【商標・審決】不服2024-5257
*引用商標に、『The』を付けて図柄化した本願商標が、非類似と判断された。
(審決抜粋)
ア 本願商標について
本願商標は、別掲1のとおり、図形を左側に配し、当該図形の右側に顕著に大きく「THE CLASSICA」の文字を表し、その下部に小さく「omotesando」の文字を表してなるところ、各構成部分は、間隔を空けて配置され、構成態様の差異(図形と文字、文字の大きさ)もあるから、それぞれが視覚上分離、独立した印象を与えるものである。
そして、本願商標の構成中、図形部分は、それ自体としては何らかの事物を具体的に描いてなるとは看取できず、独立した称呼、観念は生じない。
また、本願商標の構成中、「omotesando」の文字部分は、「明治神宮の表参道。また、その周辺の地」である「表参道」(「広辞苑第七版」株式会社岩波書店)のローマ字表記であって、役務の提供場所などの表示に相当する。そうすると、当該文字部分は、他の図形部分や文字部分とは段を異にして、小さく付記的に表示されていることも相まって、独立した出所識別標識としての称呼及び観念が生じるものではない。
他方、本願商標の構成中、顕著に大きく表された「THE CLASSICA」の文字部分は、同じ書体で、「THE」及び「CLASSICA」それぞれの頭文字をやや大きく、それ以外の文字は同じ大きさで、外観上まとまりよく一体的に表されているものであり、当該文字部分に相応して生じる「ザクラシカ」の称呼は無理なく一連に称呼し得るというべきである。
また、「THE CLASSICA」の文字部分のうち、「THE」の文字は英語の定冠詞であり、他方、「CLASSICA」の文字は「伝統のある試合」等の意味を有するイタリア語(「伊和中辞典第2版」株式会社小学館)であるが、我が国において一般に広く知られているとはいい難く、特定の意味を有しない一種の造語として認識されるものである。そして、これらを組み合わせた当該文字部分全体としても、辞書等に載録されている既成の語ではなく、その指定役務との関係で直ちに特定の意味合いを想起させるともいい難いから、造語として看取されるものである。
してみれば、当該文字部分は、上記の構成、称呼からすれば、殊更に「CLASSICA」の文字部分のみが着目されるというよりは、当該文字部分の構成全体をもって、一体不可分のものとして認識し、把握されるとみるのが相当である。
そうすると、本願商標は、その構成中「THE CLASSICA」の文字部分が、取引者、需要者に対し、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められ、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められるから、当該文字部分を分離、抽出し、これを要部として、他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは許されるというべきである。
以上を踏まえると、本願商標は、その要部に相応して、「ザクラシカ」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標1について
引用商標1は、別掲2のとおり、「クラシカ」及び「CLASSICA」の文字を普通に用いられる方法で上下二段に表してなるところ、その構成中、上段の「クラシカ」の文字は、下段の欧文字の読みを表したものと無理なく理解されるものである。
そして、「CLASSICA」の文字は、特定の意味を有しない一種の造語として認識されるというのが相当である。
したがって、引用商標1は、「クラシカ」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
ウ 本願商標と引用商標1との類否について
本願商標及びその要部と引用商標1を比較すると、外観においては、図形の有無やその構成文字において、明らかな差異があるから、容易に判別することができる。
そして、称呼においては、構成音数及び構成音が異なるから聴別は容易である。
また、観念においては、いずれも特定の観念は生じないから、比較できない。
そうすると、本願商標と引用商標1は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において判別及び聴別は容易だから、両商標は非類似の商標というべきである。
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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