【論稿/特許】食品用途発明の各国出願における留意点(バイオ・ライフサイエンス委員会、パテント誌2025年12月)
【論稿/特許】食品用途発明の各国出願における留意点(バイオ・ライフサイエンス委員会、パテント誌2025年12月)
日本において2016年の審査基準改訂により「食品用途発明」の保護が強化されたが、海外展開においては各国独自の法制度と審査実務の相違が大きい。
1. 許容されるクレーム
①米国:「物の用途発明」は認められず、方法として記載。前文(PREAMBLE)の用途は限定力を持たない場合が多い。
②欧州:「用途限定物質 / ユース治療用は「Substance A for use in…」。非治療用は「Non-therapeutic use of…」。スイス型は不可。
③中国:方法 / スイス型(~を製造するための使用)が有効。
④韓国:物(食品組成物)日本に近いが、用途が構造・形態に差異をもたらさない場合は新規性が否定されやすい。
2. 米国における権利化の難所:
①INHERENCY(内在性)~米国では、公知物質に未知の用途を見出しても、それが先行技術に「本質的に含まれる(INHERENT)」とみなされると新規性が否定される。
②自然法則~ 摂取による体内効果は「自然の法則(LAW OF NATURE)」に支配されていると解釈され、単に「食べる」という公知工程に新たな知見を付加しても、顕著な効果の立証が極めて困難である。
3. 欧州における区分:
①治療的用途:疾病の治療や予防に関連する場合、EPC 54(4)や(5)に基づく「用途限定物質クレーム」を用いる。
②非治療的用途:「疲労回復」などの健康維持目的の場合、治療行為に該当しないことを明確にするため「非治療的(NON-THERAPEUTIC)」と明記したユースクレームが有効である。
「…の改善」といった表現が不明確とされたり、具体的な疾患名を挙げると先行技術(医薬用途)に抵触したりするジレンマが存在する。
4. 戦略的結論
日本で特許査定を得た構成をそのまま翻訳して出願するのではなく、移行段階から各国に適した形式への補正が不可欠である。
米国では、用途ではなく「構造的相違」や「方法としての特異性」を強調する。
中国ではスイスタイプ、欧州では用途限定物質クレームへの組み換えを行う。
日本で認められる菌株レベルの広汎な権利も、海外では特定の寄託番号(菌株)への限定を余儀なくされる可能性が高い。
https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4743
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)
