【論稿/中国特許】中国における数値範囲の限定に関するサポート要件について(胡春豊、林軍、パテント誌2025年9月)

【論稿/中国特許】中国における数値範囲の限定に関するサポート要件について(胡春豊、林軍、パテント誌2025年9月)

<中国最高裁(2020)最高法知行終407号判決>
1.中国最高裁判決の考察
特許の内容: 充電終止電圧(4.2V超〜5.8V以下)と正負極比率(1:1.0〜1:2.5)を組み合わせた数値限定発明。
争点: 明細書内に「パラメータが範囲を超えると特性が悪化する」との記載があり、アップル社が「実施例でカバーされていない範囲(発明の目的を達成できない範囲)が含まれており、サポート要件を満たさない」と主張した。
1審判決: 「明細書によって明確に排除された範囲が請求項に含まれており、概括が広すぎる」として特許を無効と判断。
最高裁の判断(逆転勝訴)
『当業者が明細書を閲覧し、若し各々の数値範囲の技術的な特徴の間に互いに対応する関係を確認でき、限られた回数の実験を通じて発明の目的に合う実施形態を得られ、且つ、過剰な労力をかけず、発明の目的に達成できない発明を排除できる場合、当該請求項は明細書にサポートされていると判定すべきである。』

2.実務上の注意点
同最高裁判決を踏まえ、中国における明細書作成と無効審判の対策を以下のように提案する。
①特許明細書作成時
独立請求項の多層化: 広範な範囲を網羅する請求項だけでなく、確実に効果が得られる数値グループ(実施例のデータ群)ごとに別々の独立請求項を設けるなど、認識しやすい構成を検討すべきである。
②実施例の配置
審査指南に従い、範囲の開始値、終了値、中間値における具体的なデータを網羅しておくことが基本である。
③特許無効審判時
単に「発明の目的を達成できない範囲がある」と主張するだけでは不十分である。
より具体的な実験結果を用い、「当業者が明細書のガイダンスに従っても、通常の労力では保護範囲(効果の出る範囲)を認識できない」ことを立証する必要がある。

3.まとめ
中国最高裁は、数値範囲のサポート要件について、「当業者が過剰な労力なしに機能しない範囲を排除できるか」という新たな判断基準を示した。
これにより、広範な数値限定であっても、明細書に適切な指針があれば権利が維持される可能性が高まったといえる。

https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4697
 
 
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)

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