法情報提供(2026年2月掲載分)
法情報提供(2026年2月掲載分)
対象:2026年2月に中村合同特許法律事務所の弁護士・高石秀樹(32件)、弁護士・外村玲子(1件)及び弁護士・飯田圭(1件)が公開した記事
収録件数:34件
一覧ページ:https://www.nakapat.gr.jp/ja/legal_updates_jp/(法情報提供。2件)、https://www.nakapat.gr.jp/ja/note/2026/02/(高石弁護士の知財速報。32件)
<今月の見どころ>2026年2月 知財・法務アップデートの重要ポイント
今月のリーガルアップデートでは、クレーム解釈、進歩性、発明者性・職務発明、医薬品・標準必須特許、鑑定証拠・法定手続・著作権の例外規定まで、知財実務の広い領域にわたる34件の裁判例・解説を取り上げる。特に注目すべき判断と実務上のポイントは、以下のとおりである。
1.クレーム文言と明細書から定まる権利範囲
東京地判令和5年(ワ)70380【棒状ライト】<髙橋裁判長>は、推薦色の記憶と発光に異なる入力を使う製品等を非充足とし、同じ入力方法による課題解決の記載・示唆もないとしてサポート要件違反を認めた。令和6年(ネ)10074【電子タバコ用充填物】<増田裁判長>は、「切込み」を刃物で人為的・能動的に形成された切り目と解し、捲縮加工による筋状部分を非充足とした。他方、東京地判令和5年(ワ)70594【マットレス】は、「圧着」を強い圧迫に限定せず、隙間が生じない程度に圧力がかかる状態と解して充足を認めた。令和6年(ネ)10080【笠木下換気構造体】<中平裁判長>は、換気部材「それ自体」が通気・防水性能を有することを要するとした。明細書の課題・解決手段・効果と形成手段を踏まえる必要がある。
2.進歩性を分ける技術常識、予測可能性、動機付け及び阻害要因
令和6年(行ケ)10037【木質複合材】<清水響裁判長>は、密度・寸法・ランダム配向に特段の相乗効果が示されないとして個別判断を是認し、周知技術等に基づく最適化・選択とした。令和6年(ネ)10032【携帯情報通信装置】<清水響裁判長>及び令和6年(ネ)10001【ヤーン色配置システム】<清水響裁判長>も、画像処理の技術常識や、引用発明に実質的に含まれ又は技術常識の適用により容易に想到できる調整であることを重視した。これに対し、令和6年(行ケ)10022【…抗微生物剤】<本多裁判長>は、有効成分が爪甲を透過して治療効果を発揮する合理的な期待がなかったとして進歩性を肯定した。令和6年(行ケ)10043【弾塑性履歴型ダンパ】<本多裁判長>は、一方向入力を前提とする引用発明への二次元配置に動機付けがなく阻害要因があるとし、知財高判令和6年(ネ)10048【電池】<中平裁判長>は、先行技術の部材位置と効果との密接な関連を重視した。技術常識、予測可能性、動機付け及び阻害要因を分けて論証すべきである。
3.発明者性・職務発明は特徴的部分への関与と規程の適用で決まる
令和5年(行ケ)10078【オーディオコントローラ】<清水響裁判長>は、委託者側が具体的解決手段を伴う着想を得て本件実験機により発明を完成させており、受託者は別課題を解決したにすぎないとして共同発明者性を否定した。令和6年(ネ)10029『特許を受ける権利の確認請求』<増田裁判長>は、血管プラグの課題と解決手段を研究ノートに記した教授を発明者とし、【職務発明】東京地判令和5年(ワ)70495<中島裁判長>も、本件発明は原告の関与なく他の従業員らが独自に着想・具体化したものと認定し、原告主張の完成時期にも裏付けがないとして原告の発明者性を否定した。大阪地判令和5年(ワ)10217【立体網状繊維集合体】<松阿彌裁判長>は、褒賞規定の制定手続と製品の実績を踏まえて請求を棄却した一方、大阪地判令和4年(ワ)11405【複素環誘導体】<武宮裁判長>は、規程適用の定め・合意がないとして法定の相当対価約9400万円を認めた。特徴的部分への関与を資料化し、規程の対象と手続を明確にすべきである。
4.医薬品特許と標準必須特許の権利範囲・救済
令和5年(ネ)10107『PCSK9(二次訴訟)』<中平裁判長>は、「競合」に立体障害による競合も含まれる一方、参照抗体と競合する抗体であれば参照抗体と同様の機序で中和するとはいえず、立体障害により競合する抗体の中和活性について明細書に何らの開示もないとしてサポート要件違反とした。訂正の再抗弁については、明細書の記載を削除する訂正事項1・2が法定の訂正目的に該当しないとして、その余の訂正事項を判断せず排斥した。東京地判令和5年(ワ)70527【環状タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤】<杉浦裁判長>は、無水物の採用等に起因する課題を踏まえた添加剤の付加・転換が周知・慣用技術に基づくと認めるに足りる的確な証拠はなく、むしろ原告の自己の技術等によるものとうかがわれるとして、原告製品をスプリセル錠と実質同一ではないとした。同裁判長による仮処分決定(差止め認容)と本判決(本訴却下・反訴棄却)とで結論が異なった点も注目される。東京地判令和4年(ワ)7976号【通信機器】<中島裁判長>は、LTE標準必須特許の侵害を認めながら差止請求を権利濫用とし、FRAND条件で実施料を按分し、被告がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有していたことから侵害プレミアムを認めなかった。
5.鑑定証拠、法定手続及び著作権の例外規定
【種苗法★】育成者権侵害事件は、原告が用意した試験管への菌糸の事前混入可能性と親株廃棄による事後検証不能を理由に、鑑定の信用性を否定した。本判決は、本件の事情の下では、少なくとも第三者機関による試験管の用意と親株の保存が不可欠であったとした。東京地判令和6年(行ウ)5001<澁谷裁判長>は、外国語特許出願で翻訳文提出前にした審査請求の瑕疵は後に治癒せず、処分を取り消す実益もないとした。令和6年(ネ)10072【ドラフト差測定装置】<中平裁判長>は、特許異議申立てが違法であったとは認められないとし、その他の出願・維持費用も行為との相当因果関係を欠くとした。知財高判令和7年7月31日(令和6年(ネ)第10075号)【著作権法★】事件は、投稿本文の批評目的との関連性が認められた報道写真には引用を、批評対象の記事又は題字に隣接して同じ紙面に軽微に写り込んだ写真には付随対象著作物の利用を認めた。証拠の採取・保存、法定手続の順序、損害との因果関係及び引用の各要件を点検すべきである。
このほか、契約上の「客観的に支払不能」の認定、別名称の製品の販売申出による共同不法行為の否定、数値限定の技術的意義及び再審事由など、訴訟・出願・契約・社内制度を横断する判断を収録した。本号を争点整理と証拠設計の点検に活用されたい。
全記事の3行要約
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区分 |
記事名・3行要約 |
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特許 |
令和6年(行ケ)10037【木質複合材】<清水響> |
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特許 |
令和6年(ネ)10032【携帯情報通信装置】<清水> |
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特許 |
令和6年(ネ)10001【ヤーン色配置システム】<清水響> |
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特許 |
東京地判令和5年(ワ)70079【車両誘導システム】<國分> |
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特許 |
東京地判令和5年(ワ)70380【棒状ライト】<髙橋> |
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知財一般 |
10立方センチメートルの液体及び/又は固体を運搬可能な容器 |
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特許 |
令和6年(行ケ)10043【弾塑性履歴型ダンパ】<本多> |
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特許 |
知財高判令和6年(ネ)10048【電池】<中平> |
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知財一般 |
【種苗法★】育成者権侵害を立証する鑑定の信用性が認められないとして、原告の請求を棄却した事例 |
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特許 |
令和6年(ネ)10056【洗浄作業用バン型自動車】<中平> |
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知財一般 |
【新着YouTube】充足論(典型的な文言充足以外)(特許裁判例事典、第4版の読み合わせ)2025/11/5 |
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知財一般 |
【契約】東京地判令和4年(ワ)9422<澁谷> |
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特許 |
東京地判令和5年(ワ)70449【締結金物】<髙橋> |
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特許 |
大阪地判令和5年(ワ)10217【立体網状繊維集合体】<松阿彌> |
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特許 |
【職務発明】東京地判令和5年(ワ)70495<中島> |
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特許 |
大阪地判令和4年(ワ)11405【複素環誘導体】<武宮> |
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特許 |
令和5年(ネ)10107『PCSK9(二次訴訟)』<中平> |
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特許 |
東京地判令和4年(ワ)7976号【通信機器】<中島> |
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特許 |
令和6年(ネ)10074【電子タバコ用充填物】<増田> |
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特許 |
令和6年(行ケ)10109【介助機】<本多> |
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特許 |
東京地判令和6年(行ウ)5001<澁谷> |
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特許 |
令和6年(行ケ)10022【…抗微生物剤】<本多> |
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特許 |
令和6年(ネ)10029『特許を受ける権利の確認請求』<増田> |
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特許 |
令和5年(行ケ)10078【オーディオコントローラ】<清水>(被告:ピクシーダスト) |
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特許 |
令和5年(ワ)70563【取引管理システム】<澁谷> (キーソフト v. サンカクキカク) |
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特許 |
東京地判令和5年(ワ)70594【マットレス】 |
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特許 |
令和5年(ネ)10114【キューブコーナー素子を有する層状体および再帰反射シート】<中平> |
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特許 |
令和5年(行ケ)10121【撮像装置】<増田> |
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特許 |
令和5年(ワ)70004【携帯情報通信装置】<髙橋> |
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特許 |
東京地決令和5年(ヨ)第30214号仮処分命令申立事件<杉浦> |
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特許 |
東京地判令和5年(ワ)70527【環状タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤】<杉浦> |
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特許 |
令和6年(ネ)10080【笠木下換気構造体】<中平> =原審・大阪地判令和5年(ワ)8403 |
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特許 |
令和6年(ネ)10072【ドラフト差測定装置】<中平> |
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著作権 |
【著作権法★】被控訴人(被告)が、控訴人(原告)の発行する新聞の記事(見出し、記事本文、本件各写真)をスマートフォンの写真1枚に写り込む限度で撮影し、25回にわたり、インターネットを利用して、投稿本文とともにツイッター(X)に投稿した行為について、控訴人が本件各写真の著作権(送信可能化権)侵害を主張して、不法行為に基づく損害賠償請求をした事案において、引用の抗弁(著作権法32条1項)又は付随対象著作物の利用の抗弁(著作権法30条の2)を認めて、控訴人の請求を棄却すべきものとした事例 |
令和6年(行ケ)10037【木質複合材】<清水響>
令和6年(行ケ)10037【木質複合材】<清水響>
判決日:令和7年2月20日。
進歩性×
原告は、密度・小薄片の寸法・配向(向き)の3つの要素が一体となって相乗効果を奏するため、これらを一つの相違点として判断すべきと主張したが、本判決は、明細書には密度及び配向に係る構成の効果が本件発明の効果として示されておらず、実験成績証明書(甲20)にも各構成が単独で奏する効果が個別に示されているにとどまり、組合せによる相乗効果は認められないとして、個別に判断した特許庁の手法を是認した。
(1) 相違点1:密度(400~550kg/m3)について
甲1発明には密度の特定がないが、先行技術(乙2~4)において、木質ボードの密度として0.40~0.65g/cm3(400~650kg/m3)が好適であることは周知であった。
⇒用途(床材の基材)に応じて密度の数値範囲を最適化・好適化することは当業者が容易になし得る。
(2) 相違点2:木質小薄片の寸法(厚さ0.2-0.5mm等)について
本件発明は薄片のサイズを細かく規定しているが、先行技術(甲4、甲5など)には類似した寸法の開示があった。
⇒薄片を小さくすると均質・平滑になるが強度は下がるという技術常識(トレードオフ)が存在し、その中で数値を最適化することは当業者の創作能力の範囲内であるとしました。「節がない」点も、細片化すれば当然の結果である。
(3) 相違点3:繊維方向のランダム配向について
本件発明は薄片がランダムに向いている。
⇒OSBにおいて配向性を持たせるかランダムにするかは周知の選択肢であり、ランダムにすることで方向による強度のバラつき(異方性)をなくすことは技術常識であるため、用途に応じてランダム配向を選択することは容易である。
【補足】原記事の見出しは「令和7年(行ケ)10037」とするが、判決の事件番号は「令和6年(行ケ)第10037号」である(判決1頁2行)。また、原記事の「明細書や実験データからは各要素が個別に効果(強度の向上、表面性の向上など)を奏することは読み取れる」について、判決は、「「密度に係る構成」及び「配向に係る構成」の効果は、本件発明の効果として示されていない」とし(判決22頁8~9行)、「各構成が単独で奏する効果がそれぞれ個別に示されているにとどまり」としたのは実験成績証明書(甲20)についてである(判決22頁15行~23頁8行)。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-93877.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)
令和6年(ネ)10032【携帯情報通信装置】<清水>
令和6年(ネ)10032【携帯情報通信装置】<清水>
進歩性×
⇒請求棄却した原審維持
携帯電話が無線信号を受信し、復調してデジタル信号にし、CPUがそれを処理して画像を表示するのは、本件優先日当時の技術常識である。
⇒判決は、丙B9文献に通信部12からCPU11への信号送信の記載がないことを相違点6BDG’と認定した上で、技術常識の適用により容易想到であり、実質的な相違点でもないと判断した。
丙B9文献でも、携帯画面では見きれないデータを外部モニターに出す以上、「解像度の違い」がある。
VRAM(画像メモリ)及びビットマップデータ(ドットデータ)については、技術常識を踏まえ、丙B9文献を当業者がどのように理解するかという引用発明の認定として判断された。
また、表示パネルの解像度より大きい表示データから表示パネルと同じ解像度の表示データを生成して表示し、スクロール操作により全画像を見ることができることが、本件優先日当時の技術常識と認定された。
本件優先日:平成16年12月24日。
【補足】原記事の「⇒公知文献に明示されていなくても、当業者は当然そう理解する。」について、判決は、丙B9文献には「「通信部12からCPU11に何らかの信号を送信する」ことの記載はない」として相違点6BDG’を認定した上で(判決12頁14~17行、18頁26行~19頁4行)、技術常識を適用することにより容易に想到できた(そもそも実質的な相違点ではない)とした(判決22頁13~18行)。原記事の「VRAM(画像メモリ)やビットマップデータ(ドットデータ)を使うのは技術常識である」は、判決上、丙B9文献の記載を当業者がどのように理解するかという丙B9発明の認定として判断されている(判決15頁7~13行)。また、判決が技術常識(本件技術常識)と認定したのは、表示パネルの解像度より大きい表示データから表示パネルと同じ解像度の表示データを生成して表示し、スクロール操作を行うことで全画像を見ることができることであり(判決22頁20~26行)、「縮小」は判決に記載がない。判断の基準時は本件優先日である(判決2頁15行、22頁8~12行)。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-93879.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)
令和6年(ネ)10001【ヤーン色配置システム】<清水響>
令和6年(ネ)10001【ヤーン色配置システム】<清水響>
進歩性×⇒控訴棄却
「ハイロー制御(High-Low Control)」= 模様を作る際、表面に出したい色の糸は高く残し、隠したい色の糸は低く引き戻す(あるいは引き抜く)従来技術。
本件発明= 隠れる糸がある分、実際に打ち込む数(効果的レート)を、完成品の外観上の密度(所望のレート)よりも「高密度」に設定し、それに合わせて裏打ち材料の送り速度を制御する。
⇒先行技術(乙4発明)において、糸の供給や基材(裏打ち材料)の送りを制御して所望のパターンを作るシステムは存在していた。
「ハイロー制御」を使って一部の糸を隠す場合、当然ながら、隠れた分だけ隙間ができないよう、実際の打ち込み密度(ステッチレート)を高くしないと、所望の外観密度が得られないことは自明である。
⇒ 「所望の外観密度」を得るために、隠れる糸の分を考慮して「実際の打ち込み密度」を高く設定し、基材の送り速度を調整することは、乙4発明に実質的に含まれ、仮にそうでなくても、乙4発明に技術常識を適用することにより容易に想到できた。
(原告が主張した「効果的ステッチレート」という概念は、新しい発明ではなく、従来の「ハイロー制御」を行う上で必然的に行われている調整を別の言葉で表現したに過ぎない。)
【補足】原記事の「当業者が当然行う設計事項にすぎない」について、判決は、「前記の認定判断は、乙4発明が実質的には訂正発明3を含むものであり、仮にそうでなくても、乙4発明に技術常識を適用することにより訂正発明3に容易に想到することができたことを理由とするものである」とし、設計的事項を理由とする判断ではない旨を明示している(判決42頁14~20行)。また、本判決は控訴審判決であり、主文は「本件控訴を棄却する。」である(判決1頁26行)。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-93894.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)
東京地判令和5年(ワ)70079【車両誘導システム】<國分>
東京地判令和5年(ワ)70079【車両誘導システム】<國分>
※原審は特許権侵害を認めた。⇒知財高判令和7年10月20日・令和7年(ネ)10043は、構成要件Fの非充足を理由に原判決中の被告敗訴部分を取り消し、請求を棄却した。以下は原審判断の紹介である。
構成要件A(ETC車専用出入口から出入りをする車両を誘導するシステム)の充足性に関し、要するに、SICにおいて、ETC車専用の出入口を利用しようとする車両に対し、バーの開閉や表示器を用いて、進入・退出ルート(レーンc)や退出・一般道ルート(レーンd)へ誘導している以上、本件発明の構成要件を満たすと認定した。
また、構成要件F(誘導手段等)やその他の構成要件についても充足を認めた。
(判旨抜粋)
被告各システムは、有料道路料金所、サービスエリア等に入るためにETC車専用入口を通過しようとする車両、有料道路料金所、サービスエリア等から出るためにETC車専用出口を通過しようとする車両を、上記各発進制御機及び⑧路側表示器によって、レーンc又はレーンdのいずれかに誘導するものといえるから、「ETC車専用出入口から出入りをする車両を誘導するシステム」に該当する。
【補足】原記事は、冒頭を「※特許権侵害を認めた。」「⇒控訴審判決で、逆転非充足」とし、判旨抜粋中の「通過しようとする車両、」を「通過しようとする車両又は」としていた。判決原文の該当箇所は「通過しようとする車両、」である(判決48頁26行~49頁6行)。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94081.pdf
控訴審判決要旨:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-point_pdf-94945.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)
東京地判令和5年(ワ)70380【棒状ライト】<髙橋>
東京地判令和5年(ワ)70380【棒状ライト】<髙橋>
非充足+サポート要件違反
被告製品1及び2は、「長押し」で記憶し、「短押し」で呼び出す構成であるため、同一の入力方法を要求する構成要件J4を非充足。
被告製品3及び4は、推薦色の発光を第2ボタンの「前記第1所定入力」の「検出」のみによって行うものではないから、「前記第1所定入力を検出した場合、…発光させる」との構成を非充足。
『本件明細書の発明の詳細な説明には、推薦色の記憶と推薦色での発光について、第2ボタンの異なる入力方法による構成によって課題を解決することが記載されているといえるが、推薦色の記憶と推薦色での発光について同じ入力方法による構成によって課題を解決することについては、記載も示唆もない。』
⇒サポート要件違反
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94101.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)
10立方センチメートルの液体及び/又は固体を運搬可能な容器
訂正で、A及び/又はBを、Bにしたときに、拡張・変更になることはあるのだろうか?
例えば、
10立方センチメートルの液体及び/又は固体を運搬可能な容器 とか?
逆パターンは、
文言を追加して拡張・変更になるパターン
例えば、 『電気的に』接続された…
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)
令和6年(行ケ)10043【弾塑性履歴型ダンパ】<本多>
令和6年(行ケ)10043【弾塑性履歴型ダンパ】<本多>
1.<甲1発明+甲2発明等>
原告は、一方向の動きに対応する「甲1発明(建築用ダンパ)」に、二次元的な動きに対応する「甲2発明(橋梁用ダンパ)」の配置を適用することは容易であると主張した。
しかし、甲1発明は、建築物の構面に沿った一方向からの荷重を前提としている。
甲2発明は、橋梁の二次元的な動きに対応するために複数方向に配置されるものである。
甲1発明に甲2発明の配置を適用する動機付けはなく、むしろ甲1発明の前提(一方向入力)からは、向きを異ならせて配置することに阻害要因がある。
- <甲12発明+甲13発明>
甲12発明は、剪断部が互いの向きを異ならせて一対配置された構成を備えていない。
甲13は縦リブの代わりに「窪み」を設けたものであり、「窪み」を一つとすることは、一つが窪みで他が平板となる構成であって、本件発明の「互いの向きを異ならせた一対の剪断部」を示唆するものではない。 - <サポート要件違反>
原告は、本件発明が「あらゆる方向からの荷重」に対応できるかのようにクレームされているが、明細書には全ての方向に対応できる裏付けがないと主張した。
⇒明細書の記載から、当業者は、従来の「一つの剪断部」しか持たないダンパの課題(一方向しか対応できない等)を、本件発明(二つの剪断部を向きを異ならせて配置)によって解決できると認識できる。
本件発明は「全ての方向からの荷重に対して最大限のエネルギー吸収を行うこと」までを求めているわけではない。
(判旨抜粋)
原告は、本件訂正発明1は、「入力により荷重を受けたときに、変形してエネルギー吸収を行う」とのみ特定され、どの方向からの荷重にも対応し得るかのように機能的に特定しているが、本件審決は、本件訂正発明1が全ての方向からのエネルギー吸収を行うことができるものではないことを認識していながらサポート要件に違反しないと判断しており、この点において本件審決には誤りがあると主張する。
しかしながら、本件明細書の記載によっても、本件訂正発明1が全ての方向からの荷重に対して最大限のエネルギー吸収を行うことまで求めるものとは認められないから、原告の主張は前提において誤っており、理由がない。
【補足】原記事の「甲12の波形鋼板は一つの連続した部材であり、構成が異なる」との理由は、判決の判断部分に記載がない。判決は、請求項2の「前記剪断部」は請求項1の「一対の剪断部」のうちの一つの「剪断部」をいうとした上で、「甲12発明は、そのような剪断部が互いの向きを異ならせて一対(二つ)配置された構成を備えるものとは認められない」とした(判決20頁10~14行)。また、原記事の「あらゆる方向からの荷重」との表現は判決にない。判決上の原告の主張は、本件訂正発明1を「どの方向からの荷重にも対応し得るかのように機能的に特定している」というものである(判決23頁20~24行)。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-93912.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)
知財高判令和6年(ネ)10048【電池】<中平>
知財高判令和6年(ネ)10048【電池】<中平>
損害賠償5億2928万5945円及び遅延損害金を認容し、差止め・廃棄等のその余の請求を棄却した原判決を維持した。
判決主文は「本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。」である。12億7765万円は附帯控訴における請求額であり、認容額ではない(判決1頁23行、2頁11~13行、3頁9~15行)。
本件明細書の記載から、発電要素は、巻回型に限定されず積層型も含む。「活物質未塗工部の外側面」「表面が接合される」のクレーム文言も、クリップ等の部材を介した接合を排除しない。
⇒充足
乙12のフランジ位置は、乙12発明の効果と不可分であり、具体的に開示された場所に限らないとは解されない。~組み合わせても、本件発明に至らない。
乙22は正負両極に端子接続部材を設ける構成A4に至らず、乙23は導電体要素5が電池外装体の外方にあるといえない。また、乙9発明(乙10発明・乙11発明も同様)にこれらを適用する動機付けも認められない。
⇒進歩性〇
(判旨抜粋)
乙12公報の特許請求の範囲【請求項1】の記載及び乙12公報の発明の詳細な説明の記載によれば、乙12公報に記載された「フランジ部」が、蓋体の下面に設けられており、蓋体の下面にはフランジ部の係合部に係合する回転阻止部が設けられていることにより、端子極柱に外力が加わっても端子極柱が回転することがないという効果を奏するものであると認められる…。
また、乙12公報の段落【0080】の記載によれば、同公報記載の発明の効果として、端子極柱に一体に形成された平面状フランジ部上面と蓋体下面の間に環状パッキングを介在させ、ポール部に環状押圧バネを係止させて端子極柱を蓋体に固定することによって、環状パッキングが上下方向に圧縮され、端子極柱を蓋板に対して確実に密閉しつつ固定できるとの効果もあると認められる。
このように、乙12公報に記載の発明は、フランジ部が蓋体の下面に設けられていることが、発明の効果と密接に関連しているものであるから、…乙12公報はフランジ部が蓋体の下面に設けられている構成を開示していると認められ、乙12公報に本件発明1の構成要件A4の構成に相当する構成が記載されているに等しいとはいえず、フランジ部を容器の内容に設置するか外方に設置するかが設計事項であるともいえず、乙9発明に乙12構成を適用しても、本件発明1の構成には到達しない。
【補足】原記事の「差止め+12.7億円を認めた一審判決を維持した。」は判決と異なる。原判決は、損害賠償として5億2928万5945円及び遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余の請求を棄却しており(判決3頁9~15行)、12億7765万円は附帯控訴における請求額である(判決2頁11~13行)。差止め・廃棄の請求は本件特許2に基づき控訴人製品2に対するものであり(判決2頁26行~3頁1行)、控訴人製品2は本件発明2の技術的範囲に属さず、均等も認められなかった(判決28頁23~25行)。また、原記事の「乙22・乙23はいずれも…正負両極に端子接続部材を設ける構成A4に到達せず」のうち、正負両極の点は乙22についての理由であり(判決38頁19~24行)、乙23については、導電体要素5が電池外装体の外方に配置されているといえないことから、構成要件A4に相当する構成とは認められないとされた(判決39頁13~16行、40頁2~3行)。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94167.pdf
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執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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【種苗法★】育成者権侵害を立証する鑑定の信用性が認められないとして、原告の請求を棄却した事例
東京地判令和7年4月24日(令和4年(ワ)第2829号)(中島基至裁判長)
◆判決本文
【事案の概要】
原告は、しいたけ(登録番号第17039号)の育成者権を有し、被告らの菌床の輸入及び譲渡並びに、しいたけの生産及び譲渡行為が、原告の育成者権を侵害するとして、民法709条及び719条1項に基づき、連帯して、損害賠償金5548万5724円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。
裁判所は、中核的争点を①原告自ら用意した試験管の培地上に菌糸を事前に混入させることができるかどうか、②原告が親株を廃棄した理由及びこれが適切であったかどうかに絞った。本判決は、原告が本件試験管に原告品種の菌糸を事前に混入していた可能性を十分に否定することはできず、これを前提とする本件鑑定の結果は、その信用性を欠くものと認めるのが相当であり、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がないとして、原告の請求を棄却した。
【従前の裁判例を踏まえた前提となる説明-種苗法における育成者権侵害の立証】
種苗法の品種登録制度により保護の対象とされる「品種」とは、特性の全部又は一部によって他の植物体の集合と区別することができ、かつ、その特性の全部を保持しつつ繁殖させることができる一の植物体の集合をいう(法2条2項)。これは、現実に存在する植物体の集合そのものを法による保護の対象とするものである。そして、育成者権の及ぶ範囲について,「品種登録を受けている品種(以下「登録品種」という。)及び当該登録品種と特性により明確に区別されない品種」を「業として利用する権利を専有する」と定める(法20条1項)。この「登録品種と特性により明確に区別されない品種」とは、登録品種と特性に差はあるものの、品種登録の要件としての区別性が認められる程度の明確な差がないものをいう。具体的には、登録品種との特性差が形質毎に設定される階級値(特性を階級的に分類した数値。例えば、登録品種がイチゴの場合の特性として、「果実の縦横比」、「果実の大きさ」、「果皮の色」等がある。)の範囲内にとどまる品種は、ここにいう「登録品種と特性により明確に区別されない品種」に該当する場合が多いと解され、特性差が上記の範囲内にとどまらないとしても、相違する項目やその程度,植物体の種類,性質等を総合的に考慮して,「登録品種と特性により明確に区別されない品種」への該当性を肯定することができる場合もあるというべきとされる。
そして、「育成者権の効力が及ぶ品種であるか否かを判定するためには,最終的には,植物体自体を比較して,侵害が疑われる品種が,登録品種とその特性により明確に区別されないものであるかどうかを検討する(現物主義)必要があるというべきである。」とされる(平成27年6月24日知財高裁判決・平成27年(ネ)第10002号育成者権侵害差止請求控訴事件、原審:東京地判平成26年11月28日・平成21年(ワ)47799号/平成25年(ワ)21905号)。なお、2022年施行の改正種苗法では、審査特性を用いた育成者権の及ぶ範囲の推定及び農林水産大臣による判定制度が設けられた。上記は従前の裁判例の説明であり、現行制度の下で常に現物比較のみが許されることを意味しない。
【判決要旨】
1.本件各植継行為等の信用性に対する判断
前記前提事実、前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、本件各分離行為、本件各植継行為及びその後複数回行われた植継行為(以下、併せて「本件各植継行為等」という。)により、被告各商品から分離されて植え継がれた菌糸につき、本件鑑定が行われたことが認められる。そこで、本件鑑定の信用性を判断する前提として、本件各植継行為等の信用性(争点1-1)を検討する。
・・・そうすると、原告は、種苗管理センター等の第三者機関ではなく、原告自らあえて自社内で事前に本件試験管を準備するなど、原告品種の菌糸を混入させるに十分な時間があったことを踏まえると、本件試験管に目視できない程度の大きさの原告品種の菌糸を事前に混入することが十分可能であったというべきである。のみならず、前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件各植継行為等の後、本件親株を自ら又は種苗管理センターをして廃棄し、その合理的な理由を説明していないのであるから、原告は、本件各植継行為等の事後的な検証を自ら不可能にさせていることが認められる。これらの事情を総合すると、原告が本件試験管に原告品種の菌糸を事前に混入していた可能性を十分に否定することはできず、これを前提とする本件鑑定の結果は、その信用性を欠くものと認めるのが相当である。
2.その他
本件各植継行為等は、本来的には、公平中立な第三者機関において実施されるべきものであり、仮に原告の自社内において実施せざるを得ない事情があったとしても、そもそも原告の自社内で実施する以上菌種の混在又は試験管のすり替えなどのおそれがあることは、被告らが主張するとおりである。その他に前記において説示したところを踏まえると、本件各植継行為等に当たっては、少なくとも、種苗管理センター等の第三者機関に当該試験管を用意させ、その親株も廃棄せずに保管しておくことは、裁判手続における鑑定の公平性、透明性の重要性に鑑み、必要不可欠であったというべきである。それにもかかわらず、原告は、あえてこれらを怠ったものであり、本件試験管を原告自ら用意する必要性及び相当性について合理的な説明をするものではなく、また、本件親株の廃棄についても、菌糸の植継ぎによって本件親株は不要となったから廃棄したにすぎず何ら問題がない旨説明するにとどまるのであるから、少なくとも本件各植継行為等は、上記において説示したとおり、信用性を欠くものであり、これを前提とする本件鑑定も、信用性を欠くというほかない。
【コメント】
本件は育成者権侵害訴訟における侵害立証のための証拠としての鑑定の信用性について言及した貴重な裁判例である。従前の裁判例が示す現物主義による立証では、登録品種と侵害が疑われる品種を比較栽培する鑑定が重要となる。2022年施行の審査特性による推定及び判定制度も踏まえ、事案に応じた立証方法を検討する必要がある。この点、種苗管理センター(https://www.naro.go.jp/laboratory/ncss/)は、種苗法15条の2第1項に基づき、国が行う品種登録の審査に必要な出願品種と既存品種との区別性等のデータを得るための「栽培試験」を実施する機関であり、比較栽培試験について極めて専門性が高い。そのため、訴訟当事者は、公平中立な第三者機関として種苗管理センターに鑑定を依頼する場合が多いと考えられるが、本件判決からは、その際に試験管の用意を鑑定実施機関に依頼する、鑑定後の親株の保管も第三者に依頼する等極めて慎重に鑑定を実施することが重要であることが理解される。
【補足】参照:農林水産省「種苗法の一部を改正する法律の概要」 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/attach/pdf/shubyoho-22.pdf
【補足】種苗法の一部を改正する法律(令和2年法律第74号)により、品種登録簿に記載された登録品種の審査特性により明確に区別されない品種を当該登録品種と特性により明確に区別されない品種と推定する規定(種苗法35条の2)と、農林水産大臣の判定制度(同法35条の3)が設けられ、令和4年4月1日に施行された。これらの規定により、比較栽培鑑定以外の立証手段も設けられている。本判決は、これらの規定に言及していない。また、令和4年4月1日以降、研究機構(種苗管理センター)が栽培試験を行う根拠規定は種苗法15条の2第1項である。さらに、判決が必要不可欠としたのは、「本件各植継行為等に当たって」第三者機関に試験管を用意させ、親株も廃棄せずに保管しておくことであり(判決22頁15~19行)、親株の保存は植継行為等の事後的な検証のためとされている(判決22頁3~7行)。
【Keywords】育成者権、鑑定の信用性、現物主義
※本稿の内容は、一般的な情報を提供するものであり、法律上の助言を含みません
文責:弁護士・弁理士 外村 玲子(第二東京弁護士会)
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令和6年(ネ)10056【洗浄作業用バン型自動車】<中平>
令和6年(ネ)10056【洗浄作業用バン型自動車】<中平>
*被控訴人が、KCSの販売する被控訴人製品1とは別の被控訴人製品2について販売の申出をした。
製品2も原審で侵害と差止め・廃棄が認められ、被控訴人は控訴していない。⇒その販売の申出が、KCSによる製品1の販売を援助し又は容易にしたとは認められず、共同不法行為は否定された。
(判旨抜粋)
被控訴人が、KCSから被控訴人製品2の納入を受けて、KCSが販売する被控訴人製品1と異なる「ECO ACE JET」の名称で販売の申出をしたとしても、それによって、KCSによる被控訴人製品1の販売を援助し又は容易にしたと認めることはできない。
【補足】原記事の「*侵害者製品とは別の製品について、販売の申出をした。」について、被控訴人製品2も、原判決で本件発明の技術的範囲に属すると判断され、被控訴人に対する譲渡等の差止め及び廃棄が認容されており(判決2頁26行~3頁4行)、被控訴人は控訴していない(判決4頁2~3行)。また、判旨抜粋の末尾には、判決上「(なお、この点は、仮に、被控訴人製品2の車両及び洗浄装置の構造、性能等が、被控訴人製品1の車両及び洗浄装置の構造、性能等と同一であったとしても変わらない。)」との括弧書きが続く(判決11頁7~9行)。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-93950.pdf
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執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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【新着YouTube】充足論(典型的な文言充足以外)(特許裁判例事典、第4版の読み合わせ)2025/11/5
【新着YouTube】充足論(典型的な文言充足以外)(特許裁判例事典、第4版の読み合わせ)2025/11/5
<均等論・数値限定・用途発明など、充足論を巡る主要判例を、これ一本で一気にキャッチアップ>
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執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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【契約】東京地判令和4年(ワ)9422<澁谷>
【契約】東京地判令和4年(ワ)9422<澁谷>
被告は、「客観的に支払不能の状態」(本件契約17条2項)であったと認定され、解除が有効とされた。
『証拠(甲27、28、30)によれば、被告は、遅くとも令和7年2月7日 の時点で、客観的に支払不能の状態にあったと認めることができる。』
【補足】被告は、解除事由について「積極的に争わない。」としている(判決3頁3行)。判決は、共同開発・業務提携契約である本件契約が令和7年2月7日解除により終了したとして、契約金2億1000万円及び利息の支払を命じた(判決1頁10~11行、2頁1~2行、3頁7~10行)。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94059.pdf
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執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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東京地判令和5年(ワ)70449【締結金物】<髙橋>
東京地判令和5年(ワ)70449【締結金物】<髙橋>
「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため」というクレーム文言は、発明の構成を限定しない。
(『前面部と後縁部を複数の枝状部で一体化する構成により果たそうとする目的ないし必然的に得られる作用・効果を示すものにすぎず、発明の構成を限定する意味をもたない。』)
⇒意匠公報に基づいて、新規性×
(『甲5発明の柱材連結金具の複数の細板部は、本件発明の締結金物の複数の枝状部と形状において同一の構成を備えることにより、「過大な荷重が作用した際に変形を誘発させるため」と表現される作用・効果を必然的に得られる…。』
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94135.pdf
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大阪地判令和5年(ワ)10217【立体網状繊維集合体】<松阿彌>
大阪地判令和5年(ワ)10217【立体網状繊維集合体】<松阿彌>
職務発明対価請求事件
⇒棄却
(判旨抜粋)
本件褒賞規定は、その制定及び改訂の過程において、一般的な勤務規則等が参照され、知的財産に知見を持つ者の意見も得た上、従業員等に案が開示され、意見聴取等を経て制定されたものであるから、被告においてされた職務発明の対価につき、適法な手続を経て定められた本件褒賞規定によって支払うことは不合理であると認めることはできない。…
被告製品は、汎用的な立体網状繊維集合体として、クッション材などに利用される余地はあるとうかがわれるものの、原告らが超過売上高の根拠として主張する寝具用マットレス用途においては、一旦は商品化が実現し、一定期間の販売実績は上げたものの、マットレスとしての性能においては低位の評価を受け、商品化は終了したものとうかがわれる。…
このような状況において、被告が、実施褒賞金の支給要件である「工業所有権の行使により、会社に対し大きな貢献をなした場合に」該当せず、本件各発明に対する実施褒賞を支給しないと判断したことに不合理な点はない。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94104.pdf
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執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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【職務発明】東京地判令和5年(ワ)70495<中島>
【職務発明】東京地判令和5年(ワ)70495<中島>
*共同発明者と認められなかった。
~原告が主張した発明完成時期を裏付ける的確な証拠がなかった。
(判旨抜粋)
原告は、原告発明の完成時期が原告説明書を作成した時期よりも前である旨主張するものの、これを裏付ける的確な証拠がない上、本件発明は、そもそも原告が関与することなく着想し及び具体化されたものである…。
その他に、当裁判所は、当事者双方による主張立証の2往復終了後においても、本件発明に関する原告の関与の実態が明らかではないとして、当事者双方に対し、2回にわたり繰り返し釈明…をしたところ、その結果を踏まえて十分に検討しても、本件発明は、原告の関与の実態等に鑑みると、原告の関与なく着想及び具体化されたものであり、原告が本件発明の発明者又は共同発明者であると認めることはできない。
【補足】判決上、原告は発明完成時期を主張している(判決15頁17~18行)。ただし、判決の主たる理由は、「本件発明は、そもそも原告が関与することなく、Bi、Diらが独自に着想し及びその具体化をしたものと認めるのが相当である」との認定である(判決14頁21~23行)。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94170.pdf
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大阪地判令和4年(ワ)11405【複素環誘導体】<武宮>
大阪地判令和4年(ワ)11405【複素環誘導体】<武宮>
【職務発明の対価請求】約9400万円認容
※職務発明規程が黒塗りで不明だが、本発明に適用されなかった。
⇒平成16年改正前特許法
(理由)被告には職務発明規程が存在したが、本件発明のようなケースに適用する合意があったとは認められず、法定の「相当の対価」を算定すべきとされました。
自己実施分(国内販売及びアクテリオンに対する金額を算定基礎に含む):
(超過売上高)×(仮想実施料率 5.9%)×(1 - 使用者貢献度 99%)×(共同発明者の持分 1/3)
他者実施分(ライセンス収入):
(ライセンス収入)×(1 - 使用者貢献度 99%)×(特許の貢献割合 25%※)×(共同発明者の持分 1/3)
<※裁判所は、契約の対象等を踏まえ、本件特許の貢献割合は25%を超えないと判断した。公表判決では契約内容の一部が非公開とされている。>
(判旨抜粋)
本件職務発明規程は、●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
しかし、本件職務発明規程には、本件発明のように、上記定めに記載された発明に該当しない発明にも同規程が適用される旨の定めはなく、本件記録上、原告と被告との間で、上記のような発明に本件職務発明規程を適用する旨の合意が成立したと認めるに足りる証拠もない。
【補足】原記事の「自己実施分(国内販売)」について、判決は、日本国内で販売した本件医薬品の売上高に加え、アクテリオンに対する金額(判決上、内容は黒塗り)についても「相当対価の算出基礎となる売上高に含めるべきである。」とした(判決30頁17~21行、31頁6~7行)。また、ライセンス契約の対象の具体的内容は判決上黒塗りであり、公表判決では「ノウハウやデータ提供」とは特定されていない。判決は、本件技術情報、安全性監視体制の確保等を考慮し、特許の貢献割合は「25%を超えるものではない」とした(判決35頁2~24行)。約9400万円の認容額は、既払金651万9000円を控除した額である(判決36頁7~12行)。
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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令和5年(ネ)10107『PCSK9(二次訴訟)』<中平>
令和5年(ネ)10107『PCSK9(二次訴訟)』<中平>
*二次訴訟で、新たにB博士及びC博士の供述書・実証実験等を提出し、サポート要件違反となった。
アムジェンの特許発明は、具体的な抗体の構造(アミノ酸配列)を限定するのではなく、以下の機能で定義される抗体である。
1.中和する: PCSK9とLDLRの結合を阻害する。
2.競合する: アムジェンが作った特定の「参照抗体(21B12等)」と、PCSK9への結合を争う(競合する)。
裁判所は、「競合」には以下の2つのパターンがあると認定した。
1.直接競合(Direct Blocking): 参照抗体と「同じ場所」に結合して邪魔をする。
2.立体障害による競合(Steric Hindrance): 参照抗体とは「違う場所」に結合するが、抗体のサイズが大きいため、物理的に邪魔をして結合を阻害する。
本件明細書には、「同じ場所に結合する抗体(上記1)」については記載があったが、「違う場所に結合して立体障害で邪魔をする抗体(上記2)」が実際に中和作用を持つかどうかについての十分な開示(裏付け)がない。
⇒サポート要件違反
【被控訴人の主張】被控訴人は、Fab断片の中和・競合に関する条件を追加しても、立体障害によって競合し、結合部位が異なる抗体が含まれる可能性は変わらない旨を主張した(判決41頁19行~44頁2行)。【補足】訂正事項3・4は抗体のFab断片について中和・競合の条件を追加するものであり、発明の対象をFab断片自体に限定するものではない(判決12頁20行~13頁3行)。
【裁判所の判断】裁判所は、訂正事項1・2が特許法134条の2第1項ただし書所定の訂正目的に該当しないとし、「その余の訂正事項について判断するまでもなく、控訴人による訂正の再抗弁は、理由がない。」と判断した(判決67頁5~8行、17~19行)。したがって、Fab断片に関する訂正事項3・4を個別に審理した上で訂正後のサポート要件違反を判断したものではない。
【補足】原記事の一文「訂正によりFab断片に限定しても、「立体障害によって競合するが、結合部位が異なる抗体」が含まれる可能性が残る。」は、被控訴人の主張(判決41頁19行~44頁2行)を裁判所の判断のように記載し、訂正事項3・4を「Fab断片に限定」と要約した記載である。また、原記事の「教授の技術意見書」について、判決が依拠したのはB博士及びC博士の供述書(実証実験)であり(判決54頁25行~55頁10行)、両名が教授である旨の記載は公表判決にない。原記事の「同じ場所」は、判決上「参照抗体がPCSK9と結合する部位と同一の又は重複するPCSK9上の部位」である(判決49頁10~11行)。サポート要件違反の主たる理由は、参照抗体と競合する抗体であれば参照抗体と同様の機序で中和するとはいえないこと(判決53頁13行~54頁4行)及び実証実験で参照抗体と競合する抗体の約80%以上が結合中和性を有しなかったこと(判決55頁2~10行)である。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94092.pdf
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東京地判令和4年(ワ)7976号【通信機器】<中島>
東京地判令和4年(ワ)7976号【通信機器】<中島>
*標準必須特許~侵害
⇒差止請求は、権利濫用(当事者間で合意に至らなかったのは料率の隔たりによるものであり、被告にライセンスを受ける意思がないとはいえない。)
⇒損害額は、「被告製品の売上高 × LTE規格全実施料率 ÷ LTE規格全特許数(1300件) × 本件特許数(2件を同一ファミリーとして1件と計算)」
「LTE規格全実施料率」については、LTEのみ対応製品は9%、5G対応製品(LTEの貢献度が相対的に下がるため)は8%。
侵害プレミアム(特許法102条4項)による増額は、被告がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有していたため認められなかった。
【補足】本件特許は本件第1特許及び本件第2特許の2件であり(判決2頁9~10行)、同一の特許ファミリーに属するため、1300件と単位を合わせて「1件として計算すべき」とされた(判決115頁18~22行)。侵害プレミアムによる増額が認められなかったのは、被告がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有していたことによる(判決112頁18~22行)。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94200.pdf
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執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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令和6年(ネ)10074【電子タバコ用充填物】<増田>
令和6年(ネ)10074【電子タバコ用充填物】<増田>
「切込み」(構成要件B)の意義について、各種辞書の記載を検討すると、「切り込む」、「切り目を入れる」、「切る」という能動的な行為が想定され、さらに、それが刃物によることを明示する例が複数存在する。
したがって、「切込み」とは、刃物を用いて人為的・能動的に「切り目」ないし「切れ目」が形成された構造ないし状態を意味する。
本件明細書において、切込みの形成手段としてカッター刃、カミソリの刃、ロータリーカッター等が例示されているのみであり、刃物以外による形成手段についての記載も示唆もない。
⇒被告製品について検討すると、たばこスティック(ロッド)の長手方向に沿ってたばこ基体の表面に略平行に3本形成された筋状部分は、捲縮加工工程における捲縮条件を制御することにより形成されたものであり、刃物によって形成されたものではない。
⇒非充足(原審・東京地判令和5年(ワ)70407と同じ理由)
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令和6年(行ケ)10109【介助機】<本多>
令和6年(行ケ)10109【介助機】<本多>
再審請求の対象は原審決と解されるところ、第4次再審審決より前に確定した原審決が第4次再審審決と抵触することをもって、特許法171条2項が準用する民訴法338条1項10号による原審決の再審事由とならない。
仮に、原告が、再審請求の対象を第4次再審審決とし、これが原審決と抵触することを再審事由として主張するものと解するとしても、原審決は拒絶査定不服審判請求を不成立とする審決であり、第4次再審審決は再審の請求を不適法なものとして却下する審決であるから、第4次再審審決は原審決と抵触せず、原告の請求には理由がない。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94030.pdf
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執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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東京地判令和6年(行ウ)5001<澁谷>
東京地判令和6年(行ウ)5001<澁谷>
判決日:令和7年4月18日。
国際特許出願(PCT出願)を行った原告が、特許法で定められた「翻訳文」の提出前に「出願審査請求」を行ったところ、特許庁より当該請求を不適法として却下されたため、その処分の取消しを求めた。
⇒却下
特許法184条の17は、外国語特許出願について、翻訳文提出等の手続をした「後」でなければ出願審査請求ができないと規定している。
この規定が出願審査請求前に翻訳文を提出することを手続要件とするものであり、この先後関係の瑕疵(誤り)は、事後的に翻訳文を提出しても治癒されない。
本件において、審査請求時に翻訳文が未提出であったことは明らかである。
仮に裁判所が本件処分を取り消したとしても、当該審査請求が同法に違反している事実に変わりはなく、瑕疵が治癒される余地もないため、特許庁は再度却下せざるを得ないから、本件処分を取り消しても原告に実益はなく、訴えの利益は存在しない。
【補足】原記事の見出しは「東京地決令和6年(行ウ)5001」とするが、本件は判決である(判決1頁1行「令和7年4月18日判決言渡」)。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94034.pdf
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執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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令和6年(行ケ)10022【…抗微生物剤】<本多>
令和6年(行ケ)10022【…抗微生物剤】<本多>
主引用発明の治療対象を(足白癬または皮膚真菌症から)「爪白癬」とし、相違点に係る構成とすることが容易想到であるためには、
本件出願日当時の技術水準に照らし、
当該治療剤を爪甲に単純塗布したときに、有効成分であるKP-103が爪甲の内部まで浸透、透過し、感染部位である爪甲下層及び爪床に送達され、治療効果を発揮することが合理的に期待できることを要する。
⇒医薬用途発明の進歩性〇
(判旨の要約)
(1)本件出願日当時の技術常識としては、①トリコフィトン・ルブルム及びトリコフィトン・メンタグロフィテスが足白癬と同様に爪白癬の原因菌の大半を占めていること、②外用剤による爪白癬の治療を効果的に行うには、抗真菌剤を爪甲の角質内に浸透させ、感染部位に送達させる必要があるが、爪甲の性質上、抗真菌剤がその内部まで浸透、透過しにくいという障害があって、爪白癬の外用剤での治療は非常に困難とされていた一方、経口剤にも副作用の問題があり、外用剤の開発が待たれていたこと、③爪と毛髪が、いずれも硬ケラチンを含み、アミノ酸組成も互いに類似することが、それぞれ認められる。
(2)本件出願日当時に知られていた技術的知見としては、④外用抗真菌剤を感染部位に送達させるための試みとして、ネイルラッカー剤の開発や、爪甲を化学的又は外科的に除いて抗真菌剤を塗布し、密封包帯法(ODT)と併用する治療等が行われていたこと、⑤抗真菌剤であるチオコナゾールを外用爪白癬治療剤として評価する甲6試験が実施されたこと、⑥KP-103は、ヒト毛髪(ケラチン)を添加しても、抗トリコフィトン・メンタグロフィテス活性が減少せず、ケラチンに対する低い吸着、高い遊離といった性質を有すること、⑦抗真菌薬の角質への吸着性と角質吸着時の活性の低下について、ヒト毛髪を用いて評価する研究があったことが、それぞれ知られていたと認められる。
(3)(判旨の要約)主引用発明(甲1-1発明)の外用真菌症治療剤の治療対象を「爪白癬」とし、相違点に係る本件訂正発明の構成とすることが当業者において容易に想到できたというには、本件出願日当時の技術水準に照らし、当該治療剤を爪甲に単純塗布したときに、有効成分であるKP-103が爪甲の内部まで浸透、透過し、感染部位である爪甲下層及び爪床に送達され、治療効果を発揮することが合理的に期待できることを要する。上記(1)及び(2)の技術常識、技術的知見を総合すると、本件出願日当時、当業者において、そのように合理的に期待できるとはいえない。また、本件明細書等に示された本件訂正発明の効果は、本件出願日当時の技術常識に照らすと、当業者において予測することが困難であった。したがって、本件訂正発明は、本件出願日当時、当業者において甲1-1発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
【補足】(3)の第2文以下は、判決原文ではなく判旨の要約である。また、原記事の「外用皮膚真菌症」について、甲1-2発明の治療対象は「皮膚真菌症」である(判決34頁4~5行)。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94078.pdf
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令和6年(ネ)10029『特許を受ける権利の確認請求』<増田>
令和6年(ネ)10029『特許を受ける権利の確認請求』<増田>
判決日:令和7年4月24日。
*慶應義塾大学環境情報学部を卒業し、起業したが、臨床上の知見はない。
⇒発明者性×
(協力者である教授が発明者。)
<発明者性(職務発明)>
当該発明における技術的思想の創作行為、とりわけ従前の技術的課題の解決手段に係る発明の特徴的部分の完成に現実に関与することが必要である。
本件発明1-3の特徴的部分は、血管内の瘤の破裂を予防するため瘤を塞栓するプッシャワイヤとメッシュ部とを備えた血管プラグにおいて、サイズの異なる複数の血管プラグを用意しなければならず、また、メッシュ部の急激な拡張により瘤を損傷する危険があるという課題があったため、ステントの先端部が、非収納時には、カテーテルの先端部から押し出され、外向きにカールしながら拡張する構成を採用したこと、それにより、瘤に対するサイズの自由度が高く、また、分岐部動脈瘤に損傷を与えないことにある。
Y1は文系の学部を卒業し、金融機関に勤務した後、理学博士の兄と共に第1審原告会社を立ち上げたが、臨床上の知見はない。
一方、協力者であったA教授は、臨床経験豊富であり、A教授の研究ノートには、本件発明1-3の課題と解決手段が明確に記載されており、本件発明1-3の特徴的部分の完成に現実的に関与したのは、A教授と認めるのが相当である。
<PCT出願に係る特許を受ける権利の確認請求>
第1審原告は、本件訴訟において特許を受ける権利の確認判決を得た後、特許協力条約の締約国の中から現実に特許を取得したい国や地域を選択して、新たな出願又は権利の回復の手続を求めていくとする。しかし、属地主義の原則に照らし、特許を受ける権利が諸外国においてどのように取り扱われ、どのような効力を有するかについては、当該特許を受ける権利に基づいて特許権が登録される国の法律によって決せられると解されるところ、当該発明につき、いかなる外国においても新たな出願又は国内移行等がされておらず、その具体的な予定も明らかにされていない現時点において、当該発明につき特許を受ける権利を確認することについて、紛争の成熟性を認めることはできない。
【補足】原記事の見出しは「令和7年(ネ)10029」とするが、判決の事件番号は「令和6年(ネ)第10029号」である(判決1頁2行)。原記事の「文系の学部」は判決にない。判決は、Y1が「慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、銀行勤務を経て」起業したと認定し(判決23頁11~13行)、「第1審被告Y1にそのようなバックグラウンドがあるとは認められない」とした(判決25頁17~21行)。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94055.pdf
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令和5年(行ケ)10078【オーディオコントローラ】<清水>(被告:ピクシーダスト)
令和5年(行ケ)10078【オーディオコントローラ】<清水>(被告:ピクシーダスト)
C(受託者)は、本件発明とは別の課題を解決しただけ。
⇒冒認・共同出願違反不成立
(補足:AとBは委託者(PDT社)側である。)(判旨抜粋)
AとBは、PDT社が原告に本件試作機を発注する前から、「フェーズドアレイスピーカー」の着想を得ていたと認められる。…AとBは、超音波の研究者であって、従来技術であるパラメトリックスピーカーの基本原理も認識していたと認められ、また、一定の制約があるとはいえ、焦点位置で可聴音を発生させることができる本件実験機を開発していたのであるから、AとBの着想は、原告が主張するような単なる思い付きのレベルではなく、具体的な解決手段を伴う着想であった…。…
しかし、本件試作機が備える前記⑶アの各機能のうち、可聴音の波形が焦点位置で集束するような位相差で放射し、焦点位置で可聴音の波形を揃える機能…は、可聴音の音質を向上させるものではあっても、本件発明の技術的課題は、使用環境の制約の除去であって、可聴音の音質の向上ではないから、本件試作機の当該機能は本件発明の特徴的部分に当たるものではない。
その余の点も、本件発明の特徴的部分を実施する場合における具体的・客観的な態様の一つにすぎず、その内容に応じ、本件発明とは別の課題を解決したものということができることがあるとしても、本件発明の課題を解決したということはできない。
すなわち、本件試作機の各機能は、本件実験機の開発によって、本件発明の特徴的部分は当業者が実施することができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成され、本件発明が完成していたとの前記認定を左右するものではない。
以上によれば、Cらは、本件発明の特徴的部分を当業者が実施することができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成した者ということはできず、本件発明の発明者(共同発明者)ではない…。
【補足】判決が本件発明の発明者と認めたのは、特許公報記載の「Aら」(A及びD)である(判決3頁15~16行、7頁5~7行、45頁11~13行)。また、判旨抜粋の「以上によれば、本件試作機が備える…各機能のうち、」は、判決原文では「しかし、本件試作機が備える前記⑶アの各機能のうち、」である(判決44頁22行)。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94070.pdf
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令和5年(ワ)70563【取引管理システム】<澁谷> (キーソフト v. サンカクキカク)
令和5年(ワ)70563【取引管理システム】<澁谷>
(キーソフト v. サンカクキカク)
本件発明における「中間取引者」とは、商品受取者である「下流取引者」と商品発送者である「上流取引者」の中間に介在し、特定の商品について段階的な売買取引、すなわち下流取引者から対象商品の売買について発注を受け、それを踏まえて上流取引者に当該商品の売買について発注を行う者を意味する。
被告システムは「ふるさと納税制度」に係るものであるところ、ふるさと納税は経済的利益の無償の供与(寄附)であり、返礼品の提供も寄附への御礼としての無償行為であって、寄附金と対価関係を有しない。
したがって、寄附者との間に売買取引(有償取引)があるとは認められず、地方団体は「中間取引者」に該当しない。
また、被告システムの動作としても、寄附者の申込みにより地方団体と事業者にメールで通知されるものの、地方団体が発注情報を受領した上で事業者へ通知を行うことは予定されておらず、地方団体が寄附者からのメールを踏まえて事業者に発注指示を行う関係にはない。
よって、地方団体は段階的な商品取引者とはいえず、この点でも「中間取引者」には該当しない。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94153.pdf
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東京地判令和5年(ワ)70594【マットレス】
東京地判令和5年(ワ)70594【マットレス】
本件発明における「圧着」とは、強く圧迫してくっつくことまでを要するものではなく、手足等の落ち込みを防ぐ目的から、「クッション体同士に隙間が生じない程度に相互に何らかの圧力がかかる状態」をいうと解される。
原告の測定により、被告製品1及び4の中材間には0.2MPa以上の圧力がかかっていることが認められ、他の被告製品も同様であると推認されるため、被告製品は「圧着」の要件を充足する。
⇒充足
(判旨抜粋)
ア 本件発明においては、マットレスカバーが複数のクッション体を圧着させながら嵌め込み可能である有底筒状のカバー部材を有するものとされ(構成要件G)、複数のクッション体は、圧着した状態で前記マットレスカバーに組入れられているものとされている(構成要件H)。
そして、「圧着」は「強く圧迫してくっつけること」という意味を有するが(広辞苑第七版。乙1)、「圧」が「おさえる。おしつけて動けなくする」を意味する(広辞苑第七版付録。甲15)ことからすると、「圧着」には「押さえてくっつく」といった程度の意味があるともいえる。
イ 次に、本件明細書をみると、「圧着」に関して、「例えば3個のクッション体を組入れる場合、まず底面側カバーの長さ方向両側の内面に2つのクッション体の側面をそれぞれ押し当てておき、これらのクッション体の間に、残りのクッション体(山折りしておいても良い)を下向きに押し込むことにより、全てのクッション体を圧着した状態でマットレスカバーに容易に組入れ
ることが可能となる。」(【0017】)との記載や、「図5は、マットレス1について、底面側カバー10bにクッション体21~23を圧着させながら収容する様子の一例を示す概念図である。」(【0050】)、「図5には、マットレスカバー10内に複数のクッション体21~23を組入れる方法として、底面側カバー10bの長さ方向両側の側面部13(側面部13の前側と後側)を利用する方法が例示されている。この方法では、まず側面部13の前側と後側に2つのクッション体21、23の側面をそれぞれ押し当てて、その後、クッション体22を鉛直方向下向きに押し込む。この方法により、複数のクッション体21~23を、圧着した状態でマットレスカバー10に容易に組入れることができる。」(【0051】)との記載があり、マットレスカバー内に複数のクッション体を組入れる方法に係る【図5】をみると、2つのクッション体の間に、別のクッション体が下方向に押し込まれて、マットレスカバー内に3つのクッション体が隙間なく接して設置されていることが図示されているものの、クッション体同士が相互に、左右方向に強い圧力をかけるというような表現はされていない。
このことに加え、前記1(2)のとおり、本件発明が、手足等が溝に落ち込みにくいマットレスを提供するという効果を奏するものであるところ、本件明細書の記載によると、上記効果は、「マットレスカバーの周面部(側面部)には伸張防止部材が設けられている」(【0011】)ことによるものであって、クッション体同士が強く圧迫してくっついていることによるものとはされて
いないことを総合すると、本件発明では、手足等が落ち込みにくくなるように、クッション体の境界部に手足等が落ち込むような隙間が生じていないことは予定されているといえるものの、クッション体同士が強く圧迫してくっついているような状態にあることまで予定されていると認めることはできない。
そうすると、本件発明における「圧着」とは、クッション体同士に隙間が生じない程度に相互に何らかの圧力がかかる状態であることをいうものと解するのが相当である。
【補足】原記事の見出しは「<勝又>」とするが、判決上、勝又来未子は「裁判官勝又来未子は転補のため、裁判官吉川慶は退官のため、いずれも署名押印することができない。」と表示された陪席裁判官である(判決55頁)。また、原記事の「被告製品の中材間には0.2MPa以上の圧力がかかっている」について、測定実験の対象は被告製品1及び4であり、他の被告製品は同様であると推認された(判決37頁8~15行)。本判決の控訴審(知財高判令和7年11月17日・令和7年(ネ)第10045号)は、控訴を棄却した(同判決1頁1~3行、21行)。控訴審判決:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-95075.pdf
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94144.pdf
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令和5年(ネ)10114【キューブコーナー素子を有する層状体および再帰反射シート】<中平>
令和5年(ネ)10114【キューブコーナー素子を有する層状体および再帰反射シート】<中平>
=令和5(行ケ)10102
*数値限定の技術的意義が明細書に記載なし
⇒設計事項
(判旨抜粋)
本件明細書には、「素子は、好ましくは、1分~60分の角度の二面角誤差を有する。」…と記載されているが、好ましいとする根拠については何ら記載されていない。
一方で、本件明細書に記載された…全ての実施例において…0.1分、-0.5分、0.8分等の1分未満の二面角誤差の実施例が記載されており、これらについては、いずれもスポットパターンは均一に分布し、本件各発明の作用効果を奏するものとされている。上限値に関しても、上記のとおり構成要件1-C4、4C-1はこれを60分とするところ、実施例に示された二面角誤差の最大値は-19.8分であり…、上限値を60分とする根拠に係る記載もない。さらには、本件明細書に記載された実施例から、上記構成要件記載の数値範囲内のみからなるスポットパターンを抽出してこれを比較したとしても、スポットパターンが均一に分布するとの作用効果を奏することが示される実施例は存しない…。
そうすると、本件各発明の構成要件に記載された上記二面角誤差の数値範囲には、特段の技術的意義が認められないというほかなく、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないものと認められる。
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令和5年(行ケ)10121【撮像装置】<増田>
令和5年(行ケ)10121【撮像装置】<増田>
請求項における「直交する」という記載は、第1軸と第2軸の交差角度を規定するものではなく、ディスプレイの長方形の二辺が角で直角に交わっている位置関係を示したものである。
図4Bにおいて軸Aが動くように描かれているのは明らかな誤記であり、当業者は正しい構成(軸Aは追従しない)を容易に理解できる。
⇒サポート要件〇
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94108.pdf
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令和5年(ワ)70004【携帯情報通信装置】<髙橋>
令和5年(ワ)70004【携帯情報通信装置】<髙橋>
(関連事件:令和5年(ワ)70035
、令和4年(ワ)70131)
本件特許の優先日当時、乙6発明に接した当業者にとって、乙6発明に前記アの技術常識を適用し、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報を外部から取り込むための構成として、通信部12が当該画像情報を伝達する無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、CPU11に送信し、CPU11が当該デジタル信号を受信するとの相違点①に係る構成を想到することは容易であった。
⇒進歩性×
【補足】原記事の判旨部分の「当業者にとって、乙6発明に…」は、判決原文では「乙6発明に接した当業者にとって、乙6発明に前記アの技術常識を適用し、」である(判決81頁16~17行)。判決は、相違点②(画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータの読出し)についても容易に想到できたとし(判決83頁15~20行)、本件特許は進歩性を欠くとして、特許法104条の3第1項により請求を棄却した(判決83頁22~25行)。原記事の「=令和5年(ワ)70035」「=令和4年(ワ)70131」は、判決に記載がない。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94112.pdf
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東京地決令和5年(ヨ)第30214号仮処分命令申立事件<杉浦>
東京地決令和5年(ヨ)第30214号仮処分命令申立事件<杉浦>
【補足】原記事の記載は「★同じ杉浦裁判長で、本訴は、特許権者逆転敗訴」である。これは、同じ杉浦裁判長による仮処分決定(差止め認容)と本訴・反訴事件の判決(令和5年(ワ)70527。本訴却下・反訴棄却)とで結論が異なったという意味であり、控訴審で原判決が取り消されたという意味ではない。
東京地判令和5年(ワ)70527【環状タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤】<杉浦> | 弁護士・高石秀樹の特許チャンネル(弁護士/弁理士/米国CAL弁護士、PatentAgent試験合格)
【決定の記載】公表された決定写し(正本)には「債権者の申立てを相当と認め」とあるほかに具体的な理由の記載はない。決定写し: https://www.bms.com/assets/bms/japan/pressrelease/20231129-pdf.pdf
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東京地判令和5年(ワ)70527【環状タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤】<杉浦>
東京地判令和5年(ワ)70527【環状タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤】<杉浦>
「延長された特許権の効力範囲」は、政令処分の対象となった物(先発医薬品「スプリセル錠」)及びこれと「医薬品として実質同一なもの」に及ぶ。
医薬品の有効成分のみを特徴とする特許発明において、対象製品が有効成分以外の成分で異なる場合、その変更が「周知・慣用技術」に基づくものであれば実質同一に含まれる。
本件において、処分の対象となった「スプリセル錠」は有効成分が「ダサチニブ水和物」で添加剤としてPEGを含むのに対し、原告製品は有効成分が「ダサチニブ(無水物)」でPEGを含まずカルナウバロウ等を添加しているという差異がある。
この差異は、原告製品が「無水物」を採用したことに起因する安定性や溶出性の課題(無水物は水和物より光安定性が低く溶解度が高い等)に対処するため、原告独自の技術等に基づくことがうかがわれるとされた。
具体的には、PEGをHPCに転換し、コーティング剤の成分を調整(カルナウバロウの添加等)したことは、周知・慣用技術に基づくと認めるに足りる的確な証拠がなく、原告独自の技術等に基づくことがうかがわれると判断された。
したがって、原告製品はスプリセル錠と「医薬品として実質同一」とは認められず、延長された本件特許権の効力は原告製品には及ばない。
⇒沢井製薬の本訴(消極的確認)に係る訴えはいずれも却下し、被告特許権者の反訴(損害賠償)請求は棄却した。
【補足】判決の主文は、「本件本訴に係る訴えをいずれも却下する。」「本件反訴に係る被告の請求を棄却する。」である(判決1頁8~9行)。原記事の「原告が独自の工夫を行った結果である」「積極的な製剤設計によるものと推認される」について、判決は、添加剤の付加・転換が「周知・慣用技術に基づくものと認めるに足りる的確な証拠はなく」、原告が自己の技術等に基づいてこれを行ったことが「うかがわれる」としたものである(判決38頁16~24行)。また、原記事の「その変更が「周知・慣用技術」に基づくものであれば実質同一に含まれる」について、判決は、実質同一に含まれる類型の一つとして、「政令処分申請時における周知・慣用技術に基づき、一部において異なる成分を付加、転換等しているような場合」を挙げている(判決24頁18~23行)。
【原記事執筆時のコメント】★同じ杉浦裁判長で、仮処分(令和5年(ヨ)第30214号仮処分命令申立事件)と判断が変わった!!
⇒控訴審に要注目
多くの実務家、学者がオキサリプラチン知財高判に照らして充足なのではないかと意見を述べており、逆の意見を聴かないので、控訴審が注目ですね。
レミッチを見ても、知財高裁は薬はプロパテントですからね。
ダサチニブ一審判決の結論が変わらないとしても、添加物違いの課題絡みの技術的意義を問題とするロジックを維持するのか、有効成分が違う場合に射程が限定されるかも要注目です。前者のまま維持されるならば、後発企業は、課題創作+添加物違い+特許取得で容易に効力範囲外にできてしまいますからね。
https://www.bms.com/assets/bms/japan/pressrelease/20231129-pdf.pdf
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94154.pdf
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令和6年(ネ)10080【笠木下換気構造体】<中平> =原審・大阪地判令和5年(ワ)8403
令和6年(ネ)10080【笠木下換気構造体】<中平>
=原審・大阪地判令和5年(ワ)8403
「通気性能及び防水性能を発揮する換気部材」という文言及び本件明細書の記載(課題・解決手段・効果)に照らせば、換気部材「それ自体」が通気性能及び防水性能を有することを要すると解釈するのが自然である。
⇒被控訴人製品の板状部分は、それ自体が要件を満たすとは認められない。
控訴人は、部材が防水・通気に「寄与」しているかで判断すべきとも主張したが、裁判所は、この手法の合理性を基礎付ける技術常識等の主張立証がないとした。
仮にこの手法によっても、被控訴人製品の傾斜部⑤は、通気路を狭めており、これがない場合に比べて通気性能を下げるものであるから、通気性能に寄与しているとはいえず、構成要件Cを充足しない。
【補足】原記事の「裁判所は、この手法を用いるべき合理的根拠がない。」について、判決は、控訴人のいう「第2の判断手法」が合理的であると解すべき根拠となる技術常識その他の事情については「主張も立証もない」とし(判決14頁11~13行)、仮にこの判断手法を用いたとしても構成要件Cを充足すると認めることはできないとした(判決14頁21~23行)。また、判決は、傾斜部⑤について、通気路(通気間隙)は存在するが、傾斜部⑤自体は通気が可能な領域を狭めているとした(判決14頁14~20行)。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94137.pdf
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令和6年(ネ)10072【ドラフト差測定装置】<中平>
令和6年(ネ)10072【ドラフト差測定装置】<中平>
『本件特許維持費用等のうち、異議申立手続のために支出した費用は、一審被告及び日本製鉄による本件特許に係る特許異議の申立てに対応するための費用であるが(甲10)、上記の特許異議の申立てが違法であったとは認められないから、一審被告の不法行為の存在は認められない。
本件特許維持費用等のうち、異議申立手続のための費用以外の費用については、一審原告が自らの判断で本件特許の出願及び維持のために支出したものであり、そもそも一審被告の行為によって一審原告がこれらの費用を支出しなければならなくなったものではないから、一審被告の行為と一審原告の支出との間に相当因果関係があるとは認められない。』
【補足】判決原文には「(甲10)」との記載がある(判決6頁4行)。判決原文では、引用部分の冒頭に「また、」があり、2文は1段落である(判決6頁2~10行)。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94136.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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【著作権法★】被控訴人(被告)が、控訴人(原告)の発行する新聞の記事(見出し、記事本文、本件各写真)をスマートフォンの写真1枚に写り込む限度で撮影し、25回にわたり、インターネットを利用して、投稿本文とともにツイッター(X)に投稿した行為について、控訴人が本件各写真の著作権(送信可能化権)侵害を主張して、不法行為に基づく損害賠償請求をした事案において、引用の抗弁(著作権法32条1項)又は付随対象著作物の利用の抗弁(著作権法30条の2)を認めて、控訴人の請求を棄却すべきものとした事例
知財高判令和7年7月31日(令和6年(ネ)第10075号)(清水響裁判長)
【事案の概要】
本件は、宗教法人である控訴人(「原告」)の発行する聖教新聞の紙面上の記事(見出し、記事本文、本件各写真(本件写真1~37))を、会員である被控訴人(「被告」)が、スマートフォンの写真1枚に写り込む限度で撮影し、25回にわたり、インターネットを利用して、投稿本文とともにツイッター(X)に投稿した行為について、原告が本件各写真の著作権(送信可能化権、著作権法23条)を侵害すると主張して不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条、著作権法114条3項)をする事案である。
原審(東京地方裁判所令和5年(ワ)第70388号)は、本件各写真について引用の抗弁(著作権法32条1項)を認め、原告の請求を棄却した。これに対し、原告が本件控訴を提起した。
本判決は、本件各写真について引用の抗弁又は付随対象著作物の利用の抗弁(著作権法30条の2第1項)を認めて、原告の請求を棄却すべきものとし、本件控訴を棄却した。
【判決要旨】
1.引用の抗弁(著作権法32条1項)について
(1)引用の抗弁の要件及びその解釈
著作権法32条1項の規定の文言によれば、著作物の全部又は一部を著作権者の承諾を得ることなく自己の作品に含めて利用するためには、①利用される側が公表された著作物であること、②当該著作物の利用が引用に該当すること、③当該引用が公正な慣行に合致すること、④当該引用が報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われること、の各要件を満たすことを要する。
そして、著作物等の文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与するという著作権法の目的(著作権法1条参照)や、著作権の保護を図りつつ、文化的所産としての著作物等の公正な利用を可能ならしめる著作権法32条1項の規定の趣旨を考慮すると、②の「引用」については、一般には、利用する側の作品から利用される側の著作物を明瞭に区別して認識できることが必要であり、また、利用する側の作品と利用される側の著作物の間に、利用する側が主、利用される側が従という主従関係があることを要するものと解するのが相当である。ただし、この主従関係も、量的な比較のみにより形式的に判断するのではなく、利用する側の作品や利用される側の著作物の性質、引用の目的、引用の方法や態様等の様々な要素を考慮した上、社会通念に照らし、実質的に判断すべきものであり、その場合には、④の「引用の目的上正当な範囲内」の判断とも一部重なることになる。
また、③の引用が「公正な慣行」に合致することについては、当該分野や公表媒体等における引用に関する公正な慣行が存在するのであれば、引用して利用する方法や態様が当該慣行に合致すると認められるかにより判断され、これが存在しないのであれば、社会通念上相当な方法等によるものと認められるかにより判断されるものと解される。この場合において、利用される側の著作物の出所が明らかにされていることは、当該公正な慣行又は社会通念上相当な方法等の一要素として考慮され得るものと考えられる。
さらに、④の引用が「報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内」で行われることについては、引用の目的の内容及び正当性、引用の目的と利用される側の著作物との関連性、利用される側の著作物の性質、引用された範囲及び分量、引用の方法及び態様、利用する側が得る利益及び利用される側が被る不利益の程度等を考慮し、前記著作権法の目的及び規定の趣旨を踏まえ、総合的に評価するほかはない。
(2)あてはめ
ア.はじめに
本件各写真(引用)(本件写真1~9、11~26、30~37)は、記事と一体となって出来事を報道するために同じ紙面に掲載された報道写真であるから、それ自体は写真の著作物だとしても、引用の目的が記事により報道されている出来事と一定の関連性があれば、当該記事の一部を構成する報道写真についても同様の関連性が認められる。また、著作権法32条1項の規定の文言上、引用の必然性や厳格な必要性までは要求されていないから、広く時事の出来事を知らしめ、読者の意見等の形成に資することを目的とする記事及び報道写真の性質に照らすと、著作権の保護と利用の調和という観点からは、記事及び報道写真により報道された出来事と引用の目的とに関連性が認められる場合には、商業的利用の有無、主従関係の要件の充足その他の事情を考慮した上で、本件各写真(引用)の引用が「引用の目的上正当な範囲内」の引用であると認めることは妨げられない。
イ.引用に該当すること
本件各投稿の投稿本文の部分と本件各写真(引用)を含む引用部分とは、明瞭に区別して認識することができる。また、本件各投稿の内容や本件各写真等の性質、引用の目的、引用の方法・表現態様等に照らせば、社会通念上、ツイッターの本文として投稿された部分が主であり、本件各写真(引用)が従であると認められる。
ウ.公正な慣行に合致すること
被告は、本件各投稿の投稿本文に聖教新聞からの引用である旨記載し、又は「聖教新聞」の題字を写り込ませてその写真を掲載するなどして、いずれも新聞紙面を撮影した写真とこれを批評する投稿本文という同様の体裁のものとして、概ね継続して投稿しており、本件各投稿の読者の多くが原告の会員やその関係者であると考えられることに照らすと、投稿内容や前後の投稿を参照することにより掲載された本件各写真(引用)の出所を容易に読み取ることができ、社会通念上相当な方法に合致する。
エ.引用の目的上正当な範囲内であること
本件各投稿は、投稿本文並びに「聖教新聞」の紙面上の記事及び本件各写真(引用)をスマートフォンの写真1枚に写り込む限度で撮影した写真から構成され、本件各投稿の目的は、原告の機関紙である聖教新聞の記事本文又は本件各写真(引用)を通じて被告が認識した原告の活動等を批評することを目的とするものと認められ、当該目的に不相当・不適切な点は認められない。本件各写真(引用)は、引用の目的との関係で、いずれも関連性が認められる。本件各投稿における批評を理解するために、スマートフォンの写真1枚に写りこむ限度で撮影された紙面中の本件各写真(引用)が引用の範囲として過大であったとまでは認められないから、本件の引用により利用された著作物の範囲及び分量は相当であったというべきである。そして、被告が本件各投稿により商業的利益を得た事実は認められない上、本件各写真(引用)の引用を認めることにより原告が販売部数の減少等の経済的不利益を被ることを認めるに足りる証拠はない。
オ.まとめ
以上によれば、本件各投稿に掲載した本件各写真(引用)については、引用の抗弁(著作権法32条1項)が成立する。
2.付随対象著作物の利用の抗弁(著作権法30条の2第1項)について
本件各写真(付随)(本件写真10、27~29)に係る付随対象著作物の利用の抗弁については、経過規定の不存在、法改正の経緯及び目的等を踏まえると、令和2年改正法による改正後の同法30条の2の規定は、令和2年改正法施行前に行われた行為についても適用されると解するのが相当である。
そして、本件各投稿に掲載された紙面の写真(作成伝達物)のうち本件各写真(付随)の占める割合から、本件各写真(付随)は、軽微な構成部分(付随対象著作物)と認められる。また、本件各写真(付随)は、被告がその利用により利益を得る目的はなく、批評の対象とされた新聞記事に隣接するために分離して撮影することも困難であって、作成伝達物において特段の役割を果たすものでもないことなどからすると、付随対象著作物として正当な範囲内で複製伝達行為に伴って利用されているものといえる。
以上によれば、本件各写真(付随)については付随対象著作物の利用の抗弁が成立する。
【コメント】
1.判決要旨1(1)について
最判昭和55年3月28日民集34巻3号244頁〔マッド・アマノ事件〕は、旧著作権法に基づく引用の抗弁について、以下の要件①及び②が必要であると判示した。
① 引用された著作物が引用する著作物と明瞭に区別できること。
② 引用された著作物が引用する著作物に従属していること。
一方、現行著作権法32条1項は、引用の抗弁について、以下の通り規定する。
「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」
また、引用された著作物の出所明示義務については、現行著作権法48条1項により、引用された著作物の出所を合理的と認められる方法及び程度で明示することが必要とされる。
【補足】原記事は、上記一文の冒頭を「また、引用の抗弁については、」とする。ただし、この義務と著作権法32条1項の引用の適法要件とは区別される。本判決は、「出所の明示は引用を適法とするための直接の要件とはされていない。」とした上で、出所が明らかにされていることを、公正な慣行又は社会通念上相当な方法等の一要素として考慮している(判決19頁6~9行、12~15行)。
そして、一般に、旧著作権法の解釈に係るマッド・アマノ事件最高裁判決は、現行著作権法32条1項の解釈にも適用され得るものと考えられているため、上記①及び②と現行著作権法32条1項に基づく引用の抗弁との関係について、例えば以下のような多くの分かれた裁判例や学説が存在する。
- A) 上記①及び②は、必要かつ十分な要件である(東京高判昭和60年10月17日無体集17巻3号462頁〔藤田嗣治事件〕等)。
- B) 上記①及び②は、重要な考慮要素となり得るが、他にも重要な考慮要素があり得、事案に応じて総合考慮により判断される(知財高判平成22年10月13日判時2092号135頁〔絵画鑑定証書事件〕等)。
- C) 上記①及び②は、必要な要件であり、他にも要件が存在する。(知財高判令和4年3月29日(令3(ネ)10060号)裁判所ウェブサイト〔KuToo事件〕等)
また、上記①及び②と、現行著作権法32条1項所定の「引用」、「公正な慣行に合致」及び「目的上正当な範囲内」との各文言との関係についても、例えば以下のような多くの分かれた裁判例や学説がある。
- a) 上記①及び②は、「引用」、「公正な慣行に合致」及び「目的上正当な範囲内」の全各文言に関連し得る(東京高判昭和60年10月17日無体集17巻3号462頁〔藤田嗣治事件〕、知財高判平成22年10月13日判時2092号135頁〔絵画鑑定証書事件〕等)。
- b) 上記①及び②は、「引用」の文言に関連する(知財高判令和4年3月29日(令3(ネ)10060号)裁判所ウェブサイト〔KuToo事件〕)。
- c) 上記①は「引用」の文言に関連し、上記② は「目的上正当な範囲内」の文言に関連する(東海林保「引用の抗弁」髙部眞規子編『知的財産権訴訟Ⅱ最新裁判実務大系11』(青林書院、2018年)713~714頁)。
なお、知財高判平成22年10月13日判時2092号135頁〔絵画鑑定証書事件〕において引用する側が著作物であることは要しないものとされている。
かかる裁判例及び学説の状況の下で、判決要旨1(1)は、基本的に上記C)及びb)によったものと理解される。
2.判決要旨1(2)について
判決要旨1(2)は、引用の抗弁の成否について、明瞭区別性及び主従関係という引用該当性の要件は勿論、公正な慣行に合致すること及び引用の目的上正当な範囲内であることという他の各要件も、判決要旨1(1)における同各要件に係る具体的な解釈論の下で、本件の事案に応じて丁寧にあてはめを行っており、実務上参考になる。
3.判決要旨2について
原審が本件各写真の全てについて引用の抗弁を認めたのに対し、控訴審は、本件各写真(引用)(本件写真1~9、11~26、30~37)についてのみ、判決要旨1(2)の通り引用の抗弁を認め、本件各写真(付随)(本件写真10、27~29)については、判決要旨2の通り付随対象著作物の利用の抗弁を認めた。この点、控訴審は、本件各写真(付随)(本件写真10、27~29)については、被告の投稿本文による批評の対象ではなく、被告の投稿本文と関連性がないため、引用の抗弁を認め難いと考えたものと推察される。
【補足】判決上、本件各写真(引用)と本件各写真(付随)の区分は、被告がいずれの抗弁を主張したかによるものであり(判決2頁7~13行、12頁14~15行)、判決は、本件各写真(付随)について引用の抗弁の成否を判断していない。投稿本文との「関連性はない」との認定は、付随対象著作物の利用の抗弁の判断の中でされたものである(判決39頁9~10行)。
【Keywords】創価学会、聖教新聞、引用の抗弁、明瞭区別性、主従関係、付随対象著作物の利用の抗弁
※本稿の内容は、一般的な情報を提供するものであり、法律上の助言を含みません
文責:弁護士・弁理士 飯田 圭(第二東京弁護士会)
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