【論稿/商標】商標の類否に関する近年の裁判例について-商標法4条1項11号を中心に-(山田朋彦、パテント誌2025年10月)
1.<裁判所の最新アプローチ>
「つつみのおひなっこや事件(最判H20.9.8)」では、分離が許されるのは「その部分が強く支配的な印象を与える場合」等に限定されると解釈されがちであった。
しかし、近年の知財高裁(例:令和2年(行ケ)10104 ホームズくん事件など)では、以下の考え方が定着している。
①『一体不可分でないなら分離可』:リラ最判(最判S38.12.5)の基準に立ち返り、結合が取引上不自然なほど強固でなければ分離してよい。
②『「相当程度」の印象で十分』:つつみ最判の「強く支配的」という高いハードルだけでなく、「独立して出所識別標識として機能し得る(相当程度強い印象)」レベルでも分離観察を認める傾向にある。
2. 称呼の類否:インターネット・AI時代の「耳」の重要性
「称呼(読み方)さえ似ていれば類似」という称呼重視の時代から、現在は「外観・観念」を含めた総合観察の時代へシフトしている。
総合考慮の徹底: 外観や観念が著しく異なる場合、称呼が同一でも非類似とされるケース(例:令和2年(行ケ)10014 富富富事件)が増えている。
視覚情報の優位: ネット通販など「見て買う」取引では外観のウェイトが高まる。
逆風としての音声検索: 一方で、AIスピーカーや音声検索の普及により、称呼の重要性が再評価される局面もある。実務上、称呼の同一性は依然として強力な拒絶・侵害リスクである。
3. 商品・役務の類否:類似群コードの「推定」をどう超えるか?
特許庁の「類似群コード」は強力な基準だが、裁判所はこれに拘束されない。
類似群コード上は非類似であっても、実態として同一営業主が提供していると認められれば類似と判断される(例:令和6年(行ケ)10028 AWG治療事件)。
11C01(プログラム)の混雑: あらゆる業界がソフトウェアを扱う現代、第9類の「電子計算機用プログラム」を含む類似群コード11C01は飽和状態にあり、実務上の大きな障壁となっている。
4. 取引の実情の斟酌:考慮される「事実」の選別
「うちの会社はこういう売り方をしているから混同しない」という主張(特殊的・限定的な事情)は、原則として認められない。
https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4716
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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