平成29年(行ケ)10167【積層フィルム】<森>
*29の2違反の範囲は先願明細書を基準に新規事項追加でない範囲よりも広い
⇒一般に言われている特許法29条の2の趣旨と異なる!!
*厚み「0.01~100μm」という数値限定が、先願発明になかったことが相違点。
(判旨抜粋)
原告は,特許法29条の2は,後願の審査の便宜のために設けられた旨主張するとともに,ソルダーレジスト大合議判決を挙げて,同判決における「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」の文言解釈は,特許法17条の2第3項における当該文言の一般的な解釈を判断したものであって,特許法29条の2の「明細書,特許請求の範囲」「又は図面」「と同一であるとき」の解釈において,後願発明の発明特定事項が先願の願書に最初に添付された明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内といえるのは,当該発明特定事項が先願の願書に最初に添付された明細書等の記載から自明な事項である場合と解すべきである旨主張する。…特許法29条の2…が規定する「同一であるとき」の範囲と特許法17条の2第3項が規定する補正が許される範囲とが異なることとなったとしても,それぞれの規定の趣旨に従って解釈した結果であって,それにより不都合な点が生ずるとも認められない。そうすると,特許法29条の2が規定する先願による後願排除の要件を判断するに当たって,特許法17条の2第3項が規定する補正が許される要件と同じ解釈をとるべき理由は乏しい。
≪参考≫注解特許法~「補正により特許請求の範囲にとりこむことができる最大限である出願当初の明細書や図面に記載されている発明のすべてに後願を排除できる効果を与えておけば、先願について出願審査の請求もその審査処理もまつことなく後願を処理できる…」
⇒一般に言われている特許法29条の2の趣旨によれば、拡大先願の範囲は、新規事項追加の範囲と同じである。
本判決は異なる!!
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/782/087782_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)