【論稿】商標権の譲渡後の従前の真正商品の並行輸入の可否-Converse並行輸入事件-(田村善之、知的財産法政策学研究 Vol.30(2010))
⇒知財高判平成21年(ネ)10058<控訴審>、東京地判平成18年(ワ)15580、何れも商標権侵害(並行輸入の抗弁、権利濫用の抗弁不成立)
①被告は、米国商標権者であったConverseの真正商品を並行輸入していた。
②Converseが商標権を伊藤忠商事に譲渡し、伊藤忠商事が被告を訴えた。
⇒『同一人性』及び『品質管理性』を充たさないから、フレッドペリー並行輸入の抗弁不成立(権利濫用の抗弁も不成立)
③被告は、真正商品を並行輸入していたのに、商標権者が変わったことで、商標権侵害となってしまった!!
※東京地判昭和59.12.7【LACOSTE】事件では、商標権者とライセンサーとの資本的な繋がりと、ライセンサーと外国拡布者とのライセンス関係という連鎖を手掛かりに同一の出所の範囲と認めた。
⇒Converse事件でも、伊藤忠が新Converseの株式を5%保有していること、また、未だ日本国内では旧商標権者であるConverseのブランドとして認知されていた以上、なお、真正商品を並行輸入として商標権非侵害とすべきであったというのが筆者の意見である。
なお、東京地判平成11.1.18【ellesse】は、元々日本と韓国の商標権は一人に帰属していたが、日本商標権のみが譲渡され、資本関係もなく、品質も異にしているため、一つのグループとは言い難い事案で、真正商品を並行輸入が否定されている。
https://lex.juris.hokudai.ac.jp/gcoe/journal/IP_vol30/30_9.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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