オープン&クローズ戦略 ~先進事例を踏まえた自社独自の戦略の立案・遂行に向けて~
1. オープン&クローズ戦略とは
オープン&クローズ戦略とは、自社のコア・イノベーション領域にある技術は、集中的に開発しつつ、第三者を徹底して排除し、他方、自社の非コア・イノベーション領域にある技術は、標準化したり無償解放したりすることで市場の拡大を図り、自社に有利な事業環境を構築する戦略のことです。
2. 外国の事例の紹介
大成功を収めたオープン&クローズ戦略をいくつか見てみましょう。
(1) インテルMPU
パソコンの基幹部品であるMPUは、特許や秘匿化により技術情報を確保し、ブラックボックス化・クローズ化。
MPUと外部の装置を接続するPCIバスについては、柔軟な税制の政策支援を受けた新興国企業であるパソコンメーカーやマザーボードメーカーに許諾。ただし、契約により改版を制限することで、パソコンの技術進化を主導する。当時技術力のなかったこれらのメーカーに、PCIバスやマザーボードに関する技術も提供し、広く採用させることで、政策支援とあいまって、PCIバスを大量普及させる。これにより、ネットワーク外部性を利用し、該PCIバス及び該マザーボードに最適な自社MPUを大量普及させ、高収益化を実現。
(2) 欧州のデジタル携帯電話システムに係るGSM方式
携帯電話端末の内部及び外部仕様を標準化・オープン化して低コストで大量普及。
携帯電話の基幹ネットワークシステムにおける無線基地局・制御装置をブラックボックス化・クローズ化し、通信プロトコルに知的財産権を確保しつつ、その進化・改版を主導。
これにより、全体市場の支配を実現。(これに対し、無線基地局を介さず直接インターネット接続可能なWi-Fiアクセスポイントに係る米国主導の標準化・オープン化、さらにはインターネットのフルブラウザ機能 (及びオープンなOS)を有するアップル社 (及びグーグル社)のスマートフォンにより、該市場支配は打破)
(3) アドビシステムズ
PDF (Portable Document Format)の作成・編集ソフトウェア (Adobe Acrobat) を有償で販売する一方、PDFの読み取りソフトウェア (Adobe Reader) を無償で公開・提供。他企業等へは、PDFの仕様への準拠を条件に、PDFの読み取り関連特許及び著作権を無償開放することにより、同仕様の独自拡張を制限して、技術と製品の開発の方向性を主導。これにより、PDF関連市場を拡大しつつ、高い利益率を実現。
3. 国内の事例の紹介
オープン&クローズ戦略は、欧米のIT企業の専売特許ではありません。日本企業で成功した事例は、いくつもあります。
(1) 三菱化学
DVDの製造プラットフォームを構築・標準化・オープン化して新興国における経済特区・柔軟な税制による政策支援を受けた企業に提供し、該製造プラットフォームに最適な自社の記録材料及びスタンパーを該企業に自社の特許発明その他の技術情報の下でブラックボックス化・クローズ化して供給して、高収益化を実現。
(2) デンソー
物品流通管理の社内標準であったQRコードの基本仕様を普及のためにISO化し、必須特許を無償でライセンスして、市場を拡大する一方、QRコードの認識技術やデコード技術を差別化領域とし、リーダやソフトウェアを有償で販売して、リーダで国内トップシェアを獲得し、収益を確保
4. おわりに
オープン&クローズ戦略を実践するには、周到な調査、立案、準備をしなければなりません。コア・イノベーション領域と非コア・イノベーション領域の見極め・峻別、両領域と、その間を繋ぐ境界領域についての綿密な戦略の策定及び遂行が必須であり、遂行中も市場の変化に即した臨機応変な修正が求められます。私どもは、皆様の戦略の策定および遂行をお手伝いいたします。お気軽にお声がけ頂ければ幸いです。


