【知財実務オンライン】エセ著作権判例百選読み合わせフェスティバル(友利昴)
1. 完全自殺マニア
『完全自殺マニュアル』の表紙デザインをパロディ
両者の具体的な表現(例:棺桶と墓石)は異なっており、共通しているのはレイアウトなどの「アイデア」や「ありふれた表現」に過ぎない。
被告が、原告も『ノルウェイの森』をパロディにした『ノルウェイの大盛り』など、批評性のない単なるダジャレ的なパロディ本を多数出版している事実を証拠提出する「ブーメラン戦略」が功を奏した。
2. 時間は夢を裏切らない
問題のセリフは1996年の続編に登場するもので知名度が低く、槇原氏がそれに依拠した(触れた)可能性は低いと判断された。
また、松本氏の「裏切ってはならない」(願望・忠告)と槇原氏の「決して裏切らない」(断定・確信)では、表現から受ける意味合いが異なる。
⇒松本氏の数々の発言が名誉毀損にあたるとされ、松本氏が槇原氏に謝罪することで和解が成立した。
3. LINEクリエイタースタンプ『うるせえトリ』
原告は「頭が楕円形」「目が黒点」「白シャツに赤ネクタイ」などの共通点を主張したが、いずれもアイデアやありふれた表現に過ぎず、著作物として保護される範囲は狭い、具体的な表現は異なっているとして、侵害を認めなかった。
4. どえらいもん大図鑑
ドラえもんの偽物おもちゃを紹介する本『どえらいもん大図鑑』の表紙が『ドラえもん』のコミックスデザインを模倣しているとして、小学館から不競法で警告を受けた。
藤子・F・不二雄氏自身も『スター・ウォーズ』のパロディ(R-3D-3)などを描いている例を挙げ、出版業界におけるパロディの慣行や、具体的な表現は異なっている点を反論の軸とした。
5. 著作権判例百選
第4版の編集者が、第5版の編集から外された。
出版社(有斐閣)は、「教授は表紙に名前があるだけで、第4版の実質的な著者ではない」と反論した。
内部メールなどから、その寄与は助言レベルに過ぎず「著作者」とは認められないと判断した。
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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