ビッグデータ ~契約によるビッグデータの保護~
1. はじめに
近時、IT の活用場面が増えたことに伴い、各種プロダクト/サービスを通じて得られるデータ量は爆発的に増加しています。これらの大量に収集されたデータ(ビッグデータ)は、マーケティング等に有効に活用されており、特に、デザイン経営やリーンスタートアップの観点から、ユーザー視点でユーザーが望むものを生み出していく、という方針の下では、ユーザーの課題や望むものを推し量る上で、データの価値や活用可能性は極めて高いものになるといえます。
また、データの中には、他のデータと合わせることで付加価値が生じるものもあり、他業種を含めた別企業とのデータのやりとりの必要性は高まっています。そのため、データの利活用の方法はもちろん、自社で集めたデータをいかに守っていくか、データに関する権利関係をいかに考えるか、といった点は、データを利活用して事業を成長させるにあたって、極めて重要な点となります。
さらに、AI分野において、良質なデータを数多く手に入れることは、自社のAIエンジンの精度を高める上で極めて重要となります。
2. 契約による保護の必要性
現行法下においては、不正競争防止法の改正により「限定提供データ」(不正競争防止法2条7項)としての保護は追加されましたが、ビッグデータは、民法上の所有権等の権利の対象にはならず(無体物であるため。民法206条、同法85条参照。)、各種知的財産権としての保護や不正競争防止法上の営業秘密としての保護はビッグデータの保護としては限定的な状況です。具体的には、以下の図で示すとおり、データそのものの保護は、著作権、特許権、不正競争防止法上の営業秘密及び限定提供データによる保護が考えられますが、それぞれ難点もあります。
データの保護は、これらの知的財産権とあわせ、利害関係者間の契約を通じて図られることが多くなっています。
表:データと知的財産権
| 権利等の種類 | 問題点 |
|---|---|
| 著作権 | データベースについては著作権法上の保護の可能性はあるものの、ビッグデータの収集・加工の過程において、データベースとして実効的な保護を受ける場合は必ずしも多くないと思われます。 また、データ自体について、単なる統計上の数値等、著作権法上の創作性が認められないものも多いと考えられます。 |
| 特許権 | データの加工方法や分析方法は権利の対象となり得ますが、データ自体について、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものと認められる場合は限定的と思われます。 |
| 営業秘密 | 営業秘密の要件のうちの1つである秘密管理性を充足することは容易ではない場合もございます。また、情報の性質や取り扱いによっては、非公知性の要件を充足することも難しい場合があります。 |
| 限定提供データ | 対象データについて、①電磁的管理性、②限定的な外部提供性、③有用性が認められた場合、当該データの不正取得・使用・提供・目的外使用等の行為に対して差止請求等が可能です。 ただし、限定提供データの不正使用によって生じた成果物の譲渡等については、今回の改正法では対象外とされています。 |
3. データに関する契約を締結するにあたっての留意点
(1) データの種別
一口にデータといっても、データの内容は多種多様であり、その内容に応じた考慮が必要となります。分類方法は多種多様のものがあり得ますが、例えば、構造化データ/非構造化データという分類が挙げられます。また、情報の取得や取り扱いに特段の留意が必要か否か、という点ではパーソナルデータ(個人情報を含む)/非パーソナルデータという分類も挙げられます。パーソナルデータについては、その全てについて個人情報保護法や GDPR(General Data Protection Regulation/EU一般データ保護規則)の規制の対象になるわけではありませんが、規制を踏まえた対策を講じる必要があるか否かを検討するアンテナを張る、という意味では、有用な分類になると思われます。
(2) 契約による保護のメリット及び保護の限界
仮に不正競争防止法上の営業秘密として保護されない場合であっても、契約において対象データについて秘密保持義務を課しておけば、契約の相手方が秘密保持義務に違反して当該データを第三者に開示したというときには、当該契約相手に対して、秘密保持義務違反を問うことができます。
ただし、契約の効力が及ぶのは、原則として契約当事者間のみであって、契約関係にない第三者が当該データを公開等した場合は、不正競争防止法上の営業秘密の要件を充足しない限り、原則として当該第三者に当該公開等の行為の責任を問うことはできません。
したがって、契約による保護を図る場合においては、適切な保護を図るための契約内容にするということはもちろんであるが、同時に、契約で拘束すべき当事者に過不足がないか、慎重に検討する必要があると考えられます。
当所は、上記のようなビッグデータの保護に関連した業務も取り扱っており、法的な観点からサポートをさせていただいておりますので、お気軽にお問い合わせください。


