【論稿/意匠】仮想空間における意匠保護に関する 我が国意匠法の今後の対応についての 一考察(星野光秀、パテント誌2025年10月)
【論稿/意匠】仮想空間における意匠保護に関する 我が国意匠法の今後の対応についての 一考察(星野光秀、パテント誌2025年10月)
1. 画像意匠の保護範囲の拡張(GUIの保護)
欧州と米国の動向は対照的である。
欧州(EU): 2024年10月成立の改正CDR(欧州連合意匠理事会規則)により、バーチャルオブジェクトを特段の限定なく保護可能であることが明確化された。保護範囲は極めて広範である。
米国: 登録実務上、画像がディスプレイスクリーンという「物品」と一体化していれば、日本の操作画像・表示画像に該当しないコンテンツ(例:バーチャルな靴やモデル)であっても保護対象となり得る。
<日本への示唆>
欧州のような無制限の拡大はクリエイターの創作活動を萎縮させる懸念がある。一方、日本と制度的親和性の高い米国の「物品一体化」の考え方は、機器との関連性を緩めつつ産業発達を促す折衷案として有用である。
2. 意匠権の実施範囲を仮想空間へ延長(物理から仮想へ)
現実世界の物品(車や家具など)の意匠権が、仮想空間上のデジタルオブジェクトにまで及ぶかという問題である。
欧州(肯定的な傾向): 「抽象的見解(abstract view)」を採り、次元の変化(現実からデジタルへ)にかかわらず保護を認める。非デジタル意匠のデジタル使用を侵害とみなし得る立場である。
米国(否定的な傾向): 意匠権者に不当な「棚ぼた」利益を与える懸念や、写真撮影などの表現の自由を侵害するリスク、審査負担の増大から、否定的な見解が強い。
<日本における対応案の考察>
①外観限定意匠権拡大案: 用途を問わず外観の類似性で権利を及ぼす。意匠投資の保護には資するが、膨大な先行意匠の調査が必要となり審査実務上の課題が大きい。
②リアル・バーチャル等価整理案: 仮想空間内での機能が現実と等価と認識される場合に限り、類似物品として扱う。判断基準は明確になるが、保護のニーズを十分にはカバーできない可能性がある。
3. 結論と提言
仮想空間には国境が存在しないため、国際的な制度調和(ハーモナイゼーション)を意識した対応が不可欠である。日本が制度を拡張する際には、産業の発展と創作の自由とのバランスを確保することが重要となる。
意匠法のみによる解決を図るのではなく、著作権法や不正競争防止法との役割分担を明確にしつつ、段階的な法整備を進めることが現実的な対応である。
https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4723
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)
