令和1年(行ケ)第10095号「多結晶質シリコン断片及び多結晶質シリコンロッドの粉砕方法」<高部裁判長>
*「質量により秤量したメジアン粒径」の測定方法が不明
⇒明確性要件×
…
(判旨要約)
本件明細書には,コバルト結合剤と焼結により一体化した「粉砕工具」の「工具表面」に「含有」される炭化タングステン粒子の「質量により秤量」したメジアン粒径について,定義や測定方法の記載はない。
(判旨抜粋)
…請求項1の記載からは,粉砕工具の「工具表面」に「含有」される炭化タングステン粒子の「質量により秤量」したメジアン粒径の意義が明らかであるとはいえない。また,本件特許の出願当時において,炭化タングステンを含んでなる表面を有する粉砕工具の工具表面に含有される炭化タングステン粒子につき,質量により秤量したメジアン粒径を得ることができたとする当業者の技術常識を認めるに足りる証拠はない。…
本件明細書には,「炭化タングステンを含んでなる表面を有する」「粉砕工具」の「工具表面」のタングステン含有量が95%以下であり,工具表面の材料における100%に対する残りは,好ましくはコバルト結合剤であり,好ましくは1%未満の程度に追加の炭化物が存在する(…),焼結の結果は,炭素の添加によっても影響を受ける(…)との記載があり,「炭化タングステンを含んでなる表面を有する」「粉砕工具」の「工具表面」の炭化タングステン粒子が,コバルトである結合剤と焼結により一体化していることが開示されている。そして,本件明細書には,コバルト結合剤と焼結により一体化した「粉砕工具」の「工具表面」に「含有」される炭化タングステン粒子の「質量により秤量」したメジアン粒径について,定義や測定方法の記載はない。…
以上によれば,本件明細書の記載を考慮し,出願当時の技術常識を基礎としても,本件発明の「炭化タングステンを含んでなる表面を有する」「粉砕工具」の「工具表面」に「含有」される炭化タングステン粒子の「質量により秤量」したメジアン粒径の意義を理解することはできず,本件発明の技術的範囲は不明確といわざるを得ない…。
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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