏名を指し示すものとして認識される場合には,当該音商標は,『他人の氏名』を含む商標として,その承諾を得ているものを除き,同号により商標登録を受けることができないと解される。

また,同号は,出願人の商標登録を受ける利益と他人の氏名,名称等に係る人格的利益の調整を図る趣旨の規定であり,音商標を構成する音と同一の称呼の氏名の者が存在するとしても,当該音が一般に人の氏名を指し示すものとして認識されない場合にまで,他人の氏名に係る人格的利益を常に優先させることを規定したものと解することはできない。

そうすると,音商標を構成する音と同一の称呼の氏名の者が存在するとしても,取引の実情に照らし,商標登録出願時において,音商標に接した者が,普通は,音商標を構成する音から人の氏名を連想,想起するものと認められないときは,当該音は一般に人の氏名を指し示すものとして認識されるものといえないから,当該音商標は,同号の『他人の氏名』を含む商標に当たるものと認めることはできないというべきである。」

 
2.あてはめ

(1)「本願商標は,別紙記載1のとおり,五線譜に表された音楽的要素及び『マツモトキヨシ』の片仮名で記載された歌詞の言語的要素からなる音商標である。本願商標の構成中の言語的要素からなる音は,『マツモトキヨシ』と称呼される。

また,本願の願書に添付された本件音声ファイル(甲40)には,リズム,メロディー等の音楽的要素に乗せて男性の声の音色で『マツモトキヨシ』という言語的要素を発する音が収録されている。」
 
(2)本件において,「①株式会社マツモトキヨシが昭和62年にドラッグストア『マツモトキヨシ』の店舗展開を開始した後,平成29年1月30日に本願の出願がされるまでの約30年以上にわたり,株式会社マツモトキヨシ,原告及び原告のグループ会社が,『マツモトキヨシ』の表示をドラッグストアの店名又は自己の企業名として継続して使用したこと,②同年3月31日現在で,ドラッグストア『マツモトキヨシ』の店舗数は,全国45都道府県で1555店舗,原告のグループ会社のメンバーズカード(ポイントカード)の会員数は約2440万人に達しており,また,『マツモトキヨシ』のブランドは,インターブランド社による2016年度及び2017年度のブランド価値評価ランキングでドラッグストアとして日本でナンバーワンブランドの評価を獲得したこと,③平成8年から開始されたドラッグストア『マツモトキヨシ』のテレビコマーシャルでは,女性又は男性の声の音色,複数の声の斉唱で本願商標と同一又は類似の音をフレーズに含むコマーシャルソングが相当数使用され,テレビコマーシャルが放映された以降においても,本願商標と同一又は類似の音がドラッグストア『マツモトキヨシ』の各小売店の店舗内において使用されていたことが認められる。

これらの認定事実によれば,本願商標に関する取引の実情として,『マツモトキヨシ』の表示は,本願商標の出願当時(出願日平成29年1月30日),ドラッグストア『マツモトキヨシ』の店名や株式会社マツモトキヨシ,原告又は原告のグループ会社を示すものとして全国的に著名であったこと,『マツモトキヨシ』という言語的要素を含む本願商標と同一又は類似の音は,テレビコマーシャル及びドラッグストア『マツモトキヨシ』の各小売店の店舗内において使用された結果,ドラッグストア『マツモトキヨシ』の広告宣伝(CMソングのフレーズ)として広く知られていたことが認められる。」
 
(3)かかる「取引の実情の下においては,本願商標の登録出願当時(出願日平成29年1月30日),本願商標に接した者が,本願商標の構成中の『マツモトキヨシ』という言語的要素からなる音から,通常,容易に連想,想起するのは,ドラッグストアの店名としての『マツモトキヨシ』,企業名としての株式会社マツモトキヨシ,原告又は原告のグループ会社であって,普通は,『マツモトキヨシ』と読まれる『松本清』,『松本潔』,『松本清司』等の人の氏名を連想,想起するものと認められないから,当該音は一般に人の氏名を指し示すものとして認識されるものとはいえない。

したがって,本願商標は,商標法4条1項8号の「他人の氏名」を含む商標に当たるものと認めることはできないというべきである。」

 

【Keywords】音商標, マツモトキヨシ, 商標法4条1項8号, 他人の氏名

 

※本稿の内容は, 一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。

 

文責:弁護士・弁理士 飯田 圭(第二東京弁護士会)

本件に関するお問い合わせ先:k_iida@nakapat.gr.jp

 
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