令和2年(行ケ)10094【逆流性食道炎の再発抑制剤】<森>
*優先日の技術常識⇒第Ⅱ相臨床試験が終了していることで進歩性×
第Ⅰ相臨床試験~安全性試験
第Ⅱ相臨床試験~少人数の有効性試験
第Ⅲ相臨床試験~大人数の有効性試験
<相違点>本件発明1は,「ラベプラゾールナトリウム」を有効成分とする,「維持療法のために」投与される「プロトンポンプ阻害剤抵抗性逆流性食道炎の再発抑制剤」であるのに対して,甲1発明は,「PPI抵抗性逆流性食道炎患者に対する維持療法における」「有効性と安全性を検討するための第Ⅲ相臨床試験に供されるラベプラゾールナトリウム(E3810)」である点。
(判旨抜粋)
…安全性に関する技術常識を踏まえると,本件優先日当時,ラベプラゾールナトリウムの維持療法における20mg1日1回長期投与の忍容性は,当業者に明らかであった…ところ,1日2回投与と1日1回投与とでは安全性に差異はないと考えられていたこと…をも考慮すると,「1回10mgを1日2回」「4週間以上」投与することについて,臨床上の安全性の観点から阻害されたといった事情も見受けられない。なお,甲42及び44のガイドラインには,PPIの長期投与の安全性に関する懸念についての記載があるが,「いずれの懸念もPPI投与との直接的な因果関係が明らかとはいいがたい」(甲42)などとされており,上記判断を左右するものではないし,甲23及び29~31の各PPIの添付文書における注意書きも,薬剤の添付文書における一般的な副作用等についての記載にすぎず,上記判断を左右するものではない。…そうすると,甲1発明のラベプラゾールナトリウムを,PPI抵抗性逆流性食道炎患者の維持療法期に投与する再発抑制剤として用い,相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは,当業者が容易に想到することができたものということができる。…
原告は,平成29年判決(平成28年(行ケ)第10107号)を引用して主張するが,同判決は「新規性」について判断したもので「進歩性」について判断したものではないから,事案を異にすることは明らかである。
https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/457/090457_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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