【商標】令和5年(行ケ)10067<本多> 結合商標の分離・要部観察
⇒登録商標のうち「O!O!」部分を、引用商標と比較して、類似(商標法4条1項11号)と判断した。(維持審決取消)
登録商標「5252byO!O!」(個人)
引用商標「OIOI」(丸井)
(判旨抜粋)
本件商標は、前記第2の1(1)のとおり、『5252byO!Oi』の数字、欧文字及び感嘆符を黒色のゴシック体にて同じ大きさ、等しい間隔で一連に横書きしてなるものである。もっとも、このうち『by』という語は、一般に『by 〇〇〇』との用法により『商品や役務の出所が〇〇〇』であることを表す英語の前置詞として我が国において広く用いられ、親しまれていることや、『by』が小文字で書されていることからすると、本件商標は、全体として、『by』の後の『O!Oi』の部分を、独立して、見る者の注意を引くように構成されているといい得るものである。また、本件商標のうち『5252』の部分は単に数字を羅列するものであって格別の識別力を有しないのに対し、『O!Oi』の部分は、欧文字を用いながらも辞書等に載録される語ではない上、『オーオイ』又は『オーオーアイ』との称呼を生じ得るものではあるが、感嘆符を用いていることからその称呼も一様に定まるものではなく、丸と縦線とが交互に用いられている点において視覚的に際立った印象を与え、造語とも図形とも理解できる特徴的なものといえる。これらに加えて、上記のとおり、『商品や役務の出所が○○〇』であることを示すものとして『by〇〇〇』との用法が広く用いられ、親しまれていることからすると、『by』の後に配された『O!Oi』の部分は、本件商標の構成の中でも、出所識別標識として強く支配的な印象を与えるというべきである。そうすると、『O!Oi』の部分は、本件商標の一部分ではあるものの、商標全体の出所識別標識としての機能を果たしていると認められるから、この部分を本件商標の要部として抽出し、この部分(以下『本件要部』という。)だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許されるというべきである。
本件要部からは特段の観念を生じないのに対して、引用商標3からは『マルイのロゴマーク』との観念を生じるので、両者の観念は同一とはいい難い。
次に、本件要部からは『オーオイ』『オーオーアイ』の称呼を生じ得るのに対し、引用商標3からは『オーアイオーアイ』『オイオイ』及び『マルイ』の称呼を生じ得るところ、本件要部に『!』が含まれていることの関係で厳密には称呼が異なるものの、多くの音を共通にしており、相応に類似しているというべきである。
また、両者の外観についてみると、本件要部及び引用商標3は、いずれもゴシック体にて四つの文字又は記号を書してなり、1字目と3字目はいずれも『O』で共通している。2字目は『!』と『I』、4字目は『i』と『I』と異なる文字又は記号が使用されているが、いずれも1本の縦線又は1本の縦線とその延長線上にある点により構成される点において形状が類似している。加えて、各文字の字間を含めた配列も近似している。そうすると、両者の外観は、子細にみると異なる部分はあるが、時と場所とを異にする隔離的観察の下では、互いに相紛らわしいというべきである。
以上に加え、本件商標及び引用商標の各指定商品は、いずれもファッション・アパレル関連商品や一般消費者が身に付ける物であるから、その取引者、需要者には一般消費者が含まれるところ、本件要部からは特段の観念を生じず、本件要部及び引用商標3から生じ得る称呼は同一ではないが相応に類似している上、いずれも単一の確たる称呼が生じるといい難いことから、取引者、需要者にとってみれば称呼が出所識別標識として決め手とはなりにくいとうかがわれること、一般消費者は、アパレル・ファッションや身に付ける物の出所につき、主として対象商品やロゴマークの外観等に注目するとみられること等も総合すると、上記のとおり、引用商標3との関係で、称呼について相応に類似し、外観において互いに相紛らわしい本件要部を持つ本件商標は、その構成全体が引用商標3と同一ではないことを考慮しても、両商標が本件商標の各指定商品に使用された場合には、取引者、需要者が両者の出所を見誤る可能性は否定できず、その商品の出所において誤認混同が生じるおそれがあるものと認められる。
したがって、本件商標は、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、その商品に係る取引の実情を踏まえて全体的に考察すると、引用商標3に類似する商標と認められる。
【商標法★】結合商標の分離・要部観察により下記登録商標のうち「O!Oi」部分を下記引用商標と比較して、類似(商標法4条1項11号該当)と判断し、非類似(不該当)と判断した維持審決を取り消した事例
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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