令和6年(行ケ)10100【車両シートに取り付けるためのチャイルドセーフティシート】<中平>
誤訳の訂正を認めた審決を取り消した。
~特許権者の一貫しない方針が影響した。
(判決は、特許権者が以前は「LINEAR→直線的」が正しいと主張していたことを指摘している。)
<誤訳訂正の要件>
①国際出願の明細書(原文)の記載と、設定登録時(訂正審判による訂正があれば訂正後)の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載の意味が、翻訳の誤り(誤訳)により異なること、
②訂正後の記載は、原文の記載の意味を表すものとして、両記載の意味が一致すること
(判旨抜粋)
本件訂正に係る訂正事項7における訂正は、原文(…)における「linear」が「直線的」と翻訳されていた本件訂正前の本件明細書等の段落【0008】の記載を、本件訂正により、誤訳の訂正を目的として「直接的」とする訂正事項を含むものであった…。
被告は、…「直線的」という単一の訳語のみに着目し、それ自体が誤訳だったために「直接的」という訳語に訂正したものではなく、全体として意味内容が原文に忠実となることを目的としたものであると主張している。
しかしながら、辞書によれば、「linear」は、「1a)直線状の、線状の」という意味を有する…。そして、被告は、前件訂正請求…において、段落【0008】の上記「直線的」に係る記載を訂正の対象としていないどころか、…誤訳の訂正を理由とする取下みなし訂正請求の訂正事項ⅩⅡにおいて、本件該当原文…の2か所の「linear」という文言を「直線的」と訳すことを明示的に内容に含む訂正を求めており、それが原文の正しい翻訳である旨を主張していたところである。
このような事情に鑑みれば、原文の「linear」という文言を明細書において「直線的」と訳した場合に、原文の記載と明細書の記載の意味が異なるとは認められない。
他方、「直線」という語と「直接」という語は意味が異なるから…、原文の「linear」という文言を明細書において「直線的」と訳す場合には、原文の記載と明細書の記載は意味が異なり、これらが一致するとは認められない。
そうすると、訂正事項7…においては、訂正前の本件明細書等の「直線的」の意味が、翻訳の誤りにより原文の「linear」の意味と異なるものということはできない から、上記⑴の要件の①を満たすものといえない上に、訂正後の記載が原文の記載の意味を表すものと一致するものともいえないから、同要件の②も満たさない。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94701.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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