令和4年(ワ)70139、令和5年(ワ)70009『特許を受ける権利の確認請求』<中島>
指定国において国内移行手続を行わなかったため、取下擬制された国際特許出願に係る発明について、原告が特許を受ける権利を有することの確認を求める訴えが、確認の利益を欠くとして却下された。
「日本の職務発明性に基づき日本法で認められた権利」と「ドイツにおける職務発明性の帰属に基づく権利」は、それぞれ属地主義に基づき別個に取り扱われるべきものである。すなわち、たとえ日本の裁判所が本件発明が職務発明で原告に権利が帰属するとしても、ドイツでの手続においてそれがただちに承認されるわけではなく、ドイツ法の職務発明に関する規定で改めて判断されるべき性質の問題である。
(判旨抜粋)
「属地主義の原則によれば、我が国の職務発明の規定に基づく特許を受ける権利と、ドイツ法の職務発明の規定に基づく特許を受ける権利とは、それぞれ異なるものといえるから、仮に我が国の職務発明の規定に基づく特許を受ける権利が日本において認められたとしても、ドイツ法の職務発明の規定に基づく特許を受ける権利が必ずしもドイツにおいて承認されるものとはいえない。…
原告は、ドイツ法の職務発明の規定に基づき特許を受ける権利の確認を求めて、ドイツの裁判所に対し訴えを提起することができるのであるから、日本の裁判所に対し日本法に基づく特許を受ける権利の帰属の確認を求めるよりも、端的に、ドイツ の裁判所に対し直接ドイツ法に基づく特許を受ける権利の帰属の確認を求めるのが、本件における紛争の解決としては、より有効かつ適切であるといえる。」
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/853/092853_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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