<知財実務オンライン>「 出願プロセスを支える英日特許翻訳者の思考法…」(藪内達也)

<知財実務オンライン>「 出願プロセスを支える英日特許翻訳者の思考法-技術・法律・言葉をつなぐ、翻訳者の判断と思考」(藪内達也)

「翻訳者の頭の中(ブラックボックス)」を開示し、彼らがどのような論理とリスクヘッジに基づいて訳語を決定しているかを言語化した。

1.「技術・法律・言葉」をつなぐ翻訳者の役割
特許翻訳においては、「逐語訳(直訳・ミラー翻訳)」が度々議論になるが、英語と日本語では言語構造が根本的に異なる。
翻訳者は、以下の3要素のバランスを取りながら、高度な判断を行っている。

・技術 (Technology)
表面的な文字だけでなく、発明の物理的な動作やメカニズム(実態)を正確にイメージし、理解すること。

・法律 (Law)
日本の特許法や審査基準、知財業界の慣行(お作法)に適合させ、審査で不利にならない法的文書として成立させる。

・言葉 (Language)
権利範囲(スコープ)を1ミリも変えずに、審査官や弁理士が読んで誤解を生まず、すっと頭に入る自然な日本語を構築する。

2.翻訳者の「思考法」と具体的な判断事例
「Treatment」の訳し分けによる法的リスクの回避一般的に辞書で「治療」と訳される “treatment” ですが、明細書内に therapeutic treatment と prophylactic treatment が併記されていた場合、単に「治療」と訳すと「治療的治療」「予防的治療」となり日本語として不自然になる。
さらに、日本の特許法における「医療行為(人間を手術、治療又は診断する方法)」の規定に抵触する解釈のブレを生むリスクがあります。これを意図的に「処置(治療的処置/予防的処置)」と訳し分けることで、法的リスクと後からの修正の手間を回避できる。

法令用語の適切な選択英文明細書の常套句である “without wishing to be bound by theory”(理論に縛られることを望むものではないが)を訳す際、日本の法律用語辞典には「束縛」という言葉はなく「拘束」が正しい法令用語であるため、「理論に拘束されることを…」と訳出する。

・権利範囲を変えないための構文処理(ト書きや修飾関係)
要素が列挙される請求項(A, B, and C)において、単に「A、B、及びC」と訳すのではなく、「Aと、Bと、Cと」のように早い段階で包含(and)か択一(or)かを示す表現(ト書き)を用いる。
構成要素が後置修飾で長く続く複雑な英文クレームにおいて、日本語の読みやすさを優先して勝手に権利範囲を限定・縮減してしまう「意訳」を避ける。
“at least one of” を「〜の少なくとも1つ」とするか「〜のうちの少なくとも1つ」とするかの論理的使い分け。
スタイルガイドと表記統一数字やアルファベットの全角・半角、「及び/および」「又は/または」といった漢字・ひらがなの使い分けなど、明細書全体の統一感を持たせることの重要性。

https://www.youtube.com/live/JzBCX4A6yPM?si=n1eV0NT79XBR27Qb

 

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)

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