【論稿/ドイツ特許】ドイツ特許法と対比した実施行為 「使用」についての考察(高橋弘史、パテント誌2025年5月)

【論稿/ドイツ特許】ドイツ特許法と対比した実施行為 「使用」についての考察(高橋弘史、パテント誌2025年5月)

1. 日本とドイツにおける「使用」の定義
日本の特許法では、物の発明(第2条第3項第1号)と方法の発明(同第2号)のいずれについても「使用」という同一の用語を用いている。
これに対し、ドイツ特許法ではその対象に応じて用語を厳格に使い分けている。

2. 国境を跨いだ侵害行為(越境侵害)
ドイツの判例(「プリペイドカード事件」等)では、方法の発明の「使用(Anwenden)」について、以下のような柔軟な解釈が示されている。

<経済的規範的考慮>
クレーム内の一部のステップがドイツ国外(例:海外サーバ)で行われていても、そのステップが国内の行為者に起因し、「発明の技術的成功(利益)」が国内で享受されているのであれば、全体として国内での侵害(Anwenden)と評価される。

<実務上の示唆>
デジタル分野の技術は方法として記述しやすいため、方法クレームを活用することで、物理的拠点に縛られない権利保護が可能となる。

3. 消尽(ライツ・エキゾースション)の法理
消尽の判断においても、ドイツ法では「物」と「方法」の次元の違いが明確に区別される。

<物の消尽>
特許製品(デバイス)の譲渡により、そのデバイス自体の「使用(Gebrauchen)」を差し止める権利は消尽する。

<方法の非消尽>
デバイスを販売したからといって、当然にそのデバイスを用いて実施される「方法(Anwenden)」まで消尽するわけではない。
消尽は特許の「物の側面」に由来するものであり、装置の購入者がその装置を介して特許方法を自由に使用できる(=方法特許が消尽する)とは限らないという判例(「DVDマスター事件」等)が存在する。

https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4650
 
 
画像
 
 
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)

執筆

関連記事