東京地判令和6年(ワ)4142【携帯情報通信装置】<國分> =東京地判令和6年(ワ)70083

東京地判令和6年(ワ)4142【携帯情報通信装置】<國分>
=東京地判令和6年(ワ)70083


*前訴で消費税相当額を請求しなかった分を別訴で請求したが、信義則違反で却下された。

原告は、①消費税相当額は前訴の審理対象とされておらず、蒸し返しには当たらない、②消費税損失は実施料損失とは発生原因が異なり、③消費税率は判決確定時の税率で決まるため前訴時に請求するのは困難だった、などと主張した。
⇒特許侵害訴訟において消費税相当額が損害・損失の一部として請求・認容される例は少なくなく、そのことは当裁判所に顕著である。したがって、原告がこうした実務状況を認識し得なかったとはいえない。また、消費税相当額は実施料相当額に当時の消費税率(本件では弁論終結時点で既に10%)を乗じるだけで容易に算定可能であり、前訴1・2において実施料相当額とともに消費税相当額を損失として主張することが困難であったともいえない。さらに、原告は前訴で「実施料だけに限る」と明示しておらず、消費税部分を審理の対象から除外する趣旨も示していなかった。
⇒前訴1・2において原告は消費税相当額を含む損失全体を裁判所の審理対象とすることも、逆に消費税部分だけを外すこともできたのに、あえてそうせず一部請求をし、その一部について敗訴したものと評価されるとし、本件での残部請求は「前訴により債権全体の紛争が解決された」という被告の合理的期待を裏切り、二重応訴負担を課すものであると結論した。
よって、特段の事情は認められず、本件訴えの提起は訴訟上の信義則に反し許されないと判断し、不当利得返還請求の実体判断には踏み込まずに、訴え自体を不適法却下とした。

(判旨抜粋)
…数量的一部請求を全部又は一部棄却する旨の判決は、このように債権の全部について行われた審理の結果に基づいて、当該債権が全く現存しないか又は一部として請求された額に満たない額しか現存しないとの判断を示すものであって、言い換えれば、後に残部として請求し得る部分が存在しないとの判断を示すものにほかならない。
したがって、上記判決が確定した後に原告が残部請求の訴えを提起することは、実質的には前訴で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものであり、前訴の確定判決によって当該債権の全部について紛争が解決されたとの被告の合理的期待に反し、被告に二重の応訴の負担を強いるものというべきである。
以上の点に照らすと、金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは特段の事情がない限り、信義則に反して許されないと解するのが相当である。(最高裁平成9年(オ)第849号同10年6月12日第二小法廷判決・民事判例集52巻4号1147頁(平成10年最高裁判決)参照)
・・・
特許権侵害訴訟において、消費税相当額の損害賠償請求や不当利得返還請求がされる事例が少なくなく、消費税相当額が損害又は損失の一部として認容されていることは、当裁判所に顕著である上、本件全証拠によっても、原告がそのような実情を認識し得なかったといった事情を認めることはできない。
また、消費税相当額の損失は、実施料相当額の損失に所定の消費税率を乗じることで容易に算定できるものであるから、前訴1及び2の事実審の口頭弁論終結時において、消費税相当額を含めた損失の全体が確定していなかったとはいえず、原告が、前訴1及び2において、不当利得返還請求につき、実施料相当額の損失に加えて、同額に所定の消費税率を乗じた額を消費税相当額の損失として主張することが困難な事情や同主張をしない合理的な理由があったものとはうかがわれない。
そうすると、原告は、前訴1及び2の審理や判断の対象として消費税相当額の損失を加えることや、前訴1及び2ではその対象としないことを明示することが可能であったのに、それをしなかったものといわざるを得ない。
…本件訴えは、金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が提起した残部請求の訴えに当たり、本件訴えの提起は、信義則に反して許されない。

https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94162.pdf
 
 
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)

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