【特許侵害訴訟】控訴審の充足(参考)【流し台のシンク事件】
平成22年(ネ)10031<飯村>
⇒イ号製品の「傾斜面」は途中まで奥方に延びた先に垂直面を含むが、逆言充足
発明の課題を、専用の調理プレートを用意不要と原審と別異に認定し、発明の技術的範囲が広がった!
原審・平成21年(ワ)5610<清水>
(判旨抜粋)
イ 判断
上記記載によれば,構成要件C1の「・・・後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている」は,従来技術においては,前後の壁面の上部に上側段部が,深さ方向の中程に中側段部が形成されている流し台のシンクでは,上側段部と中側段部のそれぞれに,上側あるいは中側専用の調理プレートを各別に用意しなければならないという課題があったのに対して,同課題を解決するため,後方側の壁面について,上側段部の前後の間隔と中側段部の前後の間隔とをほぼ同一の長さに形成して,それら上側段部と中側段部とに,選択的に同一のプレートを掛け渡すことができることを図ったものである。
ところで,上記記載における「発明の実施形態」では,後方側の壁面は,上側段部から中側段部に至るすべてが,奧方に向かって延びる傾斜面であり,垂直部は存在するわけではない。しかし,本件明細書中には,「本発明は,上述した実施の形態に限定されるわけではなく,その他種々の変更が可能である。・・・また,シンク8gの後方側の壁面8iは,上側段部8fと中側段部8nとの間が,第2の段部8bを経由して,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる上部傾斜面8pとなっていなくとも,上側段部8fと中側段部8nとに同一のプレートが掛け渡すことができるよう,奥方に延びるように形成されているものであればよく,その形状は任意である。」と記載されていることを考慮するならば,後方側の壁面の形状は,上側段部と中側段部との間において,下方に向かうにつれて奥方に向かってのびる傾斜面を用いることによって,上側段部の前後の間隔と中側段部の前後の間隔とを容易に同一にすることができるものであれば足りるというべきである。
そうすると,構成要件C1の「前記後の壁面である後方側の壁面は,前記上側段部と前記中側段部との間が,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面となっている」とは,後方側の壁面の形状について,上側段部と中側段部との間のすべての面が例外なく,下方に向かうにつれて,奥方に向かって延びる傾斜面で構成されている必要はなく,上側段部と中側段部との間の壁面の一部について,下方に向かうにつれて奥行き方向に傾斜する斜面とすることによって,上側段部の前後の間隔と中側段部の前後の間隔とを容易に同一にするものを含むと解するのが相当である。
(2) 対比
証拠(甲11,12)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品のシンクの形状は,別紙物件目録添付の図1ないし4のとおりである。これによれば,被告製品のシンクは,リブ(段部)が,壁面を構成する金属板を折り曲げて加工し,一体的に形成されたものであり,かつ,後方側壁面の上段リブ(段部)の下部に,下方に向かうにつれて奥行き方向に傾斜する斜面が存在する。そして,上記リブ(段部)の下部の傾斜面により,上側段部の前後の間隔と中側段部の前後の間隔とがほぼ同一となっていることが認められるから,構成要件C1を充足する。
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※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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