令和6年(ネ)10010【女性用衣料】<中平裁判長>
令和6年(ネ)10010【女性用衣料】<中平裁判長>
*特許権侵害を認めた原判決を維持した。
*控訴理由書で主張した新たな無効理由を、時機後れと判断した。(一応判断した。)
<構成要件充足性>
「連結するとともに」とは、連結機能と調節機能を同時に有する構成を意味し、控訴人が主張するような「連結状態を維持しながら調節する」ことまでは要しない
「連結幅」とは、胴体水平方向の重なり量である。
<無効理由>
乙31文献に基づく主張は「時機に後れた攻撃防御方法」であるが、訴訟遅延を避けるため判断を行った。
⇒乙31発明は、乳房全体を覆って圧迫し動きを拘束する構成であるのに対し、本件発明は、バストの側部のみを覆って左右から引き寄せる構成であり、両者は作用機序及び構成において明確に相違する。
また、全体を覆う構成から側部のみを覆う構成への変更には阻害要因があり、進歩性も否定されない。
(判旨抜粋)
まず時機に後れた攻撃防御方法に当たるかについて検討すると、控訴人による当審における新たな無効理由の主張は、令和6年2月6日付け控訴理由書においてなされたものであるところ、特許権侵害訴訟において、無効の抗弁は、特許権の侵害に係る紛争をできる限り特許権侵害訴訟の手続内で迅速に解決するため、特許無効審判手続による無効審決の確定を待つことなく主張することができるものとされており、特許無効審判とは別の手続である民事訴訟手続内でのものであるから、審理の経過に鑑みて、審理を不当に遅延させるものであるときは、時機に後れた攻撃防御方法に当たるものとして却下されるべきである。
これを基に原審における審理経過についてみると、一審被告である控訴人は、原審において、令和3年10月27日提出の同月22日付け答弁書において、被控訴人製品の本件発明の構成要件該当性を否認するとともに、乙8文献を主引用例とし、これと周知技術との組み合わせないし乙9文献を副引用例とする進歩性欠如の無効理由を主張した。これに対する一審原告である被控訴人の反論等を受け、令和4年3月18日付け準備書面⑶において、乙8文献による新規性欠如の無効理由を追加し、これに対する被控訴人の更なる反論を受けて、令和4年5月27日付け準備書面⑷において、更に乙8文献を主引用例とし、乙10文献を副引用例とする進歩性欠如の無効理由を追加した。これについての被控訴人の反論に対しては、更に令和4年8月29日付け準備書面⑸において反論をした。
そして、侵害論について当事者が主張立証を尽くしたことを前提とし、令和4年8月31日に行われたウェブ会議の方法による書面準備手続において、裁判所から損害論に審理を進める旨の心証開示を受けて(令和4年8月31日の書面準備手続の経過表には、協議の結果欄に、「当事者双方侵害論についての主張立証は尽くした。」「裁判長今後、損害論についての審理を進める。」との記載がある。)、損害論の審理が進められ、令和5年9月22日に行われた口頭弁論期日において、控訴人は他に主張立証することはない旨を陳述し、原審口頭弁論が終結されて原判決が言い渡されたものである。
こうした原審での審理経過に鑑みると、当審における新たな無効理由の主張は、時機に後れて提出された攻撃防御方法に当たり、その提出が後れたことについて控訴人には重過失があるから、本来であれば却下は免れないが、被控訴人から、予備的にではあるものの、当審において提出された無効理由についての反論がされており、これに対する控訴人の再反論の主張はなく当審の口頭弁論終結に至っていることから、この限度では訴訟の完結を遅延させることになるとまではいえないため、以下、判断を加えることとする。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-93355.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)
