【商標】東京地判令和4年(ワ)16062『仙修』事件<柴田>
登録商標「仙脩」
①被告標章1「仙修」⇒類似
②被告標章2「仙修六神丸」⇒類似
③被告標章3「御所(枠囲い) 仙修」⇒類似
④被告標章4「御所仙修」⇒非類似
①被告標章1(「仙修」)と本件商標(「仙脩」)との類否
両者は、外観上は二文字の漢字のうち、一文字目は「仙」で同一、二文字目は「脩」と「修」である。二文字目について、下部の一部形状が「月」のように見えるか「彡」に近いかという差異があるものの、残りの部分が酷似していることに加え、文字全体の視覚的な印象も近しいと判断された。称呼については、「せんしゅう」で同一であり、観念についても、本来「脩」には干し肉を意味するなどの由来があるとはいえ、「修」の意味の一部を含むと解される面が大きく、需要者に特定の意味の違いが強く想起されるほど顕著な差異は見いだせない。したがって、外観・称呼・観念の総合的考慮により類似と判断された。
②被告標章2(「仙修六神丸」)との類否
これは全体としては漢字五文字だが、そのうち「六神丸」は古くから動悸や息切れなどを対象とする漢方薬・強心薬の呼称であり、需要者にとって「六神丸」という文字自体が固有の出所識別力を持つとはいえない、いわゆる普通名称に近い位置づけとみられる。したがって、商標法上は「仙修」の部分が出所識別標識として強い機能を担うと解される。そこで「仙修」の部分と本件商標「仙脩」の対比を行ったところ、前述のとおり外観・称呼・観念において類似性が認められるため、全体として被告標章2は本件商標に類似すると判断された。
③被告標章3(「御所(枠囲い) 仙修」)との類否
こちらは四文字中、前二文字が「御所」、後二文字が「仙修」となっており、しかも「御所」と「仙修」の間に空白があり、かつ「御所」の文字は枠で囲われている。このため、視覚上も「御所」と「仙修」が区切られていると評価できる。そこで、通常需要者にとって強く出所識別標識として機能するのは「仙修」の部分になると解される。また、「御所」は奈良県の地名として知られる可能性はあるが、全国的に広く直ちに想起されるほど一般的かどうかは明確ではなく、天皇の座所を意味する「ごしょ」と読む場合もあるなど、必ずしも単一の明確な観念に直結しない。そうすると、分離して観察されやすい「仙修」の部分は、本件商標「仙脩」との類似性を帯びるとして、全体として被告標章3も本件商標に類似すると裁判所は判断した。
④被告標章4(「御所仙修」)との類否
これは「御所」と「仙修」の間に空白もなく、同じ枠内に一続きで表記されているため、前後を分離して観察するのが当然とはいえない。さらに「御所」という文字にも一定の出所識別機能が認められ、全体として「御所仙修」という一連の称呼や外観を形作る。そうすると、外観上も二文字の「仙脩」とは一見して相違し、称呼として「ゴセセンシュウ」ないし「ゴショセンシュウ」となり、「センシュウ」とは相当程度違う響きをもつ。したがって、全体観察では類似しないとされた。裁判所はこの点につき、被告標章4は「御所」と「仙修」が完全に結合した単一の標章として機能するとみなし、本件商標とは混同を生じるほどの類似性はないと結論付けた。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/766/092766_hanrei.pdf