【論稿/欧州特許】G2/21審決以降のPlausibility(もっともらしさ)に関連する審決

【論稿/欧州特許】G2/21審決以降のPlausibility(もっともらしさ)に関連する審決の検討(清水義憲、呉英燦、河合利恵、パテント誌2025年11月)

 1. G2/21審決の核心:二つのハードル
 G2/21審決は、後出し証拠を直ちに無視するのではなく、以下の2条件をクリアすれば進歩性の判断基準として認めるという姿勢を示した(Headnote II)。

 ①包含(Encompassed): その技術的効果が、当初の出願時の技術的教示に包含されていること。

 ②具現化(Embodied): 同一の当初開示された発明によって具体化されていること。

2. 実務上の明暗を分けた事例:進歩性と開示の十分性
 G2/21以降の審決では、「進歩性(Art. 56)」と「開示の十分性(Art. 83)」で、後出し証拠の許容範囲に明らかな差が出ている。

 A. 進歩性(比較的柔軟)
 当初明細書に「もっともらしい(Plausible)」示唆があれば、後出しデータでその効果を補強することが認められやすい傾向にある。

 認容例(T 2716/19 – ギリアド):特定の塩基(マグネシウムイソプロポキシド)の個別データは当初なかったが、同効の塩基の代用が可能である旨が記載されていたため、後出し証拠(D24)が認められ、進歩性が肯定された。
 拒絶例(T 0467/22):当初明細書のデータ自体に矛盾(沸点を超えても不純物量が変化しない等)があり、後出し証拠でもその疑義を払拭できなかったため、進歩性が否定された。

 B. 開示の十分性(極めて厳格)
 当初明細書の時点で「治療効果の証明」が欠落している場合、後出し証拠でその穴を埋めることは不可能である。

 拒絶例(T 2790/17):当初データが「低用量で逆効果」を示すなど科学的妥当性に欠けていた。この「信頼性の欠如」は、後出しの優れた論文(D17等)を持ってきても補完できないと判断された。
 拒絶例(T 1779/21):単剤療法の効果が当初明細書に全く示されておらず、先行技術からも推測困難であったため、後出しデータは無視された。

 3. 日欧比較と対策のまとめ
 調査対象となった事案の多くで、日本での特許化は成功している一方、欧州では苦戦(または取消)している。

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※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)

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