2020年06月26日
知財高判令和2年5月20日(令和元年(行ケ)第10151号)(森裁判長)
◆判決本文
【判決要旨】
1.本願商標「CORE ML」(標準文字)と引用商標「CORE」(標準文字)及び引用商標「コア」(標準文字)との類否を判断するに当たっては,本願商標全体と引用商標を対比すべきであり,本願商標から「CORE」の部分を抽出し,当該部分を引用商標と対比して本願商標と引用商標の類否を判断することは許されない。
2.本願商標「CORE ML」(標準文字)全体と引用商標「CORE」(標準文字)及び引用商標「コア」(標準文字)とは,いずれも,観念が共通することがあるものの,称呼が大きく異なるとともに,外観も異なるから,類似しない。
【コメント】
1.判決要旨1は,商標の類否の判断の前提としての本願商標「CORE ML」(標準文字)の認定において,複数の構成部分「CORE」及び「ML」を組み合わせた結合商標として,結合商標の構成部分の一部の抽出の可否に関する従来からの判例の判断基準の下で,「CORE」部分を抽出して認定することを否定したものである。
2.判決要旨2は,判決要旨1を前提に,本願商標「CORE ML」(標準文字)と引用商標「CORE」(標準文字)及び引用商標「コア」(標準文字)とは,いずれも,観念が共通することがあるものの,称呼が大きく異なるとともに,外観も異なるから,類似しないと判断したものである。
【判決の抜粋】
1.本願商標の認定について
(1)「本願商標は,『CORE ML』の文字を標準文字で表してなる商標であり,『CORE』の文字と『ML』の文字とからなる結合商標である。
複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,原則として許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号平成5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁)。」
(2)「本願商標が本件指定商品に使用された場合,『CORE』の語からは,せいぜい『中心部,中核,核心』といった一般的な意味が認識されるにすぎず,『CORE』の部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるということはできないのに対し,『ML』の語からは特定の観念を生じることはなく,『ML』の部分が『CORE』の部分に比べて特段出所識別標識としての機能が弱いということはできない。
また,本願商標の外観上も,『CORE』と『ML』は,いずれも,同じ大きさの標準文字で構成されており,その間に1文字開いているだけであるから,別個独立の商標と認識されるものではない。
さらに,称呼においても,本願商標は,一連に発音されるものと認められる。
したがって,本願商標と引用商標との類否を判断するに当たっては,本願商標全体と引用商標を対比すべきであり,本願商標から『CORE』の部分を抽出し,これを引用商標と対比してその類否を判断することは許されないというべきである。」
2.本願商標と引用商標の類否について
「本願商標からは,『コアエムエル』の称呼が生じ,引用商標1,2からは,『コア』の称呼が生じるところ,その音数は大きく異なっていることからすると,その差異は大きいというべきである。
また,本願商標の『CORE ML』と引用商標1の『CORE』及び引用商標2の『コア』とは,その外観が異なる。
本願商標の『CORE ML』の『CORE』の部分と,引用商標1の『CORE』及び引用商標2の『コア』では,『中心部,中核,核心』といった観念が生じる点で,観念が共通することがあるものの,上記のとおり,本願商標と引用商標1,2とは,称呼と外観において異なっており,称呼における差異は大きいことからすると,本願商標は,引用商標のいずれとも類似していないというべきであ(る。)」
【Keywords】商標法4条1項11号、商標の類否、結合商標の構成部分の一部の抽出、出所識別標識、アップル
※本稿の内容は、一般的な情報を提供するものであり、法律上の助言を含みません。
文責:弁護士・弁理士 飯田 圭(第二東京弁護士会)
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