【動画紹介】島津知財における生成AIプロンプトドリブン改革【阿久津 好二 先生】【サマリアウェビナー】
年間1億円以上のコスト削減
ペーパーレス化のときと同様に、抵抗勢力を乗り越えて改革を推進した。
「ロジック化可能な知的労働」という専門業務そのものをAIに置き換えることである。社内共通のプロンプトを作った。
まず、外国出願の翻訳を内製化した。
当初はChatGPTを使用していたが、用語の揺らぎや段落の省略があったため、Geminiのラージモデルに変更し品質が向上した。
次に、外国の中間処理において、現地代理人によるアナリシス(分析)をAIで代替した。
NotebookLMを使用し、OA通知、引用文献、本願発明のPDFのみを読み込ませ、情報を限定することでハルシネーションを抑制し、精度の高い分析と補正案作成を2分程度で実現している。
さらに、発明者が作成する「発明届け」について、開発資料(PDF, PowerPoint等)をGeminiのディープリサーチに入力し、発明技術の抽出、課題、解決手段、効果を整理させ、それに基づき自動で先行文献調査とクレームチャート作成まで行わせている。
これにより、発明の本質的な部分の特定と調査が15分程度で完了する。
明細書作成の自動化にも着手している。
先行文献調査を経て練り上げられた発明の構成に基づき、AIが明細書の「従来技術」「課題」「効果」や実施例、さらには請求の範囲(独立項・従属項)まで自動生成する。
図面作成はまだ難しい。
FTO(他社特許クリアランス)調査も、開発資料から製品仕様を自動抽出し、広めの検索式で得た数千件の母集団の請求項と製品仕様をAI(GPT-4o API)で全件比較判定させる。
これにより、従来10万件/年を研究者が読んでいた作業が激減し、地財部が確認すべき案件(三角・丸判定)のみに絞り込めるようになった。
こうした改革の核心は「プロンプト」にある。
プロンプト作成とは、ベテランが持つ暗黙知(判断ロジック)を言語化・形式知化する作業である。
ハルシネーション対策としては、①業務特性に合わせたモデル選定、②目的だけでなく「非常に細かい単位」でのステップ指示、③インプット情報の限定(クローズドな世界にする) が重要であると述べている。
今後は、経営戦略や開発計画からAIが特許戦略を立案し、明細書と共にアウトプットする時代が来ると展望している。AIには責任や権限執行はできず、最終的な「判断」は人間が担う必要がある。
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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