オープンイノベーション ~新たな価値創造のためのアライアンス戦略~
1. オープンイノベーションの意義
(1) オープンイノベーションとは、オープンイノベーションの父と呼ばれるHenry Chesbrough氏によれば、自社だけでなく他社や大学、地方自治体、社会起業家など異業種、異分野が持つ技術やアイディア、サービス、ノウハウ、データ、知識などを組み合わせ、革新的なビジネスモデル、研究成果、製品開発、サービス開発、組織改革、行政改革、地域活性化、社会課題解決などにつなげるイノベーションをいうとされています。¹
(2) 近年、(特にスタートアップとの間における)オープンイノベーションに対する関心が高まってきています。その要因は多種多様なものであると思われますが、例えば、事業会社がオープンイノベーションに取り組む背景には、クローズドイノベーションの限界が挙げられるでしょう。すなわち、旧来は、自社の技術のみで開発を進めていくこと(自前主義)が広く取り入れられていたものの、近時では技術革新のスピードが速まったことや、これまでの業種を横断するような商品やサービス(例えばIoT)が増えてきたこと等から、クローズドイノベーションだけでは限界があると指摘されてきました。そこで、かかる状況を打開する方策の1つとして、オープンイノベーションが注目されてきているといえるでしょう。
(3) また、事業会社は、自社の既存有力事業を破壊するような新規事業には容易に取り組むことができないというジレンマを抱えている(イノベーションのジレンマ)一方、スタートアップは、スタートアップを取り囲むエコシステムの発展等により、大きな資本と人手がなくとも新規事業を起こすことが容易になってきました。このような中で、事業会社が自社の既存事業を維持成長させつつ、将来のさらなる成長のための「次の一手」を打つためには、新規事業に挑戦するスタートアップと連携することが効果的な手法の1つであることは疑いないでしょう。
2. モデル契約・事業連携指針
(1) 事業会社とスタートアップとのオープンイノベーションにおいては、官公庁から、「研究開発型スタートアップと事業会社のオープンイノベーション促進のためのモデル契約書ver1.0」²や「スタートアップとの事業連携に関する指針」³が公開されており、これらで指摘されている問題点は、主として以下のとおりです。
① 秘密保持契約(NDA)
ⅰ. NDAなしに営業秘密の開示を強制する場合
ⅱ. 片務的なNDA・契約期間の短いNDAの締結
ⅲ. NDAに違反した営業秘密の目的外使用
② PoC(Proof of Concept)契約
ⅰ. 無償作業の強要
③ 共同研究開発契約
ⅰ. 知的財産権の連携事業者への一方的帰属
ⅱ. 名ばかりの共同研究(研究開発の大部分をスタートアップが担当するにもかかわらず、成果物の知財を共有又は事業会社のみに帰属させる場合)
ⅲ. 成果物利用の制限
④ ライセンス契約
ⅰ. ライセンスの無償提供
ⅱ. 特許出願の制限
ⅲ. 販売先の制限
⑤ その他
ⅰ. 顧客情報の提供
ⅱ. 報酬の減額・支払遅延
ⅲ. 損害賠償責任の一方的負担
ⅳ. 取引先の制限
ⅴ. 最恵待遇条件
(2) これらのモデル契約やスタートアップとの事業連携に関する指針が、「オープンイノベーションから生まれる両者の利益の総和の最大化」を価値軸としているように、当所は、大手事業会社・スタートアップのそれぞれのサポート経験を活かし、当該オープンイノベーションから生まれる利益の最大化のために、いかなる枠組みでアライアンスに取り組むことが望ましいのか、また、これを体現する契約書をいかに設計するべきか等といった側面から、サポートさせていただいております。
3. 大学とスタートアップとのオープンイノベーション
(1) 大学にとって、スタートアップとのオープンイノベーションは、研究費等を確保していくためには有効な手段の1つとなりえます。例えば、大学発のスタートアップが、大学から特許ライセンスを受ける場合について、大学は対象技術の研究開発はもちろん、その特許権の取得維持にも一定の費用を支払っているため、大学発のスタートアップに対しても一定の金額のライセンス料の支払を求めることがあります。ここで、大手事業会社とのライセンス契約の場合は、ライセンス料を現金で支払うということになりますが、資金面が相対的に弱く、他方で大きく成長する可能性を有しているスタートアップの場合は、株式または新株予約権をもってライセンス料の支払を受けることが考えられます(実際、例えば日米において、このような手法により、大学が結果的に多額のライセンス料を得るに至った例も存在します)。
(2) 当所は、大学・スタートアップの双方をサポートしてきた経験を活かし、大学の技術・知的財産の価値やスタートアップのビジネスモデルを踏まえつつ、ライセンス契約や共同研究開発契約を円滑に進め、オープンイノベーションから生まれる利益の総和が最大化されるように、知財・法務の観点からのサポートをしております。
1 Henry Chesbrough and Sabine Brunswicker, “Managing Open Innovation in large firms”, 2013.
2 https://www.meti.go.jp/press/2020/06/20200630006/20200630006.html
3 https://www.meti.go.jp/press/2020/03/20210329004/20210329004-1.pdf


