東京地判令和6年(ワ)70106<國分>
*他人の特許につき通常実施権を設定する債務を履行できなかった。⇒解除成立。
(判旨抜粋)
特許権者の同意を得ることなく他人に通常実施権を許諾した場合であっても、契約締結後に特許権者から許諾を得ることは可能であるから、通常実施権を許諾する権限を有しない者が第三者に通常実施権を許諾した場合であっても、契約を締結した当事者間においてその契約の効力を直ちに否定する必要はない。
しかしながら、このような実施許諾契約は、他人の権利を目的とした契約といえるから、通常実施権を許諾する権限を有しないにもかかわらず、これを許諾した者は、民法559条及び561条に基づき、通常実施権者のために通常実施権を許諾する権限を取得すべき義務を負うものと解される。
本件においては、…本件契約は、原告が、被告に対し、本件各特許権について通常実施権を許諾することなどを約したものであるが、…本件特許権1は国土防災技術株式会社及び日本ソフケンの共有に係るものであり、本件特許権3は、両社と日本ミクニヤ株式会社の共有に係るものであることが認められる。そうすると、原告は、被告に対し、本件契約に基づく債務として、上記の共有者から被告のために通常実施権を許諾する権限を取得すべき債務…を負っていたものと解される。
しかしながら、…原告は、本件特許権2について、そ の単独の特許権者である日本ソフケンから専用実施権の設定を受けているものの、弁論の全趣旨によれば、本件特許権1及び3については、上記の共有者から被告のために通常実施権を設定する旨の許諾を得ていないものと認められる。したがって、原告には本件債務の不履行がある…。…
…原告による本件契約に係る債務不履行、被告による相当の期間を定めての履行の催告、その期間内に履行がされなかったこと及び解除の意思表示という、催告による解除の要件(民法541条本文)が充たされているから、本件契約の解除により、被告は本件許諾料の支払義務を負わない…。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-93560.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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