オープンデータの活用と知財戦略


著者: 山本飛翔弁護士
雑誌名: 月刊パテント2019年8月号
出版社: 日本弁理士会
発行日: 2019年8月10日
詳細: 日本でも、国や地方公共団体がオープンデータ化に積極的になり、また、それを活用する民間企業は出てきているものの、イギリス、アメリカ等と比較すると、オープンデータを活用した事業への資金注入量等の点で課題は残る。そこで、本稿においては、弁理士によるオープンデータ活用事業の知財戦略構築支援を通じて、オープンデータ活用の活発化を図ることを提案する。
すなわち、オープンデータ基本指針においては、オープンデータ活用の主体の1つとして「ベンチャー企業」(スタートアップ)が挙げられているところ、昨今のスタートアップへの投資金額の増加状況を踏まえ、オープンデータそれ自体は解放されたものであるものの、オープンデータを活用した事業について知財を活用し、参入障壁を設けることによって、当該事業についてエクイティファイナンス等による資金投入の前提を作ることが考えられる。
なお、知財の活用方法については、オープンデータを活用した事業の類型によって考慮しなければならないが、近年リーンスタートアップの手法(必要最小限度の機能でプロダクトをローンチし、ユーザーの反応やフィードバックを踏まえ、機能の追加や改良等を行っていく手法)が採られることが多く、プロダクトがマーケットインされてから国内優先権の期限である1年の間に有用な改良がなされることに鑑み、必要に応じて国内優先権を活用することも望ましい。
また、オープンデータの活用方法によっては、「限定提供データ」(不正競争防止法2条7項)としての保護の可能性も検討する必要がある。