『営業秘密管理指針』の改訂版が公表されました。
刑事事件の判決が多数引用されています。
<秘密管理性>
・名古屋地判令和4年3月18日(平成29年(わ)427)
「刑事上の措置においても、営業秘密該当性の要件は、不正競争防止法の平成15年改正の経緯等に照らしても、民事上の要件と同じものと解される」
複数の情報の総体としての情報については、組み合わせの容易性、取得に要する時間や資金等のコスト等を考慮し、保有者の管理下以外で一般的に入手できるかどうかによって判断する。
・知財高判令和2年(ネ)10066
秘密管理性は、従業員全体の認識可能性も含めて客観的観点から定めるべきものであり、従業員個々が実際にどのような認識であったか否かに影響されるものではない。
・知財高判平成22年(ネ)10039号、東京地判令和4年12月9日令和3(特わ)129
情報の性質に関して、当該営業秘密保有者にとって重要な情であり、当然に秘密として管理しなければならないことが従業員にとって明らかな場合には、そうした従業員の認識を活用した管理が許されて然るべきである。
・福岡高判令和6年(う)20
当該媒体に接触する者の限定に関して、従業員ごとに厳密に業務の必要性を考慮した上で限定することまでは求められるものではなく、業務上の必要性等から特定の部署で広くアクセス権限が付与されていたとしても、特定の従業員に限定されていたことに変わりはない。
<有用性>
・東京地判令和3年(特わ)129号、東京地判令和4年(特わ)2148
当該情報が、営業秘密を保有する事業者の事業活動に使用・利用されているのであれば、基本的に営業秘密としての保護の必要性を肯定でき、当該情報が公序良俗に反するなど保護の相当性を欠くような場合でない限り有用性の要件は充足される。なお、有用性の要件の判断に際しては、当該情報を不正に取得した者がそれを有効に活用できるかどうかにより左右されない。
・横浜地判令和3年7月7日平成30年(わ)1931
不正競争防止法が営業秘密を保護する趣旨は、不正な競争を防止し、競争秩序を維持するため、正当に保有する情報によって占め得る競争上の有利な地位を保護することにあり、進歩性のある特別な情報を保護することにあるとはいえないから、当該情報が有用な技術上の情報といえるためには、必ずしもそれが「予想外の特別に優れた作用効果」を生じさせるものである必要はない。
<非公知性>
・東京高判令和3年(う)1407
非公知の情報といえるための要件として「予想外の特別に優れた作用効果」を生じさせるものであることまでは要しない。
・名古屋高判令和2年(う)162
市販製品の解析により本件情報を知るためには、塗料メーカーの知見を駆使し、原料メーカーの協力を仰ぐなどする必要がある上、なお一定の期間を要するのであって、誰でも容易に知り得るわけではないことを理由に、非公知性を肯定した。
・大阪地判平成26年(ワ)11151、平成25年(ワ)13167
一般的に利用可能な技術手段であって、その費用も過大ではない成分分析を用いて、市場で流通している原告製品に用いられている合金の種類や配合比率を調べることが容易であることを理由に、非公知性を否定した。
★第27回 不正競争防止小委員会
「営業秘密管理指針」の主な改訂内容一覧
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/chiteki_zaisan/fusei_kyoso/027.html
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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