大阪地判令和4年(ワ)11025【ダニ用食餌入りの多孔質通気性袋】
*本件発明は、誘引物質を内部で保持することができる構造。
⇒被告製品は、ダニ誘引物質が2枚の不織布シートやガーゼ等で重ねて挟み込まれているのみであり、その周囲からダニ誘引物質が零れ落ちるようなものであるから、非充足
※…被告製品は、本当にそうなのか。実験等で、零れ落ちないと立証するべきであったか。
(判旨抜粋)
本件明細書の記載によると、本件発明は、大きなダニ捕獲能力を発揮することを目的として、その手段は、ダニ誘引物質を含浸させた織物シートからダニ誘引物質を拡散させることで広い範囲のダニを誘引した上で、マッ トの内部にダニ捕獲用の粘着テープと、これに対して千鳥状に被着させたダニ用食餌を入れた多孔質通気性袋を配することで、ダニ誘引物質で誘引されたダニを、マットの表裏両面からさらに内部に侵入させ、粘着テープに触れさせ、そこで捕捉するようにするというものである。そして、ダニを誘引させる物質として、「香料」を織物シートに含侵させた上、「食餌」入りの多孔質通気性袋を配置させる位置を両面粘着テープの表裏両面に配置させることにより、多孔質通気性カバーの内側に誘い込み、混ぜ物のない粘着層に触れさせて補足させる構成をとるものであるから、本件発明において 「多孔質通気性袋」は、食餌が同位置にとどまり、粘着層の粘着力を低減させない機能を備えるべきことが想定されているといえる。加えて、多孔質通気性袋の構造上、一袋でこれらが実現でき、構成材料の数も減らすことができるようになっている。
以上を踏まえると、構成要件A-3にいう「多孔質通気性袋」とは、辞書的にも、本件明細書の記載からも、少なくとも内包物を内部で保持し、拡散を防止することができる構造を有することが必要であると解することが相当である。一方、販売被告製品では、ダニ誘引物質が2枚の不織布シートやガーゼ等で重ねて挟み込まれているのみであり、その周囲からダニ誘引物質が零れ落ちるようなものであるから、誘引物質を内部で保持することができる構造であるとは認められない。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-93488.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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