東京地判令和7年(ワ)70002【量子ドットを有するナノ複合体及びその製造方法】<髙橋>
*会社名義の出願に異議を述べなかった。
⇒特許を受ける権利の譲渡が認定された。
被告の元技術顧問である原告Aと、創業者・元代表取締役である原告Bが、被告名義で出願された特許について、権利の共有持分確認を求めた。
原告らは、権利譲渡の対価(新株予約権や実施料等)を定めた契約書案(本件契約書案)を協議したが、調印には至っていないため合意は不成立である、研究成果を無償で譲渡するはずはないと主張した。
⇒棄却(権利譲渡の合意あり。)
<裁判所の判断>
(1) 原告らは、被告の役員・技術顧問として、特許事務所に被告を出願人とする手続を依頼し、出願書類案の出願人欄について異議を述べなかった。この事実は、遅くとも本件各出願の時までに、権利を被告に譲渡する合意があったことを推認させる。
(2) 契約書が作成されていない点については、権利譲渡に契約書は必須ではなく、同時期の別件出願でも作成されていなかったことから不自然ではない。
(3) 無償譲渡はおかしいとの点については、出願当時は関係が悪化しておらず、原告Aが事業立ち上げに無償協力を申し出ていた状況であった。そのため、対価に関する合意をせずとも、まずは権利を被告に譲渡することは十分に考えられる。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-95009.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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