Eli Lilly v. Hospira (Fed. Cir. Aug. 2019)
Eli Lillyは、Claim 12 of ’209 patentを、出願経過で「pemetrexed disodium salt」にまで不必要に狭く限定してしまったところ、Hospiraが製造・販売する物は「pemetrexed ditromethamine salt」であった。
Festo米国最高裁判決(2002)は、flexible barを採用しており、出願経過で減縮した場合のProsecution History Estoppelの推定を覆すための3要件として以下の3つを示していた。
①Equivalent may have been unforeseeable at the time of the application.
②The rationale underlying the amendment may bear no more than a tangential relation to the equivalent in question.
③Some other reason suggesting that the patentee could not reasonably be expected to have described the insubstantial substitute in question.
本判決は、“no more than a tangential relation to the equivalent in question”として、米国のCAFC判決として初めて、Prosecution History Estoppelの推定が覆され、出願経過で減縮したクレームについて均等論が認められた事例である。
このCAFC判決は、英国、独国でファミリー特許について均等論を認めた最高裁判決が出ていたことと無関係でないだろう。
英国最高裁[2017]UKSC48 Actavis v. Eli Lilly ~ 英国で初めて均等論を認めた最高裁判決。欧州出願手続においてクレームが減縮補正されたが、この補正は、許容できない中間概念化に基づく新規事項追加の拒絶理由を回避する目的であり、補正要件を満たすものに過ぎないとした。⇒均等論成立
独国最高裁X ZR 29/15 Actavis v. Eli Lilly ~ 補正の理由が、先行技術に対して主題を限定した場合は均等論が排除されるが、形式要件(新規事項追加や明確性)が契機となった補正は、特許権者が選択決定したとは見做されず、均等論は排除されない。⇒均等論成立
日本でも、近時、補正で追加された構成要件について均等侵害が認められた裁判例(「骨切術用開大器」事件)東京地判平成30年12月21日、平成29年(ワ)第18184号<佐藤裁判長>がある。
★なお、2019年に、CAFCで均等論が3件認められている。米国の均等論は死んだかとも言われていたが、復活の狼煙が上がったかもしれない。
UCB, Inc. v. Watson Labs. Inc. (Fed. Cir. June 24, 2019)
Ajinomoto Co. v. USITC (Fed. Cir. Aug. 8, 2019)
Eli Lilly & Co. v. Hospira, Inc. (Fed. Cir. Aug. 9, 2019)
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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