令和1年(行ケ)10097<鶴岡>〔簡易蝶ネクタイ事件〕
引用発明の認定は,本願発明等との対比に必要な技術的事項について過不足なく行うことが必要な程度で十分
⇒更に詳細に認定する必要は無い‼
=令和1年(行ケ)10091<鶴岡>〔走行練習用自転車事件〕
※裁判例の傾向どおり
(判旨抜粋)
原告は,本件審決における引用発明1の認定は,①…,②…,③…を認定しなかった点に誤りがある旨主張する。
そこで検討するに,発明の進歩性の判断に際し,特許出願に係る発明ないし特許を受けている発明(以下「本願発明等」と総称する。)と対比すべき特許法29条1項各号所定の発明(以下「主引用発明」という。)の認定は,これを本願発明等と対比させて,本願発明等と主引用発明との相違点に係る技術的構成を確定することを目的としてされるものであるから,本願発明等との対比に必要な技術的事項について過不足なく行うことが必要である。
これを本件についてみると,上記①の点について,本件補正発明は,発明特定事項として,子供用簡易蝶ネクタイを正面から見た構成を含むものではないから,本件補正発明と対比するに当たって,甲1の簡易蝶ネクタイを正面から見た構成を認定する必要はない。したがって,原告の主張はその前提を欠く。
次に,上記②の点について,本件審決は,引用発明1の構成として,「着用状態で,…突出片4,4は襟の下になり見えないように形成され」と認定するところ,かかる構成は,実質的に,一対の突出片を襟下へ挿入させる態様を含むものである。
さらに,上記③の点について,本件補正発明の特許請求の範囲(請求項1)には,「ボタン穴が形成された部材」の材質及び厚みについて規定した記載はなく,本願明細書の発明の詳細な説明にも,「ボタン穴が形成された部材」の材質及び厚みについて規定した記載はない。そして,…のとおり,本件補正発明の技術的意義は,簡易蝶ネクタイの結び目の裏側に,シャツの第一ボタンがはまりこむボタン穴を,結び目の表側に貫通しないように形成することによって,蝶ネクタイが上向きに品良く付き,従来の蝶ネクタイと見た目が変わらず,子供にも長時間の取付けが可能となるようにしたことであるところ,かかる技術的意義に照らしても,「ボタン穴が形成された部材」を特定の材質及び厚みに限定しなければならない理由は見いだし難い。
したがって,本件補正発明と対比するに当たって,甲1の簡易着用具1の材質及び厚みを認定する必要はない。
https://www.ip.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail?id=5340
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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