【商標/4条1項7号】令和5年(行ケ)10128「MARK GONZALES」<本多>
ライセンス終了が目前に迫った2020年以降,原告はエンジェル・被告氏名・(what it isNt)を含む商標を日韓中台などで大量出願し,ライセンス終了後も自社ブランド展開を継続する一方,被告の新規ライセンス事業を警告で妨害した。
本判決は「原告は,被告が自ら国内市場でビジネスを行うことを排除し,自らの商標権で支配することを企図した」と認定し,出願目的は公正な商標秩序を乱す不正目的であると評価した。
⇒商標法4条1項7号該当
(判旨抜粋)
被告は、平成26年頃、サクラグループに対して本件ライセンス契約の解除を求め、令和2年頃には、本件ライセンス契約終了後はサクラグループとライセンスビジネスを継続する意思がないことを示し、全ての商標権の返還を求めるなどした。これに対し、原告は、サクラグループから本件商標D~Gに係る商標権の移転を受けて、本件ライセンス契約の最終盤期である令和2年頃から、日本、韓国、中国、台湾等で、「Mark Gonzales」、「(what it isNt)」等の文字列やエンジェルのデザインを含む商標の登録出願を多数行い、本件ライセンス契約が終了したことが明白である令和4年1月1日以降も、ライセンシーを通じて「Mark Gonzales」やエンジェルが付された商品を販売等している。しかし、…原告は、MPSA契約によってエンジェル1、2及び本件サインの著作権を取得したとはいえないし、本件ライセンス契約は事実上MPSA契約の内容を更改することを含むものである。仮にMPSA契約がいまだ有効であるとしても、同契約上、原告に許容されているのは本件アルバムの宣伝目的で、かつ、Tシャツ等へのカバーアートの複製と被告等の氏名の使用にとどまっているのに、原告が現在行っている「( what it isNt)」ブランドの展開は、本件アルバムの宣伝目的の範囲内や、カバーアートの複製の範囲を越えるものである。しかも、原告は、本件ライセ ンス契約の終了後、被告が自ら展開する日本国内のサブライセンシーや販売店に警告書を送付するなどして、被告のブランド展開を阻止しようとしている。
このような令和2年以降の原告の動きからすると、原告は、本件商標A~Cを出願した時点…において、原告等と 被告との紛争が顕在化し、本件ライセンス契約が終了した後はエンジェル1、2や被告の名称が使用できなくなることを十分了知しながら、これらの商標の登録を得た後は、商標権に基づき、被告が自ら日本国内で展開するエンジェルや「Mark Gonzales」の名称を用いた商品の販売等の差止めを求めるなどして、原告等以外の者がこれらの商品を販売することを妨害、阻止する不正の目的、意図を有していたと認められる。
そうすると、このような原告の本件商標A~Cの登録出願は、商標登録出願について先願主義を採用している我が国の法制度を前提としても、「商標を保護するこ とにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護する」という商標法の目的(同法1条)に反し、公正な商標秩序を乱すものというべきであり、かつ、健全な法感情に照らし条理上も許されないというべきであるから、本件商標A~Cは、商標法4条1項7号 の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきである。
https://ipforce.jp/Hanketsu/jiken/no/14417
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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