NAKAMURA & PARTNERS
Access
  • MESSAGE
  • ABOUT THE FIRM
  • PRACTICES
  • PROFESSIONALS
  • PUBLICATIONS/LECTURES
  • LEGAL UPDATES
  • Message
  • ABOUT THE FIRM
  • PRACTICES
  • PROFESSIONALS
  • PUBLICATIONS/LECTURES
  • LEGAL UPDATES

Legal Updates

  • All Categories
  • Patent
  • Patent (Links)
  • Trademark
  • Trademark (Links)
  • Design
  • Design (Links)
  • Copyright
  • Copyright (Links)
  • IP
  • IP (Links)
  • Law
  • Law (Links)
■

【著作権法★★】音楽教室のレッスンにおける音楽の著作物の演奏の主体は,教師の演奏については,音楽教室を運営する事業者であるものの,生徒の演奏については,当該事業者ではなく,生徒であるとされた事例

2021年05月26日

知財高判令和3年3月18日(令和2年(ネ)第10022号)(菅野裁判長)

 

◆判決本文

 

【判決要旨】

1.教師の演奏について

(1)演奏の主体について

音楽教室における演奏の主体の判断に当たっては,演奏の対象,方法,演奏への関与の内容,程度等の諸要素を考慮し,誰が当該音楽著作物の演奏をしているかを判断するのが相当であるところ,控訴人らは,教師に対し,本件受講契約の本旨に従った演奏行為を,雇用契約又は準委任契約に基づく法的義務の履行として求め,必要な指示や監督をしながらその管理支配下において演奏させているのであるから,教師らがした演奏の主体は控訴人らである。

 
(2)著作権法22条該当性について

控訴人らとの間で受講契約を締結すれば,誰でもそのレッスンを受講することができ,このような音楽教室事業が反復継続して行われており,この受講契約締結に際しては,生徒の個人的特性には何ら着目されていないから,控訴人らと生徒の当該契約から個人的結合関係が生じることはなく,音楽教室事業者である控訴人らからみて,生徒は,その人数に関わりなく,いずれも「不特定」の者に当たり,「公衆」となる。レッスンは,教師又は再生音源による演奏を行って生徒に課題曲を聞かせ,演奏技術等の教授を行うものであるから,同演奏が生徒に対し聞かせる目的で行われていることは明らかである。

 
(3)2小節以内の楽曲の演奏について

特定の2小節が演奏されたとしても,課題曲の演奏であると認識され,かつ,その楽曲全体の本質的な特徴を感得しつつ,その特徴が表現されているから,演奏された小節数を問わず,演奏権の侵害行為が生じる。

 
(4)演奏権の消尽について

音楽著作物を楽譜や録音物に複製することを許諾したことによって,演奏権が消尽するものではない。

 

2.生徒の演奏の主体について

生徒は,専ら自らの演奏技術等の向上のために任意かつ自主的に演奏を行っており,控訴人らは,その演奏の対象,方法について一定の準備行為や環境整備をしているとはいえても,教授を受けるための演奏行為の本質からみて,生徒がした演奏を控訴人らがした演奏とみることは困難といわざるを得ず,生徒がした演奏の主体は,生徒であるというべきである。

 

【コメント】

1.原判決(東京地判令和2年2月28日)は,音楽教室のレッスンにおける音楽の著作物の演奏の主体の判断基準について,いわゆるカラオケ法理を採用したとされる最判昭和63年3月15日〔クラブキャッツアイ事件〕にもよりつつ,「利用される著作物の選定方法,著作物の利用方法・態様,著作物の利用への関与の内容・程度,著作物の利用に必要な施設・設備の提供等の諸要素を考慮し,当該演奏の実現にとって枢要な行為がその管理・支配下において行われているか否かによって判断するのが相当である」旨及び「著作物の利用による利益の帰属については,……本件における著作物の利用主体性の判断においてこの点を考慮に入れることは妨げられないと解すべきである」旨を判示したうえで,あてはめにおいて,教師の演奏のみならず,生徒の演奏についても,音楽教室を運営する事業者が主体であると判断した。

これに対し,判決要旨1(1)は,音楽教室のレッスンにおける音楽の著作物の演奏の主体の判断方法について,「複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当である」旨を判示した最判平成23年1月20日〔ロクラクⅡ事件〕のみによりつつ,同様の判断方法によるべき旨を判示したうえで,あてはめとして,教師の演奏については,原判決と同様に,音楽教室を運営する事業者が主体であると判断したものである。
 
2.判決要旨1(2)は,音楽教室を運営する事業者が教師の演奏の主体と判断される場合に,当該事業者から見て,生徒は,演奏権に係る著作権法22条所定の「公衆」に該当すると判断したものであり,裁判例(名古屋高判平成16年3月4日是認の名古屋地判平成15年2月7日〔社交ダンス教授所事件〕等)と整合的である。
 
3.判決要旨2は,判決要旨1(1)に係る音楽教室のレッスンにおける音楽の著作物の演奏の主体の判断方法を前提に,あてはめとして,生徒の演奏については,音楽教室を運営する事業者ではなく,生徒が主体であると判断したものであり,原判決が,生徒の演奏についても,音楽教室を運営する事業者が主体であると判断したのと対照的である。この点,物理的行為が著作権制限規定により適法とされる場合でも当該行為の管理・支配と利益の帰属との2要素を中心に規範的に著作権侵害主体性を肯認する独立説的なカラオケ法理の一般化・多用化に対する学説の問題提起(上野達弘「いわゆる『カラオケ法理』の再検討」紋谷暢男教授古稀記念「知的財産権法と競争法の現代的展開」[2006]783頁,大渕哲也「著作権間接侵害の基本的枠組(前)・(中)・(後)」著作権研究38号2頁・39号301頁・40号229頁等)を意識したものではないかと思われる。

 

【判決の抜粋】

1.教師の演奏について

(1)演奏の主体について

「控訴人らの音楽教室のレッスンにおける教師又は生徒の演奏は,営利を目的とする音楽教室事業の遂行の過程において,その一環として行われるものであるが,音楽教室事業の上記内容や性質等に照らすと,音楽教室における演奏の主体については,単に個々の教室における演奏行為を物理的・自然的に観察するのみではなく,音楽教室事業の実態を踏まえ,その社会的,経済的側面からの観察も含めて総合的に判断されるべきであると考えられる。

このような観点からすると,音楽教室における演奏の主体の判断に当たっては,演奏の対象,方法,演奏への関与の内容,程度等の諸要素を考慮し,誰が当該音楽著作物の演奏をしているかを判断するのが相当である(最高裁平成21年(受)第788号同23年1月20日第一小法廷判決・民集65巻1号399頁〔ロクラクⅡ事件最高裁判決〕参照)。」

「控訴人らは,生徒との間で締結した本件受講契約に基づく演奏技術等の教授の義務を負い,その義務の履行のために,教師との間で雇用契約又は準委任契約を締結し,教師は,この雇用契約又は準委任契約に基づく義務の履行として,控訴人らのために生徒に対してレッスンを行っているという関係にある。そして,教師の演奏(録音物の再生を含む。)は,前記5 イのとおり,そのレッスンの必須の構成要素であり,音楽教室事業者である控訴人らが音楽教室において教師の演奏が行われることを知らないはずはないといえるし,そのレッスンにおける教師の指導は,音楽教育の指導として当然の手法であって,本件受講契約の本旨に従ったものといえる。また,音楽教室事業者である控訴人らは,その事業運営上の必要性から,雇用契約を締結している教師については当然として,準委任契約を締結した教師についても,その資質,能力等の管理や,事業理念及び指導方針に沿った指導を生徒に行うよう指示,監督を行っているものと推認され,控訴人らに共通する事実のみに従った判断を求める本件事案の性質上,これに反する証拠は提出されていない。さらに,教師の演奏が行われる音楽教室は,控訴人らが設営し,その費用負担の下に演奏に必要な音響設備,録音物の再生装置等の設備が設置され,控訴人らがこれらを占有管理していると推認され,上記同様に,これに反する証拠は提出されていない。

以上によれば,控訴人らは,教師に対し,本件受講契約の本旨に従った演奏行為を,雇用契約又は準委任契約に基づく法的義務の履行として求め,必要な指示や監督をしながらその管理支配下において演奏させているといえるのであるから,教師がした演奏の主体は,規範的観点に立てば控訴人らであるというべきである。」

 
(2)著作権法22条該当性について

「生徒が控訴人らに対して受講の申込みをして控訴人らとの間で受講契約を締結すれば,誰でもそのレッスンを受講することができ,このような音楽教室事業が反復継続して行われており,この受講契約締結に際しては,生徒の個人的特性には何ら着目されていないから,控訴人らと当該生徒が本件受講契約を締結する時点では,控訴人らと生徒との間に個人的な結合関係はなく,かつ,音楽教室事業者としての立場での控訴人らと生徒とは,音楽教室における授業に関する限り,その受講契約のみを介して関係性を持つにすぎない。そうすると,控訴人らと生徒の当該契約から個人的結合関係が生じることはなく,生徒は,控訴人ら音楽事業者との関係において,不特定の者との性質を保有し続けると理解するのが相当である。

したがって,音楽教室事業者である控訴人らからみて,その生徒は,その人数に関わりなく,いずれも『不特定』の者に当たり,『公衆』になるというべきである。」

「次に,『聞かせることを目的』とする点につき検討するに,……控訴人らの音楽教室におけるレッスンは,教師又は再生音源による演奏を行って生徒に課題曲を聞かせることと,これを聞いた生徒が課題曲の演奏を行って教師に聞いてもらうことを繰り返す中で,演奏技術等の教授を行うものであるから,教師又は再生音源による演奏が公衆である生徒に対し聞かせる目的で行われていることは,明らかである。」

 
(3)2小節以内の楽曲の演奏について

「音楽教室において,著作物性のない部分のみが繰り返しレッスンされることを想定することはできない。したがって,仮に,レッスンにおいて2小節を単位として演奏が行われるとしても,それは,終始,特定の2小節のみを繰り返し弾くことではなく,2小節で区切りながら,ある程度まとまったフレーズを弾くことが通常であると推認され,これに反する証拠の提出はない。そして,本件使用態様1ないし4のとおり,レッスンにおいては特定の課題曲が演奏されることが決まっているのであるから,特定の2小節が演奏されたとしても,当該部分が課題曲のどの部分であるかは判然としているのであり,課題曲の2小節分が様々な形で連続的・重畳的に演奏されたとしても,それが課題曲の演奏であると認識され,かつ,その楽曲全体の本質的な特徴を感得しつつ,その特徴が表現されているとみるのが相当である。

したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができず,演奏された小節数を問わず,演奏権の侵害行為が生じる。」

 
(4)演奏権の消尽について

「教本に掲載された楽譜やマイナスワン音源が音楽教室のレッスンで使用するに適しているからといって演奏権が及ぶ態様でのみ演奏に用いられるとは限らない点はもとより,音楽教室のレッスンで使用されることを前提にしてもどのような利用態様であるかを把握し,対価を徴収することは,やはり困難なのであるから,複製権行使の段階で演奏権の消尽を認めることについては,その実質的理由を欠くというべきであり,利用申込書等に音楽教室での利用が予定されていること等を把握できる記載があるとしても,そのことから直ちに演奏権の消尽が理由付けられるものでないことは明らかである。」

 
2.生徒の演奏の主体について

「生徒は,控訴人らとの間で締結した本件受講契約に基づく給付としての楽器の演奏技術等の教授を受けるためレッスンに参加しているのであるから,教授を受ける権利を有し,これに対して受講料を支払う義務はあるが,所定水準以上の演奏を行う義務や演奏技術等を向上させる義務を教師又は控訴人らのいずれに対しても負ってはおらず,その演奏は,専ら,自らの演奏技術等の向上を目的として自らのために行うものであるし,また,生徒の任意かつ自主的な姿勢に任されているものであって,音楽教室事業者である控訴人らが,任意の促しを超えて,その演奏を法律上も事実上も強制することはできない。

……音楽教室における生徒の演奏の本質は,あくまで教師に演奏を聞かせ,指導を受けること自体にあるというべきであり,控訴人らによる楽曲の選定,楽器,設備等の提供,設置は,個別の取決めに基づく副次的な準備行為,環境整備にすぎず,教師が控訴人らの管理支配下にあることの考慮事情の一つにはなるとしても,控訴人らの顧客たる生徒が控訴人らの管理支配下にあることを示すものではなく,いわんや生徒の演奏それ自体に対する直接的な関与を示す事情とはいえない。このことは,現に音楽教室における生徒の演奏が,本件使用態様4の場合のように,生徒の居宅でも実施可能であることからも裏付けられるものである。

以上によれば,生徒は,専ら自らの演奏技術等の向上のために任意かつ自主的に演奏を行っており,控訴人らは,その演奏の対象,方法について一定の準備行為や環境整備をしているとはいえても,教授を受けるための演奏行為の本質からみて,生徒がした演奏を控訴人らがした演奏とみることは困難といわざるを得ず,生徒がした演奏の主体は,生徒であるというべきである。」

「以上のとおり,音楽教室における生徒の演奏の主体は当該生徒であるから,その余の点について判断するまでもなく,生徒の演奏によっては,控訴人らは,被控訴人に対し,演奏権侵害に基づく損害賠償債務又は不当利得返還債務のいずれも負わない」。

 

【Keywords】音楽教室,音楽の著作物,著作権法22条,演奏権,演奏の主体,教師,生徒,事業者,カラオケ法理,クラブキャッツアイ事件,ロクラクⅡ事件

 

※本稿の内容は、一般的な情報を提供するものであり、法律上の助言を含みません。

 

文責:弁護士・弁理士 飯田 圭(第二東京弁護士会)

本件に関するお問い合わせ先:k_iida@nakapat.gr.jp

 

 
<< Prev    Next >>

  • SITE MAP
  • TERMS OF USE
  • DISCLAIMER
  • PRIVACY POLICY

Copyright © 2024 Nakamura & Partners All Rights Reserved.

  1. SITE MAP
  2. TERMS OF USE
  3. DISCLAIMER
  1. PRIVACY POLICY

Copyright © 2024 Nakamura & Partners All Rights Reserved.