平成26年(行ケ)10097【扁平形非水電解質二次電池】<清水>
*先願明細書に5面とすることが『記載されているに等しい。』+積層数をどの程度とするかは設計事項。
⇒拡大先願違反
(判旨抜粋)
甲1において,正極板と負極板との対向面の面数について具体的に明記されているのは…3面の場合のみであるが,もとより,甲1発明は対向面の面数を3面に限定する発明ではないところ,甲1発明は,正極板と負極板とを積層することにより,正極板と負極板との対向面積を大きくしようとするものであり,また,正極板と負極板との積層数(すなわち,正極板と負極板との対向面の面数)が多くなればなるほど,正極板と負極板との対向面積がこれに比例して単純に大きくなることも明らかである。そうであれば,甲1には,正極板と負極板との対向面を3面とすることだけではなく,複数のもの,すなわち,2面や4面以上とすることも記載されているに等しいということができる。したがって,甲1には,セパレータを介して対向している前記正極板の作用物質含有層と前記負極板の作用物質含有層との対向面が少なくとも5面であることも記載されていると認められ,正極板と負極板との積層数(すなわち,対向面の面数)をどの程度とするかは,要求される重負荷放電時の放電容量のレベルに応じて決定される,単なる設計的事項にすぎないといえる。
…審決の認定する相違点Aは,要するに,本件発明と甲1発明とは,①対向面の面数と②対向面の対向面積とガスケットの開口面積の大小関係という量的な点において相違する,というものである。…本件発明と甲1発明とは,いずれも,扁平形非水電解質二次電池において,電極群として,正極構成材の表面に作用物質含有層を有する正極板と,負極構成材の表面に作用物質含有層を有する負極板とが,セパレータを介し多層積層されたものを用いて,正極板の作用物質含有層と負極板の作用物質含有層との対向面積の総和を大きくし,重負荷放電時の放電容量を大きくすることができるとするものであり,その課題と課題解決方法において共通するものである。…対向面が5面を超えても重負荷放電容量に大きな変化が見られず,場合によって逓減化することは,予想外のことともいえるが,本件発明は,重負荷放電時の放電容量を大きくすることを技術課題とする発明であって,対向面の面数の下限値を特定したものであり,上限値を特定したものではないから,対向面数の増加に比例して放電容量が増加しないことをもって,本件発明における新たな効果ということはできない。
https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/668/084668_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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