知財高判平成30年(行ケ)第10061号「安定な炭酸水素イオン含有薬液」事件<大鷹裁判長>
⇒3個の数値限定(相違点⑥⑦⑧)を含む、7個の相違点を容易想到とした裁判例
(※ピリミジン大合議判決以降の、サポート要件緩和、進歩性厳格化の潮流に沿った判決ですね。)
相違点①、②、③、④は、<省略>
相違点⑥ 混合液中の無機リン濃度
相違点⑦ 混合液中のマグネシウムイオン濃度
相違点⑧ 混合液中の炭酸水素イオン濃度
<判決の抜粋>
引用発明は、<1>目的が本件発明と同じ、<2>一定の条件下でマグネシウムイオンを重炭酸塩・リン酸塩とも一緒に保持することができ,特定の環境,濃度,pH範囲及びパッケージングにおいて,滅菌の安定なリン酸塩含有医療溶液を提供できることを見出した、<3>発明の詳細な説明に変更可能である旨の記載有り。
⇒当業者は,イオン濃度を変更し得ると理解する。
※「急性血液浄化法徹底ガイド」(2007年版)から認定した、「本件優先日当時,『急性血液浄化』のための血液濾過(透析)用に使用され得る,市販されている透析液及び補充液において,カルシウムイオン濃度を『2.5~3.5mEq/L』,マグネシウムイオン濃度を『1.0~1.5mEq/L』,炭酸水素イオン濃度を『30mEq/L』前後の範囲の中で調整することは,技術常識又は周知であった」という技術常識を踏まえると,引用発明のマグネシウムイオン濃度及び炭酸水素イオン濃度を市販されている透析液及び補充液の数値範囲の中で調整することは設計事項。
⇒相違点⑦⑧の数値限定は、容易想到。
※別の公知文献に、滅菌・安定化のために無機リン濃度を「3.1~8.7mg/dL」とすることが開示されていた。
⇒この範囲内で調整することを試みる動機付けあり
⇒相違点⑥の数値限定は、容易想到。
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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