令和6年(ラ)10003
閲覧等の制限申立却下決定に対する即時抗告申立事件
特許権侵害訴訟にて口外禁止条項を含む和解成立
⇒被告が、和解条項+準備書面及び書証の一部につき、閲覧制限申立て
⇒知財高裁は、『和解条項+準備書面及び書証』全体として営業秘密に該当するとして、閲覧制限を認めた。
(1審決定は、準備書面及び書証については、その一部について閲覧制限を認めなかった。)
(決定の抜粋~『裁判の公開原則との関係』の部分)
…基本事件原告の意見は、民事訴訟法91条が憲法82条の裁判の公開原則に由来するものであることを強調しているので、この点に関する当裁判所の考えを示しておく。
まず、憲法82条1項が裁判の公開を求めているのは、裁判の「対審」と「判決」であるところ、「対審」とは、民事訴訟における口頭弁論手続及び刑事訴訟における公判手続を指し、本件和解の手続が行われた弁論準備手続が当然に含まれるわけではないし、訴訟上の和解が「判決」と異なり、公開の法廷で言い渡すような性質のものでないことはいうまでもない。
そもそも、民事訴訟においては、私的自治の原則の反映として、訴訟物たる権利関係を当事者に委ねる処分権主義が採用されており、当事者の自律的解決を尊重することが求められている。本件の基本事件において、基本事件原告と基本事件被告(抗告人)は、公開の要請が働く判決の手続ではなく、訴訟上の和解という非公開の手続による終局的な解決を選択するとともに、口外禁止条 項を合意し、本件和解条項に係る情報の流出、漏洩を防止しようとしているのである。それにもかかわらず、民事訴訟法91条1項の手続によって、和解条項が第三者に閲覧されてしまうとすれば、上記のような和解を決断した当事者の意図・期待に反する結果となることは明らかである。このような場合に、和解条項の全部につき閲覧等制限決定をすることは、民事訴訟の基本原則である処分権主義、当事者の自律的解決尊重の要請に沿うものであって、裁判の公開の原則と何ら抵触するものではない。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/381/093381_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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