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【特許★】特許権侵害行為差止等請求控訴事件(一審では公然実施発明に基づく新規性欠如で無効とされたが、控訴審で主張した訂正の再抗弁が認められ、特許権者逆転勝訴(訂正後の特許有効))

2025年08月21日

【特許★】特許権侵害行為差止等請求控訴事件(一審では公然実施発明に基づく新規性欠如で無効とされたが、控訴審で主張した訂正の再抗弁が認められ、特許権者逆転勝訴(訂正後の特許有効))

-知財高判令和5年(ネ)第10010号【機能水】<東海林裁判長>-

-(原審・大阪地判令和3年(ワ)第4920号)-

◆判決本文

【本判決の要旨、若干の考察】

1.訂正後の特許請求の範囲(請求項3。下線(1か所)は訂正した部分。訂正前は「重量平均分子量500~50000」であった。)

 『 A 多価アミン及び/又はその塩を機能成分として含有し、水、多価アミン、多価アミンの塩の総含有量が95重量%以上である機能水であって、
B 前記多価アミンが、下記式(3')
【化3】

で表される不飽和アミンに由来する構造単位を有するポリマー(式中、nは0又は1を示し、pは1又は2を示し、R7、R8、R9 は水素原子を示す)のうち、重量平均分子量500~15000の、ポリアリルアミン又はジアリルアミン重合体であり、
C 前記機能成分の有する機能が、前記式(3')で表される不飽和アミンに由来する構造単位を有するポリマーがポリアリルアミンである場合は、魚介類又は精肉の鮮度保持、魚介類又は精肉の熟成、植物の成長調整、切り花の延命、切り花の開花調整、害虫駆除、アニサキス防除、抗微生物、抗ウイルス、便臭軽減、血圧低下、体温上昇、及び口腔内環境の改善のうちの少なくとも1つであり、前記式(3')で表される不飽和アミンに由来する構造単位を有するポリマーがジアリルアミン重合体である場合は、切り花の延命である
D 機能水。』

2.本願発明と引用発明との『相違点』についての判示抜粋(※結論は新規性・進歩性○)

(1)新規性に関する裁判所の判断

  『乙18分析及び乙24分析の結果によれば、同分析対象物のポリアリルアミンの重量平均分子量は4.5×104であるところ、これは、本件訂正前の本件発明の構成要件Bの重量平均分子量の数値範囲である「500~50000」の範囲にはあるものの、本件訂正後の数値範囲である「500~15000」の範囲には含まれず、この点において本件訂正後の本件発明と公然実施発明(引用発明)とは異なるものである。そうすると、本件訂正により、本件発明が、公然実施発明(引用発明)により新規性を欠如するということはできない。』

(2)進歩性に関する裁判所の判断

 『a 公然実施発明は、公然実施品の具体的な構成又は組成等に基づいて認定されるため、通常、その公然実施品自体に課題が記載されていることはなく、何らかの課題があることを認識することは困難であるから、公然実施発明に基づく容易想到性の有無を判断するにあたっては、公然実施品から出願日(優先日)当時の技術常識を前提にして技術的思想や課題を認識できるかどうか、その構成又は組成を変更する動機付けがあるか否かを検討すべきである。
  b 公然実施発明(引用発明)は、本件特許の優先日前の平成30年10月から製造販売された製品である「無限七星FISH」に係る発明であり、当該製品に含まれる成分を分析することにより、分析対象物の含有成分はポリアリルアミンであること(乙18分析)、その重量平均分子量は、4.5×104であること(乙24分析)が判明したとするものである。そうすると、本件発明と公然実施発明(引用発明)は以下の点で相違する。
「本件発明においては、ポリアリルアミン又はジアリルアミン重合体の重量平均分子量が『500~15000』であるのに対し、公然実施発明(引用発明)においては、ポリアリルアミンの重量平均分子量が『45000』である点」
前記のとおり、公然実施発明(引用発明)は、「無限七星FISH」という製品に関し、当該製品に含まれる成分を分析することにより、含有成分がポリアリルアミンであり、その重量平均分子量が4.5×104であることが判明したにすぎないものであるから、当該製品自体に、何らかの課題があることを認識することはできないものである。また、この公然実施発明(公然実施品)における構成又は組成について、技術的思想や課題を認識できるような、本件優先日当時の技術常識があった旨の証拠もない。そうすると、本件優先日当時の技術常識を前提として、これらを変更する何らかの動機付けがあったともいえない。
したがって、公然実施発明(引用発明)において、その含有成分であるポリアリルアミンの組成に着目し、重量平均分子量等の物性をあえて変更することについて動機付けがあるとはいえないから、重量平均分子量が「45000」であるポリアリルアミンを、重量平均分子量が「500~15000」であるポリアリルアミンに置換することを、当業者が容易に想到できたとはいえない。
以上によれば、本件発明が、公然実施発明(引用発明)に基づき、容易に想到し得たとはいえず、本件訂正後の本件発明が進歩性を有しないものとは認められず、独立して特許を受けることができないものとも認められない。』

(3)進歩性に関する被疑侵害者の主張を斥ける判旨

『c 被控訴人の主張について
(a) 被控訴人は、…本件特許の優先日前に公然実施された被控訴人製品「無限七星FISH」の重量平均分子量4.5×104との比較において、「15000」という上限値が技術的にいかなる意義を有するのかが不明であり、本件優先日において、ポリアリルアミンの重量平均分子量上限値の「15000」と、公然実施発明に係る同「45000」は、いずれもポリアリルアミンの重量平均分子量として広く知られ、一般的に利用されている範囲内のものであるから、本件発明は、公然実施発明に基づいて当業者が当然に予測することができたもので、進歩性を有しない旨を主張する。…

乙13、乙12の1及び乙12の2の各記載を考慮しても、前記公然実施発明(公然実施品)の構成又は組成について、技術的思想や課題を認識できるような、本件優先日当時の技術常識があったとはいえないから、たとえ、重量平均分子量が「15000」又は「45000」であるポリアリルアミンが市販されたものであり、当業者に広く知られ、一般的に利用されているものであったとしても、そのことを根拠に、当業者が公然実施発明のポリアリルアミンの重量平均分子量等の物性を変更することを当然に予測できるとはいえない。
したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。
(b) 被控訴人は、前記第2の3(3)〔被控訴人の主張〕エのとおり、本件明細書にはポリアリルアミンの重量平均分子量につき本件訂正に係る数値範囲は記載されていないから、当該数値範囲に特別な技術的意義は認められず、本件明細書には重量平均分子量と発明の効果との間に因果関係があることも記載されていないから、市販品として容易に入手可能な重量平均分子量のポリアリルアミンを採用することに困難性はなく本件発明は進歩性を有しないと主張する。…
実施例において、具体的に、重量平均分子量が「1600」若しくは「15、000」であるポリアリルアミン又は重量平均分子量が「5、000」であるジアリルアミン重合体及び精製水を配合した試験液を用いて、魚介類又は精肉の鮮度保持を含む種々の機能を確認したことが開示されている…。

本件明細書の記載から、「重量平均分子量500~15000」のポリアリルアミン又はジアリルアミン重合体を含有する機能水である本件発明には、前記のとおりの機能を有する点で技術的意義があることが認められる。そして、…公然実施発明(引用発明)に基づいて、その含有成分であるポリアリルアミンの組成に着目し、重量平均分子量等の物性をあえて変更することについて動機付けがあるとはいえないから、前記本件発明との相違に係る重量平均分子量の数値範囲のものに置換することが容易に想到できたものとはいえない。
したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。』

4.本判決の進歩性判断に関する若干の考察(公然実施品に基づいて数値限定発明の進歩性を否定することのハードル)

本件は、公然実施品が「重量平均分子量45000」、訂正前クレームが「重量平均分子量500~50000」、訂正後クレームが「重量平均分子量500~15000」であり、進歩性を否定できなかった事案である。

数値限定発明・パラメータ発明(に限らないが特に数値限定発明・パラメータ発明)の進歩性は、当該数値限定・パラメータに技術的意義が認められないと単なる設計変更として進歩性が否定され易い傾向にある(下掲、各裁判例参照)。そのため、被控訴人はその旨を主張したが、本判決は、「重量平均分子量500~15000」のポリアリルアミン又はジアリルアミン重合体を含有する機能水である本件発明には、「魚介類又は精肉の鮮度保持を含む種々の機能」を有する点で技術的意義があると判断し、被控訴人の係る主張を斥けた。この意味で、特許権者としても、訂正により進歩性を確保するときは、単に訂正要件を満たすだけなく、明細書の実施例等により当該数値の技術的意義が把握できる数値をクレームアップすることが極めて有用である。

また、本件は、主引例が公然実施発明であったことも検討に値する。すなわち、本判決は、公然実施品自体から何らかの課題を認識することは通常困難であり、出願日(優先日)当時の技術常識を前提にして技術的思想や課題を認識できるかどうか、その構成又は組成を変更する動機付けがあるか否かを検討すべきであるとした。この考え方は、大鷹元知財高裁所長の論文に示された考え方(下掲)と軌を一にする。

本判決は、外部証拠からも「本件優先日当時の技術常識を前提として、これらを変更する何らかの動機付けがあったともいえない」と判断した。もっとも、主引例が公知文献であっても、当該文献に記載された課題が本件発明ないし副引例とずれている場合は出願日(優先日)当時の技術常識を前提にして技術的思想や課題を認識できるかどうか、その構成又は組成を変更する動機付けがあるか否かを検討するのであり、当然に要求される課題、自明な課題等を理由に動機付けが認められ進歩性が否定される事例もあるし、更に言えば、主引用文献に記載された課題が阻害事由を構成することもあるから、主引例が文献でなく公然実施品であることが必ず進歩性肯定の方向に働くとステレオタイプに考えることは正しくない。

5.本判決が判断したその他の論点についての判旨抜粋及び若干の考察(先使用権、消尽)

『 (5) 先使用権の成否(争点3)について

…被控訴人は、控訴人の関連会社から旧ATW及び現ATWを購入して被控訴人製品を販売していたのみであり、…被控訴人ないしA氏において本件特許に係る発明の完成に寄与したものでも、その発明を完成させていたものでもないから、被控訴人の主張する先使用による通常実施権については、これを認めることができない。』

『 (6) 消尽又は黙示の実施許諾の成否(争点4)について
被控訴人は、…控訴人の関連会社から購入した旧ATW及び現ATWを用いて被控訴人製品を製造販売することに関しては、控訴人の特許権は消尽しており、又はその製造販売について控訴人の黙示の許諾がある旨を主張する。
しかし、…本件特許権の侵害に係る被控訴人製品は、被控訴人がメディカル社から原材料を購入して製造した製品をいうものであり、旧ATW及び現ATWを用いて製造した製品についてはその対象とはしていないから、被控訴人の主張はその前提を欠くものである。』

⇒「(6) 消尽又は黙示の実施許諾の成否(争点4)」については、本件事案では問題とならないが、間接侵害品と消尽という論点が近い。この論点について判示したiPhone知財高裁大合議判決(平成25年(ネ)10043)は、特許権者等が日本国内において間接侵害品を譲渡した場合、当該間接侵害品そのものは消尽するが、譲受人が当該間接侵害品を用いて特許製品を生産した場合は、インクタンク最判(平成18年(受) 826)が示した「同一性を欠く特許製品が新たに製造された」場合に相当するとして、消尽せず、黙示の承諾が有り得るに留まるとした。(高石秀樹、間接侵害品の譲渡と特許権の「消尽」、パテント2015、Vol. 68 No. 7、参照)

https://jpaa-patent.info/patents_files_old/201507/jpaapatent201507_062-077.pdf

https://www.youtube.com/watch?v=8w2B7cWNWZA

【関連裁判例等の紹介】

1.相違点に係る構成(多くは数値・パラメータ)に技術的意義が認められないことを理由に、単なる設計変更として進歩性が否定した裁判例

①令和4年(行ケ)10111「車両ドアのベルトラインモール」事件<本多裁判長>

※技術的意義が本件明細書に記載されておらず、作用効果に影響なし⇒設計事項に過ぎず、進歩性×。

(判旨抜粋)「本件明細書には、段差部が縦フランジ部の下部から内側方向に『ほぼ水平に』延びることの技術的意義についての記載はない。…段差部が『ほぼ水平に』に延びても『やや下方』に延びても、本件発明の作用効果に何ら影響するものではない。…甲1発明1において『やや下方に』延びる段差部を『ほぼ水平に』延びるように構成することは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない…。」

②令和3年(行ケ)10096「光源」事件<本多裁判長>~「実施例として記載されている同含有割合の最大値は、6重量%…にすぎず、本願明細書には、同含有割合が10重量%を超える場合の実験結果についての記載は全くみられない…。…適宜設計することのできたものである。」

③令和3年(行ケ)10135「…ベクター」事件<菅野裁判長>~「…配列の長さが『7.0ないし10.0Kbの長さ』…であることには技術的意義がなく、…技術的意義において同一…実質的な相違点とはいえない。」

④平成22年(行ケ)10296「ペトロラタムを基にした鼻用軟膏」事件<滝澤裁判長>~「本願明細書に、粘度に着目することの技術的意義も、粘度を8mm2/秒という数値以上のものに特定することの技術的意義も記載されていないことに照らすと、引用例に飽和炭化水素の混合物の粘度を調整することによりアレルギー性反応を予防しようという直接の示唆がないとしても、…本願発明が進歩性を有するということはできない…。」

=平成18年(行ケ)10132、平成17年(行ケ)10665、平成17年(行ケ)10754、平成17年(行ケ)10189

2.『公然実施発明に基づく進歩性』に関する大鷹元知財高裁所長の論文

「引用発明が公然実施発明の場合には、実施例自体は実在する具体的な技術そのものであり、市場においてベストモードの完成品として提供されているものであるため、通常は、実施品自体やその取扱説明書等にその課題等の記載がなく、他の資料から、動機付けの手掛かりとなる要素を認定する必要がある。…公然実施発明に基づく進歩性の判断においては、当業者が特許出願前に実施品(公然実施品)に接したものと想定した上で、かかる当業者が、実施品から、どのような技術的思想を読み取り、どのような課題を認識し、その課題の解決手段に容易に想到できるかが問題となるため、製品開発における当業者の視点を的確に踏まえた考察が重要となる。」(大鷹一郎『ビジネスローの新しい流れ-知的財産法と倒産法の最新動向』(青林書院)」、117頁21行~118頁末行)

3.関連裁判例:知財高判平成25年(ネ)10051【オフセット輪転機版胴】事件<高部裁判長>(一審では公然実施発明に基づく新規性欠如で無効とされたが、控訴審で主張した訂正の再抗弁が認められ、特許権者逆転勝訴(訂正後の特許有効))

*公然実施品が数値限定範囲から外れるように訂正した。

⇒控訴審段階の訂正で、”訂正の再抗弁”成立。特許権者の逆転勝ち

原審・東京地判平成23年(ワ)21311<大須賀裁判長>

*納入後20年経過後の測定結果で公然実施の無効理由成立

「ステンレス鋼により形成された版胴の表面…は,20年程度の使用期間で腐食することはないとされており…,かつ,版のかからない部分は,使用による摩耗等の影響も少ないものと解される。加えて,本件輪転機の版胴につき,納入後の入れ替えや表面加工,改造等は行われていないものと認められる…。以上の事情を考慮すれば,本件輪転機の版胴は,その納入時において,表面粗さが1.0μm≦Rmax≦100μmに調整されたものであったと認めるのが相当である。」

以 上

(原告・控訴人)個人

(被告・被控訴人)株式会社ライフピース

執筆:高石秀樹(弁護士・弁理士)(特許ニュースの原稿を追記・修正したものです。)

監修:吉田和彦(弁護士・弁理士)

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。

〒100-8355 東京都千代田区丸の内3-3-1新東京ビル6階

中村合同特許法律事務所(第二東京弁護士会)


 
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